辻堂魁のレビュー一覧
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「風の市兵衛 弐」(第二期)第13弾。(通算・33作目)
かつて市兵衛が助けた、川越藩士の娘・早菜が三千石の旗本に輿入れすることに。
ですが、嫁ぎ先の旗本・岩倉家が、実は莫大な借金を抱えている事が判明します。
一方、隠田村で発見された変死体と行方不明になった大坂の米仲買人の関連を調べる渋井父子は、あやしい金貸しをマークしますが・・。
早菜さんって、確か『残照の剣』で川越藩の陰謀で父上を亡くして市兵衛さんと江戸に出てきた娘さんですよね(うろ覚え)。
その時に辛い思いをして、せっかくこの度の輿入れで幸せになれるかと思いきや、これがとんだクズ旗本で、今回の婚姻も早菜さんの後見である両替商〈近江屋〉の財産目当てだったという、この悲劇( ノД`)シクシク…。
しかも岩倉家の嫡男で早菜さんの夫となる高和には、婚姻前から妾がいて子まで成していたなんて、マジで“聞いてないよー!”って感じですよ。
で、この岩倉家に出入りする金貸しの七右衛門と、渋井父子が真相を追う変死体事件が絡んでくる・・という流れでございます。
今回は、“鬼しぶ”こと渋井鬼三次と息子の良一郎が一緒に探索をするという嬉しい展開でした。
個人的に好きだった場面は、夜中の聞き込みの帰りに鬼しぶさんが、「良一郎、腹がへったろう、そばを食って行こう」と誘ったとき、いつもはもっとよそよそしいというか改まった態度の良一郎が、つい気を許して「うん、へった」と童子のように答えちゃうのが微笑ましくて、ついニヤついてしまいました。
あと、私が再三“もっと弥陀ノ介を出せ”と、訴えているのが通じたのか(←?)、少しですが弥陀ノ介が登場して、しかも料理上手な一面も見せてくれるというサービス(?)にこれまた嬉しくなりました。
このシリーズは何気にサブキャラが魅力的なので、もっと彼らの活躍シーンを多めにしてほしいと思います~。
とはいえ、主人公は市兵衛さんなので、勿論今回も悪人どもを市兵衛さんがバッサバッサと成敗してくれた訳ですが(お約束)、肝心のクズ旗本・岩倉家への処分がヌルくてモヤりました。
ドラ息子の高和も助かっているし、多分コイツは反省していないので放っておいたらまた悪いことをやらかしそうなのにねぇ・・。
てな訳で、とにかくお気の毒だった早菜さん・・ラストで武州松山に旅立たれましたが、また江戸に戻ってくるのでしょうか。
いつかは幸せになって欲しいですよね~、いっそ市兵衛さんと・・なんてふと頭をよぎったのですがいかがでしょう? -
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大岡越前守忠相。還暦を越えてもなお吉宗の計らいで寺社奉行として幕閣に留まる旗本だ。忠相には南町奉行時代に下した裁きの中に引っ掛かりを覚えるものがあり、晩年を迎え内々に再吟味に乗り出すことにした。シリーズ3作目。
◇
今回の再吟味は15年前に起きた、大身の旗本同士の間で起きた殺傷沙汰についての顛末である。
跡取り息子を殺された倉橋家と、殺したとされる内藤家の間で一触即発の状態となったが、嫌疑をかけられていた内藤家当主の斎樹が屠腹して果てたことで倉橋家も矛を収め、一件落着となった。
当時、南町奉行だった忠相は、そのときのことをかなり克明に覚えている。
内藤斎樹には、現場から立ち去るのを見たという目撃者がいる一方、そのアリバイを証言する売女もいた。評定所の取り調べは1度行われたものの結論には至らず、吟味は継続ということで斎樹は屋敷に帰されていた。
だがその夜、斎樹は屠腹して果て、内藤家からは病死として届け出があったため、それ以上の詮議は無用となったのだった。
ところが15年経った先日、常陸国は筑波の若葉村で土田半左衛門という絵師が捕縛されたことで、かつて収まっていたはずの事件が息を吹き返す。
