辻堂魁のレビュー一覧
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人気時代小説シリーズの第一作目。評価としてはイマイチ。
津軽(阿片)を題材とした事件を描くのは非常に興味深い。ただ、黒幕や動機は早めに判明し、謎解き展開ではなくなる中、殺陣や逮捕劇も派手でなく、中国の武術という飛び道具が最大の見どころとなるなど話が散らばりすぎな感が強い。途中で柳屋の動機に言及していた市兵衛が自ら切り捨てるのも違和感。
人物も脇役も返や鬼しぶは良いキャラだが、主人公の市兵衛がスーパーマンすぎて興醒め。剣を捨てて算術や商学を極めたという設定ではダメだったのだろうか。そして武の右腕を登場させた方が個人的には良かったと思う。鬼しぶが斬られる展開は驚きだったが、ご都合主義で奇跡 -
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旗本の家柄ながら元服後すぐに出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。
シリーズ28作目。第弐部8巻。
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今回は市兵衛の他、鬼渋の息子・良一郎と蘭医・宗秀にもスポットを当て、それぞれ別々に活躍の場を与えたことで、全体的に中途半端な描き方になってしまっています。
さらに市兵衛の雇い主・笹山家跡取りの六平が市兵衛に触発され成長する話まで盛り込んでいるのです。
それはそれで面白かったですが、紙数の関係で敵役の描写まで手が回らず、結果的に殺陣のシーンの魅力が半減した -
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待ってました、市兵衛
ここのところ上方に行きっぱなしだったり、若者の話が多かったりで、シリーズも終わりかなと思っていました。喜楽亭もなくなり店も替えたりで、時代が変わっていくのはしかたないと。でも、またまたお話が生まれ、久しぶりに江戸の町をうろうろできて凄く楽しめた。コロナでどこも行けないので。
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主人公は鷹匠の息子で餌刺の古風十一。名町奉行と称えられた大岡越前守忠相が下した裁きが冤罪だったか否かを再調査する時代ミステリー。シリーズ1作目。
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フィクションではあるのですが、大岡の実相にも触れられており、興味深い構成となっていました。また、一度下された裁きは覆せないという不条理さを描ききった点はリアリティがあり、評価できると思います。
主人公・十一は、腕が立ち、頭も切れる爽やかな若侍で、頭の形以外は唐木市兵衛に似た魅力的なキャラ設定です。
しかし筋立てが地味に過ぎ、大岡忠相というビッグネームや超人ヒーロー・十一を活かしきれているとは言い難いので -
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「風の市兵衛 弐」(第二期)第十弾。(通算・三十作目)
前巻で越後津坂藩の跡継ぎ問題に尽力した市兵衛さんに、その津坂藩の江戸家老から、御用金・百五十両と共に失踪した勘定衆・田津民部の件を調べてほしいと依頼されます。
江戸家老の友で真面目な田津民部に何があったのでしょうか。市兵衛さんの捜査で浮き出た真相とは・・・。
藩の上層部と蔵元の商人との癒着や不正金問題など、いわゆる“腐った藩政あるある”な展開で、ただただ真面目で、好きになった女性と幸せになりたかったであろう田津さんがお気の毒でなりませんでした。
そんな中、療養中の弥陀ノ介が奥さんと娘さんと幸せそうにしている場面にほっこりしました。
そし -
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刀鍛冶であり剣の達人でもある一戸前国包の剣客物語。シリーズ第1作。
舞台は元禄期の江戸。
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いい脇役陣を配するところが辻堂魁作品の特長ですが、本作でも国包の娘・千野や十蔵・清順親子という魅力的な人物が脇を固めていました。そして皆、腕が立つのも気に入りました。今後の活躍ぶりが楽しみです。
また、江戸期のお仕事小説を多く手掛ける辻堂作品らしく、刀鍛冶について興味深く描かれているのもよかった。
ただ、かたき役の槍の達人・新左衛門が病魔に冒されており存分に腕を振るえなかったことと、シリーズ1作目ということで一戸前家の成り立ちの語りが所々に挿入されるため、 -
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還暦を迎え、江戸南町奉行から寺社奉行に転出させられていた大岡忠相。突然、気鬱に襲われる中、思い出したのが、5年前、町奉行時代に裁いたある事件。既に、下手人として捕らえられた指物職人・与佐は打首になってしまっている。しかし、疑念が芽生えた大岡は、真相を調べ始める。
新シリーズ、とのことなので、今後も、過去の裁きについて、疑念や悔いが残っていることを、古風十一に命じて真相究明させるストーリーが続くと言うことかな。
