トーマス・マンのレビュー一覧

  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    まだトニオの方しか読んでいない。
    芸術家を目指す俗人の話。小説って何でも小説になるんだなぁと思った。トニオがたまたま芸術家を目指していただけて、社会との接点を持つようになる若者の多くは、彼に似たような思いを抱くだろうと思うと、この話にはやはり普遍性がある。リザヴェータの迷える俗人宣告は痛快で、その前までのトニオがいとおしい。

    0
    2014年03月27日
  • 魔の山 上

    Posted by ブクログ

    「ノルウェイの森」でキーとなる物語。サナトリウムに入院している従兄ヨアヒムを、学校出たてのハンス・カストルプが尋ねて、そこで7週間のつもりが7年も過ごすことになる。大学工学部を出たばかりの世間知らずなところがなんともリアル。セテムブリーニが御託を並べるところがウザイが、経済的な後ろ盾が無く困窮している彼と、従兄弟達の恵まれた生活とが第1の対比をなす。下巻に第2の対比がある。たっぷり頁を使ったショーシャ夫人との恋愛沙汰がどうなるのか。閉じた空間に医者、患者ら多彩な登場人物がいて、読んでも読んでも飽きない。

    0
    2015年09月06日
  • 魔の山 下

    Posted by ブクログ

    上巻からは想像できないくらいの死。ナフタが登場してセテムブリーニとの宗教論争、政治論争、平和論争が延々と続き、終盤のペーペルコルンの登場で突然円周率の計算についてのご託がはじまって、ひょっとしたらハンス・カストルプの将来の姿かと思わせる。初読のときラストが衝撃だった。物語としては「ブッデンブローク家の人々」の方が面白いかもしれないが、サナトリウムで展開される人間模様が切れ目のない、否もしかしたらあらゆる所に切れ目があるような構造を持っているので、漱石の「我輩は猫である」のような読み方が可能かもしれない。

    0
    2015年09月06日
  • トーニオ・クレーガー 他一篇

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    トニオ・クレエゲルの新訳ということで興味を持ち読んだ。混乱を招きやすい箇所はなるほどあからさまに書かれており理解しやすい。表題作も素晴らしいが、同時収録作品が強く印象に残る。想像以上に挿絵が多かった。

    0
    2014年03月17日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    何度読んだか忘れたが、読むたびに読み方が変わる。デカダンス、美のイデア、イタリア喜劇、国際観光都市に集う国ごとの面々の癖…また、細部に注目してもいい。マンの残酷なまでのユーモアは、読み手を常に試してくる。勝てなければ、出直して再挑戦する、それだけの価値のある作家、作品である。

    0
    2013年03月05日
  • 魔の山 下

    Posted by ブクログ

    本当に世界最高傑作とよんでいい大作。

    ヨーアヒム•チームセン、ペーペルコルン氏、圧倒的な一人一人のキャラクター。

    そのような一人一人と過ごす時間がずっと続いて欲しいと思うが、これまた圧倒的なフィナーレを迎えてしまう。

    大学生諸君に読んでいただきたい。

    そうして、十年ぐらいしたら、再読してみて欲しい。

    素晴らしい感動が待っているよ。

    0
    2012年12月28日
  • 魔の山(下)

    Posted by ブクログ

    読んだ。面白かった。長かったなあ。執筆に12年の歳月を要したとのこと。
    心身にこたえたタイプの面白さです。
    難解な哲学的思索・論争を展開するのみならず、そこかしこにユーモア・諧謔精神までもが散りばめられているのです。このウィットに富んだところがにくい。富野作品のザブングル(古い)を思い出したりしました。

    「ファウスト」(未読)、「ツァラトストラ」(既読)、と並ぶ20世紀文学の名作と言われているらしいけれど、“三枚目”で好感が持てました。サンバルカン(古い)で言うところのバルパンサー(イエロー)感があったような無いような。

