【感想・ネタバレ】リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義のレビュー

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Posted by ブクログ

リバタリアニズムというのは、個人の自由を最大限尊重して、政府の介入を最小限にする、という思想のようです。
著者は、アメリカのリバタリアニズムのNPOや財団、中国の財団に取材しています。

リバタリアニズムという思想そのものよりも、アメリカのNPOや財団が多くの寄付金を集めて、かなりの資金力があることが印象に残りました。

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2023年11月17日

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【私たちは往々にして現実社会における「影」や「負」への対応を政府に丸投げしてはいないか。そして、政府を批判することで私たち自身の「他者への責務」から逃れ、自らを道義的高みに置こうとしてはいないか】(文中より引用)

保守やリベラルといった広く用いられる用語では定義することが難しい「リバタリアニズム」という考え方。淵源やその広がりを辿りながら、アメリカで若者の注目をにわかに集めつつある思想の説明を試みた作品です。著者は、『文化と外交』などでも知られる渡辺靖。

リバタリアニズムの解説本として機能しつつ、リバタリアニズムが硬直的・単一的な思想ではないということを示している点が魅力的。アメリカを分析する上で一つの重要な視座を与えてくれていると思います。

アイン・ランドはどこかで読んでみよう☆5つ

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2019年12月11日

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本来の自由主義

リバタリアニズムを代表する政治家として米大統領選にも出馬した経験のある元米下院議員ロン・ポール氏が現役時代の2012年、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授と、経済ニューステレビのブルームバーグで討論したことがある(『ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ』に収録)。

中央銀行によるインフレ政策を支持するクルーグマン教授は、金本位制の復活を唱えるポール氏に対し、百年前の世界に戻るようなものだと批判。するとポール氏はあざやかにこう切り返す。「教授の主張は一千年、二千年前に戻りたいという考えではありませんか? かつてのローマやギリシャのような国家が、自分たちの通貨を減価させたように」

ポール氏のこの発言から二つのことがわかる。一つは、あたかも最新の経済理論に基づくかのように思い込まされているインフレ政策は、はるか古代から国家が人々の財産を収奪するために駆使してきた手口にすぎないこと。もう一つは、金本位制を支えるリバタリアニズムの考えはわずか百年前まで、世界における経済政策の常識であり、過激な思想でも何でもなかったことだ。

リバタリアニズムは「自由至上主義」と訳されることが多く、本書の副題もその訳語を踏襲している。この訳語は過激な思想であるかのような誤解を与えてしまう。リバタリアニズムには国家の廃絶を唱えるラディカルな無政府資本主義もたしかに含まれるが、本書が詳しく解説するように、それがすべてではない。国家に一定の役割を認める考えも含まれる。米国では自由主義を意味する「リベラル」という言葉が左翼に乗っ取られてしまったので仕方ないが、日本では「自由主義」をそのまま使えばいい。

副題にケチをつけてしまったけれども、本書の内容はすこぶる有益である。米国を中心とした多くの活動家や研究者へのインタビューも興味深いが、見逃せないのは歴史的な考察だ。リバタリアニズムの源流をハイエクやフリードマンら現代の経済学者だとする解説をよく目にするが、実際はジョン・ロックやモンテスキューら17〜18世紀の啓蒙主義時代の欧州の政治哲学にまで遡る。

その思想は米国に受け継がれる。初代大統領ワシントンや第3代大統領ジェファーソンは、諸外国との貿易を推奨する一方で、軍事同盟など政治的なつながりを拒絶した。前述のロン・ポール氏は共和党内における反イラク戦争の急先鋒で、在日米軍を含む海外駐留米軍の撤退を訴えたことで知られるが、この姿勢はワシントンら建国の父たちの理念に「驚くほど忠実」だと著者は指摘する。

リバタリアニズムは過激な思想ではない。この百年の間に世界が自由を否定する方向に傾いてしまったために、過激に見えるだけだ。

「自由」をその名に冠する政党が戦後ほぼ一貫して政権与党であるにもかかわらず、福祉国家や軍事同盟に舵を切り続けてきた日本。野党にも本来の自由主義の復権をめざす政治勢力は存在しないに等しい。先行きに展望の見えない現状を変えたいのであれば、リバタリアニズムがそのカギを握るのは間違いない。

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2019年03月14日

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アメリカにおけるリバタリアンの来歴、現状、展望などの取材とインタビューに基づいた内容。リバタリアニズムの概要と特徴を大まかに理解することができた。
想像以上に彼らは狂っていて、想像以上に彼らは現実を深く認識し、時には自らの誤りを意味する考察もしている。面白かった。