放浪の絵師である半左衛門は諸国を巡っていたのだが、関所を通るさい用いた往来手形が偽造されたものだったことが発覚。半左衛門の身柄はすぐ江戸に送られ、時を置かず詮議にかけられることになった。
関所破りは磔刑との決まりがあるため、町奉行や与力たちは型どおりの評定を進めていく。だが吟味役の1人として詮議の席にいた忠相は、半左衛門を見て目を疑わずにはいられなかった。
その半左衛門は、年齢こそ重ねているものの、死んだはずの内藤斎樹に相違なかったのである。 ( 第1章「関所破り」) 本編4章と序章および結章からなる。
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15年前に死んだはずの男が生きていた。そもそも発端となった殺傷事件についても、沙汰に及んだ理由はおろか、その下手人すら確定されてはいなかった。
という、なかなかのミステリーです。
その謎を、丁寧な聞き込みを重ねることで解き明かしていく十一の、地道ながら行き届いた調査能力は見どころでした。
また序章では、御鷹場鳥見役の役人やその手下どもの卑しく非道な行いが描かれ、百姓を庇う十一との間に緊張感が生まれるのですが、その伏線が第4章及び結章できれいに回収されていくところには胸がすきました。そして吉宗の粋な計らいがそれに華を添えているのもよかったと思います。
さらに、食事や料理の描写も実に美味しそうで喉がなるほどです。優れた時代小説作家はみなそうですが、辻堂さんの作品にもそういった魅力があるのも楽しくて、満足度を高めてくれていました。
ただ、忠相の意を受けた十一の探索模様が物語の中心となり、剣戟シーンは最後にお慰み程度に描かれるのみになる点は、物足りなさしかありません。
このシリーズの特徴なのでしょうが、唐木市兵衛なみの剣の腕を持つ十一なのに、活躍の場が地味な探偵仕事ばかりなのはいかがなものかと感じます。
また、女岡っ引きのお半も申しわけ程度の登場だし、腕も外見も弥陀之介を彷彿とさせるがま吉も付け足し程度の登場ではかわいそうです。もう少し脇役をうまく使ってもらえれば、作品としてのおもしろさは倍増するのではないかと思うのですが……。 -
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「風の市兵衛 弐」(第二期)第12弾。(通算・32作目)
市兵衛は、病に倒れ療養中の大店下り酒問屋〈摂津屋〉の主人・里右衛門から、彼が若き日に真心を通わせた三人の女性を捜し出し、自分の気持ちを伝えてほしいと頼まれます。
早速、市兵衛は矢藤太と共に、里右衛門の数十年も前もの想い人の探索に動き出しますが・・・。
今回は、市兵衛さんの活躍場面は少な目で、“粋人の里九”こと里右衛門が愛した三人の女性達の物語がメインでした。
依頼された探索も、いつもの依頼と比べて割とイージーに進むので、盛り上がりに欠けるといいいますか、何だか物足りないな・・というのが正直なところです。
終盤に、鬼しぶさんが追っていた悪人たちと市兵衛さんの剣戟がお愛想程度に(?)描かれていましたが、これがあっさりとしたもんで、シリーズ初期の頃、弥陀ノ介(再登場熱望)と共に強敵とビシバシ闘っていた頃が懐かしいですね。
(何気に市兵衛さんもいい年なので、激しすぎる剣戟はしんどいのかもしれないですがw)
ま、今回は三人の女性達それぞれの生き様、という人情噺としてしっとりと楽しむ巻。と、捉えるのがよいかもですね。
あと、以前もレビューに書いた気がするのですが、こちらの作者の方は、情景描写や地理描写がすごく丁寧に細かく(細かすぎる程)に描かれているのですが、この巻は内容に動きが無かったせいか、描写がちょっとしつこく感じてしまいました。
・・・等々、文句多めになってしまいました(個人の感想ですよ~)。
正直今回は★2.5って感じなんですけど、ずーっと読んできたシリーズという誼みで★3にしておきますw。
次巻は、もうちょい躍動感ある展開を期待したいですね。
あ、あと鬼しぶさんの登場を増やして頂けると嬉しいです・・弥陀ノ介の再登場と併せてお願いします~。