渡辺靖のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレトランプ大統領の誕生は、米国における白人のマイノリティ転落に対する恐怖(白人によるアイデンティティ・ポリティクスの行使)、急速なグローバル化やインターネットの登場による中間層の没落(豊かだったものが貧しくなったという感覚、インタネットの登場による生活様式の共有への不信)といったより大きな問題を表象しているに過ぎない。こうした社会の流れや急速な変動への揺り戻し、(移民に対して非同化政策を採ったことに起因する)共有できる敵を常に必要とする従来のアメリカン・ウェイという観点から、トランプ政権が徹底して自国第一主義に走ることは当然の予想である。政治的正当性への不信も含めた民主主義の劣化、享楽化(ポスト・トゥルース/非知性主義的態度)に対抗するためには人々の意識のありよう(行為と体験に対する観察と抽象化/高次化)の変革が必要と考えられる。
-
Posted by ブクログ
ネタバレソフトパワーを活用した外交、パブリック・ディプロマシー(PD)について書いてある本。2011年発行なので最近の情勢が反映されている。特に東日本大震災と中国との関係の変化は大きい。
大まかな流れはPDの今、歴史、具体例、批判、日本のPD、となっている。ソフト・パワーはジョセフ・ナイが提唱したものとして知っていたがこの本はアメリカだけでなく世界各国でソフト・パワーがどのように機能しているのかが解説されている。
重要なことは、外交という点からすれば効果が無ければ打ち切られてしまうのもやむを得ないが、PDは確かに効果が目に見えにくいが効果は確かにあるということだ。狭い国益に縛られればかえって国益を損ねかねない。日本は特に中国との関係改善のためにPDを活用したい。しかし現状はPDの規模は驚くほど小さく、まずはPDの重要性を認識することが必要である。 -
Posted by ブクログ
パブリックディプロマシーの意義について、他国の例も挙げながら非常にわかり易く説明。ナイのソフトパワーを如何に実務的に国策として展開していくか、まさに今の日本に必要とされている。
縦割り的(国内、国外)に取り組むことで、その効果は望まずにどんどん他国に流されるのでなく、マンガやAKB、相撲などフルに活用して、親日の波が市民レベルで拡がるきっかけ作りを国としても取り組むことを期待したい。
ODAなども、貧困削減なども大事であるが、ある程度の新興国に対しては、パブリックディプロマシーを事業計画に取り入れながら進めることも必要ではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
パブリックディプローマシーとは、相手国の政府ではなく相手国の国民に働きかけて、国際社会における自国の存在感やイメージを向上させ、自国についての理解を高めて行く外交政策である。
しかし、ソフトパワーやクールジャパンといった掛け声は手垢まみれで、明確なターゲットの不在、情報の操作可能性への過信など、戦略の不在と過剰を問題視する。
むしろ自国の負の現実も含めて事実を伝える自己批判力のある発信が国際的発信力をもたらす、透明性や対話力が示す懐の深さが対外政策を円滑にする、という著者の意見に耳を傾けたい。
実際に、スイスがマネー・ロンダリングにより悪質な組織の運営を間接的に支援しているとのグローバル社会の批評に対処した例や、東日本大震災でのトモダチ作戦などの好例がある一方で、ベトナム戦争時の米国への批判をかわそうとして失敗したパブリック・ディプローマシーの例、が紹介されている。
外交は一部のエリートではなく、市民社会レベルでの相互理解の努力が必要であること。そして、ハードパワー、ソフトパワーの両面での外交努力が必要であることを学ばせてくれる。 -
Posted by ブクログ
政府同士の外交ではなく、相手国の世論に働きかけるパブリック・ディプロマシー。現在のいわゆる韓流や、戦後の米国の対日政策が思い浮かぶ。マーケットの小さい韓国が外に向かざるを得ないのは国家の方針としてしょうがないが、ちょっと前の男優さんたちや女性グループの露出の多さで日本における韓国の好感度は全般的に上がっているように思える。(同時に反発もあるが)
