辻堂魁のレビュー一覧
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優れた、読み継がれる時代小説は、その書かれた時代にシンクロ・フィットすると思っています。同時代に影響された思想や、ありたい世の中への希望や、そこはかとない懐かしみを盛り合わせて創造するのです。
山本周五郎の生真面目な剛直とまで言える精神(戦後復興期)、池波正太郎の洒脱さにくるまれた暖かい人間観察(高度経済成長期)、藤沢周平の哀愁こもった深い情緒(安定成長期)が今までのわたしをとらえました。
辻堂魁さんはまた、異なった方向から時代小説に切り取ってくれます。
北町奉行所平同心日暮さんの「事件簿」ではないのです。「始末帖」なのです。でてくる事件はありふれています、けれども事件を単に解決す -
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「風の市兵衛 弐」(第二期)第八弾。(通算・二十八作目)
江戸中を謎の流行風邪が襲います(何となくコロナを連想させます)。その流行風邪に罹って重篤になっている、金貸しを営む旗本からの依頼で、その旗本の息子と共に借金の取り立ての手伝いをすることになった市兵衛さん。
なかでも百両近い貸付があるのは、大身旗本・広川助右衛門。ギャンブル依存症の広川を利用しようとする悪党たちに例によって襲われる市兵衛さんですが、いつものように難なく撃退する安定っぷりを見せてくれます。
一方、“鬼しぶ”こと、同心の渋井鬼三次の息子・良一郎は見習いとして北町奉行所に出仕中ですが、面倒な同輩に無理矢理連れていかれた賭場での乱 -
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風の市兵衛シリーズは好きで、全作読んでいます。
分かりやすい勧善懲悪、と言う感じもしますが、
登場人物のキャラクターが魅力的で、読後感も良く、楽な気持ちで楽しめて良いです。
特に、市兵衛の強くて賢く、冷静でクールな感じがするけど実は温かくて優しい人柄に惹かれます。
今回は、少し物足りない印象。
江戸は流行り風邪が猛威を振るい、次々に人が亡くなっています。その対応に追われている柳井宗秀の紹介で、
密かに金貸しをしている旗本に雇われ、借金の回収をする市兵衛・北町奉行所に見習仲間として出仕し始めた、鬼しぶの息子良一郎が巻き込まれる賭場での揉め事で出会う龍喬・西国の盗品を扱う闇稼業を営む古物商の傳九 -
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読む本を決める動機はさまざま。これは家人のおすすめ。本文もさることながら、解説がいいと言う。
初、辻堂魁だが、なるほど人気TVドラマ『風の市兵衛』作者、その「人情物」もなかなかのよさです。
回し役は自身番に書き役で勤めている戯作作家の卵「可一」、江戸時代の花川戸町の人間模様オムニバスです。
帯の惹句「人の本心は誰にも分らない。だから思い遣る・・・。」が胸にささるのですが、解説の
「・・・いや、人は誰しも、他人にはわからない思いを抱えている。明るい人も穏やかな人も、大人も子どもも、身分のある人も庶民も、武士も町民も、悪人ですら、何かしらの思いを抱えて今日を生きている。そして互いに、 -
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赤穂浪士事件のもう一つ顛末
こんな「赤穂浪士討ち入り事件」の顛末があるのかと感じさせられた作品である。
主人公は一戸舞国包󠄃で、彼の縁筋から人の始末を依頼される。これは前作と同じ流れである。
討ち入り事件で犯した二人の不忠者がいる。一人は吉良方の家臣、山陰甚左。もう一人は赤穂浪士の河井太助である。彼を探して郷里赤穂から江戸に来た内儀の由良との悲しく切ない物語だ。
しかし、この物語を読んでいると、一見ありそうに無いと考えてしまうのだが、いや有るかもしれないと思わさせる不思議な物語である。そもそも主人公の国包󠄃は市中の刀鍛冶であり、その人がなぜ人の始末を依頼されなければならないのかが、どうしても腑に落ちない。赤穂浪士の -
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「風の市兵衛 弐」(第二期)第六弾。(通算・二十六作目)
まだ大坂にいる市兵衛さん達。今回は百姓の女房が辻斬りに遭った件の真相調査を依頼されます。
犯人の侍は本当にクズで、被害者のお橘さんに土下座で謝罪してほしいくらいでしたが、現実的な示談になった感じです。
そして、いよいよ江戸に戻る旅路で、前回市兵衛さんに闘いを挑んできて破れた室生さん関係の方々が、また一方的に決闘を申し込んできます。
それにしても決闘を申し込む理由が「そっちの都合でしょ!」と言いたくなってしまう程一方的なのに、受けてあげる市兵衛さんへの態度が良くないですよね~。
市兵衛さん、今回もお疲れ様でした。次巻はやっと江戸ですかね