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2019年03月12日

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自由至上主義者はマリファナを吸いすぎで頭がおかしくなった連中なのか。自由市場、最小国家、社会的寛容を重んじ経済的には保守、社会的にはリベラル。連邦政府への懐疑心が強く国防、司法、治安のみを政府の役割とする夜警国家論も。弱者を切り捨てる市場万能主義と批判も共和、民主にも共感できない米国若い世代が増加中。中南米では急速に浸透中、東欧では対極の権威主義が増殖中。

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2021年08月19日

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この本を読んでいると、国家の干渉という点では、自分はリバタリアニズムの影響を大きく受けているなあと感じる。

リベラル、保守どちらにもない視点がリバタリアニズムにはある。そしてリバタリアニズムといっても相当幅があるのが面白かった。

「人種差別は最も下等で下品な原始的集合主義」という立場をとりながら、政治による是正措置には否定的など、独特なロジックがあるのは興味深い。

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2021年04月22日

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いつも渡辺先生の現代アメリカに対する視点のフレッシュさに感心する。
アメリカを通して日本を見つめているとの記述に、激しく同意。自身も海外の経験を通して結局のところ日本を思っている。こうした視座に立つ事が大切なことだと。

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2019年05月11日

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ネタバレ

名前以外ようわからんかった「リバタリアニズム」、結局は、「空理空論」つうか、「ぬえ」みたいなもんやね。「リバタリアン」を自認している人達の現実の政策的主張に幅がありすぎだし(中選挙区制時代の自民党並の幅広さw<バカにしてる)逆に突き詰めれば、無政府資本主義(なんだそりゃw<バカにしてる)になる。分断の拡大再生産みたいな志向だね。
まあ、何が「保守」で何が「リベラル」?そもそも対立点ってそこにある?って時に、考え直す補助線としては、必要かもしれない(いらないかもしれない)政治に影響を与える「思想」ではあっても、現実の「政治」にはならないね、これは。ただし、「リバタリアン」を自認する人が増えていることについては、留意を払うべきであろうが。

あと、自分が習近平やプーチンだったら、全力で全米のリバタリアンを支援するね、彼等の影響力が増せば、(軍事的でアレ、経済的でアレ)合衆国の対外関与が減るのだからw(勿論、もうやってるよね?

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2019年05月06日

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「これからは社員を管理しない会社が生き残ってゆく」という論調が散見される。社員を大人扱いして、その自主性と自律性を重んじ、管理という名の会社の介入を最小限にして生産性を高めよう、という。
確かに、過去に社員が犯した大きなミス、あるいは、想定し得る最悪の事態を基準にしてがんじがらめの社内ルールを作り、不祥事を減らしている一方、業務効率を大きく落とすというケースがある。これでは、ミスとは無縁の多くの優秀な社員をも巻き込み、企業全体の生産性を落とす、ということにつながりかねない。
でも、社員を大人扱いしたところで、そこからこぼれる人たちは当然出てくる。大人として認められなかった場合、最悪、彼らは切り捨ての対象となる。

自由市場・最小国家・社会的寛容を重んじ、弱者切り捨てとの批判を受け、シリコンバレーでの支持が小さくないリバタリアニズム。日本ではいまひとつ広がりを見せていないが、上記の論調が散見されるということは拡大の前兆を意味するのか?

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2019年04月22日

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これほどまでに先鋭化している思想が生まれるアメリカという国。
多くの日本人の理解の外にあるであろうその「自由」への感覚。
とても共感できそうにない。こういうイズムが出てくる素地があるこの国と敵対しないほうがいいことだけは確か。

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2024年05月12日

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リバタリアニズム思想に深く切り込むというよりは、全体的に近年の動きや事例を多く挙げていく形式。
リバタリアニズムの理論や哲学的考察についての厚い内容を期待していた自分にとっては、イメージしていた内容と少し違ったので後半は読み飛ばす形になった。海外ではこういう動きがあるんだ、ふーんってなりたい人向きの本だと思う。
日本に思想の選択肢を増やした方がいい、というのは大賛成。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

アメリカ社会、とりわけ若い世代に広がりつつある「リバタリアニズム」(自由至上主義:政府の力を極限まで排除し、自由の最大化を目指す)について紹介した書籍。

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・自由市場・最小国家・社会的寛容を重んじる人々を「リバタリアン」(自由至上主義者)という。
彼らは、ある面では保守、ある面ではリベラルである。例えば、移民や人工妊娠中絶などには寛容(リベラル)であり、銃規制や公的医療保険制度には反対(保守)の立場をとる。

・近年、若者の間でリバタリアン志向が高まっていることを示唆する報告が増えつつある。
2017年に18~34歳の若者を対象に行われた調査では、71%が二大政党(共和党、民主党)に幻滅しており、本格的な第三政党が必要だと回答した。

・リバタリアニズムが広まった背景には、インターネットの登場がある。
例えば、Airbnb、Uber などのサービスは政府の法規制によって守られるのではなく、インターネットを通した利用者間の評価を基に自生的に成立する。ブロックチェーンも然り。
こうした技術の進展が、政府とは無縁のリバタリアン的世界を広げている。