    0
    2012年12月09日
  • 魔の山 下

    Posted by ブクログ

    サナトリウムという特殊な閉鎖された状況下で主人公が様々な経験を通じて肉体的・精神的に成長する様を描いた教養小説。
    哲学的な内容から宗教、民主主義、失恋などテーマが盛り沢山で読み始めは難解なものかもしれません。難しいとお感じになられた方は「時」の流れに注目しながら読み進めることをお薦めします。何と言おうと物語の舞台が世俗と切り離された空間なのですから。
    一度読むだけでは理解しきれないほど奥が深い作品です。幾度と読む度に新たな発見があることもこの小説の魅力と言えましょう。
    内容が難解で文量が多いため敬遠される方もいらっしゃいましょうが、声を大にして読んでほしいと言える傑作です。

    0
    2012年03月11日
  • トーニオ・クレーガー 他一篇

    Posted by ブクログ

    とてもよかった。

    まずは、表題作『トーニオ・クレーガー』から。
    繊細で、感傷的で、扱いにくいこの感情を、何と呼ぼう。
    しかしその危うい心を、柔らかに緩やかに収束させるラストに、ほっとさせられる。

    「つまり、いまそこに座っているあなたはね、なんのことはない、要するに〈普通の人〉だってこと」

    トーニオが言われたこの言葉に、ショックを受けない少年少女が果たしているだろうか!
    そう、トーニオも迷子なのだ。私と同じように。彼もまた、〈迷子になった普通の人〉なのだ。

    そんなトーニオは、ささやかな故郷への旅に出る。そしてそれは、小さな決別と、大きな決意の旅となる。

    「危険をものともせず、偉大でデモ

    0
    2011年12月30日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    サークルの後輩が卒論の題材にしてる(トニオクレーゲルの方)ということで読んでみました。
    ただ外国の純文学は初めてだったので、特にヴェニスに死すの方はかなり読むのに苦労が。
    ただ、これは…面白い!
    正直作品全体の命題とかは全然把握しきれないんですが、示唆に富んだ言葉や表現の密度が桁違いで、凄まじく刺激的な時間を貰えました。
    こういう本は何回も読み返すことが理解する上で前提な造りだと思うので、じっくり読み込んでいこうと思います!
    この詩は完成せず、十分に仕上げられず、また、悠々として何か纏まったものに刻み上げられることがなかった。彼の心は生きていたからである。
    後輩の卒論考察が楽しみだ。

    0
    2011年12月25日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ≪内容≫
    『トニオ・クレーゲル』
    孤立の苦悩と、それに耐えつつ芸術性をたよりに生を支えてゆく青年の物語。
    『ヴェニスに死す』
    水の都ヴェニスにて、至高の美少年に魅せられた芸術家の苦悩と恍惚を描いた作品。

    ≪感想≫
    ヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す」がこの秋、ニュープリント上映されている。銀座テアトルシネマに職場がほど近く、原作を一度読んでから映画をみようと思い、本書を手にとった。

    マンの初期の代表作2編。どちらも芸術家あるいは文士を主人公に据え、芸術とは何かを徹底的に追求し苦悩する姿を描いている。

    「ヴェニスに死す」は映画のイメージ(というか、ビョルン・アンドルセンのイメージ)が頭か

    0
    2011年10月24日
  • 魔の山(下)

    Posted by ブクログ

    1924年に出版された小説にこんなに共感出来るなんて意外でした。「精神と肉体」だとか「生と死」だとか「愛」だとか「時間」だとか、そういったかたちのないもの、理屈で解明出来ないものとはやはりいつの時代にも不変のテーマなんですね。そしていつの時代の人々も、同じようなことを感じ同じようなことに苦しみ同じような結論を出す。面白い。本当に面白い。

    0
    2011年07月21日
  • トーニオ・クレーガー 他一篇

    Posted by ブクログ

    「トーニオ・クレーガー」、深く心に残る。
    芸術と生について、
    主人公が抱えている葛藤、美意識、憧れと卑下、渇望、迷い、
    そういうものを取り込んで、向かう人生。
    とてもパーソナルな、それでいて普遍的な、傑作。

    0
    2011年05月28日
  • 魔の山(下)