日本を占領した米国も、その政策によって瞬く間に敵からあこがれの対象になってしまった。
「パブリック・ディプロマシー」という言葉自体は、意味合いこそ現在と違うものの、19世紀半ばには確認できて、その実践例ははるか昔のアレクサンドロス大王の対ペルシア人政策にまで遡るとのこと。
クール・ジャパンという言葉を聞くようになって久しい。しかし、そのポップカルチャーが日本発の文化と認知されていないところも多いようである。
国のバックアップを呼びかけたいところだが、ここがソフトパワー外交の難しいところで、政府の関与が露骨になるとその魅力が低減されてしまうという。著者は、ソフトパワーの原動力はあくまで民だとし、政府の関与は知的財産権の整備など最低限にすべきとしている。
「「美人コンテスト」ではない。好感度やブランドばかり気にするのでは、世論調査の浮き沈みのみを杞憂する政治家と何ら変わるところがない。むしろ、必要とあれば「美人」の概念そのものを変えてゆくこと、そして、そのために人びとの「心と精神を勝ち取る」こと。それがパブリック・ディプロマシーの要諦に他ならない」(193ページ) -
Posted by ブクログ
ネタバレ白人ナショナリストの主張がまとめられており、アメリカを破壊した要因としてグローバル化が挙げられていた。彼らは、BLMやPCに対して「言論の自由が脅かされている」と疑問を抱いている。
著者は攻めた質問をしていて、その中でも印象に残ったのが「日本では米国の多様性を高く評価する声が多い。だから世界でも移民先として人気である。白人は白人としての尊厳を重んじているが、世界の人々が米国に抱いている印象と全く違うのではないか?」というような感じだったと思う。それに対して、多様性を好むのはビジネスだけだという意見があった。
反ユダヤ
グローバリズムを牽引しているのはユダヤ人だということが白人ナショナリストの主張で端々に見られた。
「大統領はオバマ以外全員白人だったのでは?」
→むしろ反白人という立場に立った方が票を獲得できる。
なぜ?人口動態。移民政策に目をつけたトランプは効率が良かった。
リベラルは幻想 -
Posted by ブクログ
アメリカ研究の第一人者。今、最も良質なアメリカウォッチャーといえばこの方になるのかな。
白人ナショナリズムはリバタニアリズム同様、現在も生成過程にある概念で、その在り方は多様であり、実に様々な団体が発生しているとのこと。
これらが、個別的で断片的な事例の記述にとどまっているのは、現段階では学問的体系にまとめられるような状況ではないからであろう。そのことがアメリカ社会が混沌としていることを示唆しているかのよう。
私なり大きくまとめてみる。白人ナショナリズムは優生思想からくる他人種への蔑視という側面ももちろんある。だが、一方で、白人自体がマイノリティ化する中で、白人の権利が侵害されているという被差別意識が白人ナショナリズムを台頭させているという面もあるという点が重要だと思われた。差別は被害者意識が生む。すべからくどのような差別にも、それを行う当人に加害者意識はない。 -
Posted by ブクログ
新大陸でイギリスを追い出し「大国なのに君主なき民主主義」の道を進んだ実験国家=「理念の共和国」はいま、岐路に立つ。現代アメリカの政治状況を解説する、非常にためになる本だ。
ソ連が崩壊して冷戦が決着した1990年代以降、この国は党派対立が鋭くなり、政治不信が進んだ。これがオバマ、とトランプという2人の大統領を生んだ。2人は手法は違えど根は同じなのだという(p18)。
保守は右へ、リベラルは左へ重心を移し、中道は求心力を失った。コロナとSNSはこうした動きを加速した。いまや米国は「交わることのないパラレルワールドを形成」(p170)しているのだ。本書で紹介される「キャンセル文化」だの、「暗黒啓蒙」だのといった事例は、驚きを超えて、すごく怖い。
さて、その中で、中国のような権威主義国家が持ち得ない、民主主義の自己批判力や自省力という「メタ・ソフトパワー」を維持できるか。「理念の共和国」の命運を決めるのはここだろう。もちろん、これはアメリカに限ることではない。