この設定なので、特に大罪で既に打首になってしまった、今回の与佐のような事件の場合、正直言って、今更調べたところで、命が戻るわけでもなく、公に裁けるわけでもないので、歯がゆいところもあ -
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旗本の家柄ながら元服後すぐに出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。シリーズ27作目。第弐部7巻は市兵衛たちが大坂から江戸に戻ってまもなくのできごと。
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川越藩主・松平大和守が国替えを画策したことに端を発する御家騒動に絡み、市兵衛と矢藤太が活躍する話です。
本作は、松平大和守家の国替えという史実を扱ったことで、物語が窮屈になってしまったのか、全体的に地味な展開でした。特に、市兵衛の殺陣のシーンは、敵が大した腕前でないこともあって控えめです。
ただ、良一郎 -
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この夏、ゆるく沸かしたふろ水にハマっている。汗の噴出した熱い肌に気持ちいいから。
このシリーズもそんな風に読み進んでいる。
背景を江戸時代にとっての平同心龍平の家庭生活は穏やかで平和だ。そして現代でもよく起こるような事件を担当する。例えば、娘が無謀な結婚に走った困惑する親とか、家庭内暴力に悩む妻の悩みや、詐欺にあって老夫婦を自殺に追い込む事件。
そう、主人公の解決はクールではあるけれども、いったん家庭にかえればホッとするという仕掛け。ところが『父子の峠』は遂に自家に災難が、息子が誘拐されてしまうのだ。懊悩と憤怒は想像通り、解決するのだが。
主人公龍平が得意の剣劇で決着をつけるその情景は凄 -
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ネタバレ「風の市兵衛 弐」(第二期)第九弾。(通算・二十九作目)
越後津坂藩を探っていた、返弥陀ノ介が瀕死の重傷を負ってしまいます。弥陀ノ介の上司で己の兄でもある公儀十人目付筆頭・片岡信正から弥陀ノ介の探索の後を託された市兵衛さん。
10年まえに殺されたとされる、津坂藩主の世継ぎの男子が江戸のどこかに匿われているとの事ですが・・。
久々に登場した弥陀ノ介が、いきなり瀕死の大怪我を負ってしまい、心配しました。
そして、毎回ながら安心安定の働きぶりを見せてくれる市兵衛さん。今回は町方の下っ引き達とも連携が取れていましたね。
町方といえば、渋井さんの息子の良一郎の、頼れる好青年っぷりが清々しくて、是非小春 -
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「日暮し同心始末帖」を1~5巻と読み進んでいる。
「逃れ道」(5)のあらすじは
日暮龍平の愛息俊太郎が、茶店で無頼にいじめられているのを救ってくれたお篠には、秘密めいたものが漂っていた。お篠にお礼を親子でして近しくなったものの、平同心で雑用係の龍平が、押し付けられた事件捜査にもかかわりがありそうな気配。絵師の夫と幸せに暮らしたい彼女の行く先には何が待ち受けているのか・・・。
江戸情緒ならぬ現代にも通じる、ねじれにねじれた世の中の事情。そして、やがてスーパー龍平がばっさ、ばっさ(小野派一刀流)と悪退治。
というパターンが健在なシリーズだけど、
「天地の蛍」(4)の司馬中也と母の親子関係、 -
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旗本の家柄ながら元服後すぐに出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。大坂編第3部。
シリーズ26作目。第弐部6巻。
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大坂3部作のエピローグ的な位置づけだからか、表看板となる事件はちっぽけで市兵衛にとっては明らかに役不足でした。案の定すぐ片が付いてしまいました。
ただ秘する花のごとき剣戟シーンである「彦根の剣豪一族」との闘争は目を引く内容でした。
卑怯の誹りを受けようとも手勢を連れて市兵衛を取り囲み、矢の雨を降らせてでも討ち取らんという武門の執念を見せる -
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旗本の家柄ながら元服後すぐに出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。
シリーズ24作目。第弐部の4作目。
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壱部の終わりから市兵衛の武芸が神懸かり的になりすぎたので、しばらく読むのを控えていました。だから読むのはひさびさです。
本作の市兵衛は、武芸の腕が初期の頃ぐらいです。その代わり、算盤侍らしい推理力が際立つミステリー調で、読み応えがありました。
内容は大坂編の序章なのでやむを得ないところはあるでしょうが、少しトントン拍子に事が運び過ぎた感がある点が