    Posted by ブクログ

    ナフタがとても好きだ。
    現実的なのは病であとは精神的世界と教養的世界で語られていたように思う。

    ナフタの最期とハンス・カストルプを目覚めさせた戦争がそれまでの世界とのギャップでくらくらした。

    ナフタが出て来てから物語は飛躍的に面白くなったけど、上滑りしたら意味ないのでじっくり読んだ。

    作中語られるように確かに錬金術的物語だけど、重要なテーマの一つとなっている「時間」についてをあの魔の山の上で描くのなら理想的な長さの作品だと感じた。

    0
    2010年07月31日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    言い忘れていました。この2篇に関しては、岩波文庫よりもこの新潮文庫の訳文のほうに、私は慣れているのでした。そして、岩波の「トニオ」に載せた「リザヴェータさん」はこっちのほうで、つまり岩波では「リザベタさん」でしたね。やっぱり、リザヴェータさんのほうがいいな。その1点だけでも、こちらを私の底本にしたいと思います。さて、まだ『魔の山』や『ブデンブローク家』のことを載せていないではないか、と言われそうですが、あれらには、まだ登攀していないのですよ。逃げるつもりはありませんけれど、きっとそのうちに、ね。約束します、運命の女神の許す限りにおいて。

    0
    2011年07月19日
  • 魔の山 上

    Posted by ブクログ

    大学時代に購入して、何度も何度も挫折しながら読み進めた本。スイス高原にあるサナトリュウムでの奇妙な療養生活を描く。時間感覚や死の神聖化など哲学的な内容を多く含む。一生かけて付き合って行きたいと思う本。

    0
    2009年10月04日
  • 魔の山(上)

    Posted by ブクログ

    10年以上前に読んだのですが、難しいことはわからなくても雰囲気が大好きで、何度も読み返した記憶があります。おそらく私にとって読みやすい文体だったのと、当時自分が療養生活を経験していたので共感する部分も多く、退屈しないで読めたのだと思います。サナトリウムでの療養生活の細かな描写や、そこに集う人々の人物描写が面白いと同時に興味深かったです。今読み返すと全く違った感想を持つかもしれません。ちょっと気力が持たなそうですが…

    0
    2009年10月04日
  • 魔の山 下

    Posted by ブクログ

    マンの超大作の下巻。中心的な登場人物はハンス・カストルプ、セテムブリーニ、レオ・ナフタ、ペーペルコルン氏。ハンス、ヨーアヒム、セテムブリーニ、マダム・ショーシャのあいだで保たれていた均衡が破れる。マダム・ショーシャの転院もさることながら、最大の原因はレオ・ナフタという反近代的――反セテムブリーニ的――な知性の登場である。ハンスは、セテムブリーニの人格には好意を抱き続けるがナフタの懐疑的で破壊的な知性に取り込まれかかる。しかし、そこでさらに登場するのが反知性的な権力者としてのペーペルコルン氏である。ハンスは、ペーペルコルン氏の登場によって知性への憧れを曇らされる。このような展開のなかでハンスの立

    0
    2009年10月04日
  • 魔の山 上

    Posted by ブクログ

    マンの超大作の前半部分。中心的な登場人物は、ハンス・カストルプ、ヨーアヒム・チームセン、セテムブリーニとマダム・ショーシャ。
    ヨアヒムの付き添いで結核療養所に入院したハンスの「成長」の物語。結核療養所という特異な空間において、セテムブリーニとショーシャとの関係がハンスに複雑な「成長」を遂げさせる。セテムブリーニはハンスを理性的に成長させる。だが同時に、ショーシャとの神秘的な関係を通じて、ハンスは理性的には解決できない自己のありかたに直面する。
    ハンスとマダム・ショーシャの神秘的な関係に心底魅了された。

    0
    2009年10月04日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

    Posted by ブクログ

    『トニオ・クレーゲル』…これほどまでに全編一字一句余すところなく共鳴できる作品は、これから先二つと出会えないと思う。感受性が最も鋭敏な思春期の頃に出会えてよかった。今ままで読んだことのある中で恐らく最も好きな本。
    『ヴェニスに死す』…当時の私には語彙があまりに難解すぎて途中で断念。別の訳者(名前失念)の訳で最近読み直したが読むペースが遅すぎて噛み締められなかったのでまた読みたい。

    0
    2012年01月03日