・リバタリアンの内実は様々。
例えば「政府の関与の度合い」については、次のように立場が分かれる。
└無政府資本主義
政府の存在を認めず、警察や裁判所などあらゆるサービスの民営化を唱える。
└最小国家主義
政府の役割は、国防・司法・治安に限定されるとする。無政府資本主義者よりは穏健な立場。
└古典的自由主義
「大きな政府」を否定しつつも、政府の役割にはより肯定的。最も穏健で中道に近い立場。

・リバタリアンには立場の違いを超えた共通点がある。
それは「相手(ないし自分)の自由を侵害しない限り、自己(ないし他者)の自由は認められる」とする、相互不可侵の関係性。

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2020年05月06日

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リバタリアン
・経済の自由も個人の尊重も重要視する
・リベラルでも保守でもない立場(リベラルの中でもより急進的な立場のひと、がルーツ)
・リバタリアンにも段階がある、決してヒッピーの集まりではない(段階や流派が異なるのは他の主義も同じ。特定の方に当てはめて考えるのは浅はか)

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2020年03月08日

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リバタリアンに興味があって購入した。自由ってものを考えている中でよく見かける思想だったので、お、読んでみよかな、と。

前半や最終あたりはフリーステイト構想やリベルランドなどすごく面白いと思った。日本の少子高齢化の加速具合とかを見る限り、限界集落を狙ってやれば実現するのでは?なんて夢想して、心が躍った。日本は中央政府が強い統治構造なので、自治立法権を強くしたり、予算とか課題は山積だけど。いずれにせよ、なんてかっこいいアイデアなんだ、と。アイデアの共同体というのも、すっと腑に落ちる。世代かな。

他方で、後半はつまらなくなってきた。一つには、リバタリアニズムというものを考察するのだが、なんというか若干印象論に近いような…あまり学術的な考察になってなかった点があると思う。もう一つは、著者の人脈自慢のような影を感じて、気分的に乗れなかった。ただ、後半もランドなど各種思想家やその影響を紹介してくれていて、イントロダクションとしての意義は深いと思う。

総じて、イントロダクションとしての価値は高い。

ちなみに、後半は考察される人がコロコロ変わるので、注意しないと誰が誰か分からなくなる。

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2019年08月17日

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米リバタリアン党を創設した、デヴィッド・ノーランは、リバタリアニズムの位置づけを、個人と経済的自由をともに重視する政治的立場と位置付けています。個人の自由を軽視し、経済的自由を重視するのが保守、個人の自由を重視し、経済的自由を軽視するのがリベラル、とのことです。

このノーランチャートは、アメリカの2大政党である共和党(保守)と民主党(リベラル)、そして最近注目されているリバタリアンの政治的位置関係を良く説明してくれています。固定した身分社会や巨大な政府による統治の両方を拒むという点においては、いずれも共通とのことです。

リバタリアニズムに多大な影響を与えている思想として、作家アイン・ランドの、「肩をすくめるアトラス」という小説が紹介されています。合理的利己主義を称揚し、公共善や利他主義を否定、集団的思想を拒否し個人の主体的実存を貫いたと、その人物像が語られていますが、元々はロシア出身。個人主義への傾倒は、ロシア革命後の全体主義に対する反発から生まれたのでしょうか。いずれにせよ、グリーンスパンや、トランプ大統領など愛読者が多いようです。

個人の才能や努力による自己実現を重視し、その自由を阻害する要因を排除、否定するのがリバタリアンと理解しました。著名な経済学者であるミルトン・フリードマンの孫が、シーステッドという洋上自由都市を提唱しているエピソードを興味深く読みました。

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2019年06月08日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて購入した。期待した内容だったが、読むのは難解なので、教養書を読み慣れている人にはいいと思う。

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2019年04月15日

Posted by ブクログ

後書きにもあるように、リバタリアンを保守、共和党と同一と考えていた私自身がいた。しかし、そうではなく、リバタリアンで民主、共和双方に信頼を置かず、リバタリアン党という第3党がある。そして大部分のリバタリアンは党を超えて投票行動している。移民、他宗教、LGBT、妊娠中絶に寛容な思想から、むしろトランプ批判が強い。全くの認識誤りだった。彼らからすると日本の安倍政権は「規制大国」「最も成功した社会主義国」との理解はその通りになるだろう。経済的には「保守」、社会的には「リベラル」とは驚きだった。行きつくところに「無政府資本主義」という思想さえあるということは、どこまで知られているだろうか?
著者は共和党の大きな転換点をリンカーン、レーガン、そしてトランプにあると主張する。このレーガン共和党の考えも、リベタリアンとは全く異なる!驚きだった。

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2019年03月11日

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