トーマス・マンのレビュー一覧

  • トーニオ・クレーガー 他一篇

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    構成がとても美しかった。些細な表現もリフレインされ、本当によく作り込まれている…。妥協がない作品。
    トーニオが社会とのあいだで自分自身を見つめ、壊し、再構築していく過程に、彼の真摯さと希望を感じた。

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    2023年10月03日
  • 魔の山(下)

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    ゲーテのヴィルヘルムマイスターと並ぶドイツ教養小説の名著。1924年作。
    主人公ハンス・カストルプはスイス山奥のサナトリウムでの療養という非日常の世界で、出会い啓蒙喪失葛藤を通して成長していく。
    思想、政治、イデオロギー、宗教、哲学、文学、オペラ、自然科学、神秘体験等とにかく広範なリベラルアーツや当時の西洋アカデミズムに触れることができて面白い。西洋でいう批評精神批判精神がどういうものかもよく分かる。が、上下巻1400ページにわたる大著、博覧強記の教養、読み終えるのに苦労しました…
    さて、下巻。
    いとこで親友のヨーアヒムの臨終の場面はとりわけ迫真で胸に迫る。大人物ペーペルコルンとの出会い対決別

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    2023年06月07日
  • 魔の山 下

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    結局完全に理解できないまま読破してしまいました。けれども読み終わってから、心がゾワゾワするような感じがします。いつか再読したい作品です。

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    2021年11月02日
  • 魔の山(下)

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    ネタバレ

     ついに読み終わりましたよ、上下巻1400ページの大作!

     若い時なんで読まなかった、いえ、読めなかったのでしょうね。大作ということならもっと長大編を読みましたものね。でも、とにかく夏の暑い盛りに(豪雨もありましたが)汗かいてよくこの歳で読めたと自分で感心してます。

     作家倉橋由美子さんは病気になるとベットに持ち込み読んで、読み終わると病気が治るのが理想だそう(『偏愛文学館』)10年ごとに読みたくなったそうですが、そんなに病気になるのはちょっとどうも、ですよね。

     主人公のハンス・カストルプがスイス高原のサナトリュウムへ、いとこの見舞いに行ったら自分も結核になっていたということがわかり、

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    2021年08月24日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    ネタバレ

    読み切った!やったあ!という気持ちが強い。

    どちらも芸術家を主人公とした話で、その精神性がフォーカスされている。自分を俯瞰する視線から絶対に逃れられないことについての嘆きはよくわかる。そういう人が芸術家なりえるということも。「ヴェニスに死す」はここから脱しようという老年の男の話である。芸術家というか、何かを創ることにその心を捧げている人というのはめちゃくちゃ人間な気がすると思った。
    どちらの小説も純粋な読み手(創るということをしない人)が読んだら、どんなふうに思うのだろうか。

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    2021年07月23日
  • 魔の山(上)

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    舞台は第一次世界対戦前、スイスの山奥にあるサナトリウム。ヨーロッパ中から結核患者が集まって療養している。
    マンは講演で「私は一生を通じて一つの物語を語りつづけてきた市民的作家であって、市民性から脱却する過程を語りつづけてきた。」と言っており(河出書房版解説)、
    主人公「ハンス カストルプ君」は、「ドイツ君」だと考えれば、読みやすく分かりやすい。

    キャラクターの濃いのがたくさん出てきて個人的にはめちゃくちゃ面白かった。
    中でもゼテムブリーニとナフタの、ハンスカストルプを賭けての思想合戦が面白い。が、難しく理解したとは言えないので、知識を付けて、10年後ぐらいに再読したい。

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    2021年03月21日
  • 魔の山(下)

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     上下巻の大長編なので読み通すのに精一杯、というのが正直な所だが教養小説を志向しただけに、様々な、そして趣の異なった魅力がふんだんに詰まった小説だった。
     第一としてはセテムブリーニ、そしてナフタとの議論、この部分が通読して一等面白かった。第二はシャーシャ夫人との恋の行方だろうか。第三にはマンの本作における時間感覚。小説内の時間の問題についてはジュネットの『物語論』を適用させられるのだがそれだけでは済まない〈魔の山〉独特の時間の流れ方を考えてみるのもよいかもしれない。
     
     続けようと思えば何処までも続けられる類の小説なのだろうが、一応の筋はあるので、それに関して思った事と言えば、これは獲得と

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    2020年10月12日
  • 魔の山(下)

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    なるほど、詰め詰めに詰め込まれている。
    科学と自然、病と健康、人文主義と虚無主義。西欧と東洋。富。隷属。音楽。恋愛。戦争。

    これだけてんこ盛りにされていれば、この本を脳内に分類始末をつけるに際して、気圧されたように「これは教養文学である」と言って逃げたくなる気は分かる。

    逃げずに、ここに書いてあったことを整理してみようとすると、時間をくださいと言いたくなるのが正直なところ。しばらくかけて(下手したらこの後の人生をかけて)考えてみる。

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    2019年04月22日
  • 魔の山 上

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    ネタバレ

    とにかく長い。退屈。特に何も起きないまま上巻が終わる。ちょこちょこ動きはあるのだけれど。サナトリウムでの様々な人々との交流を通した青年の成長物語、とでもいうのかしら。病気、死、宗教、戦争、いろんなテーマを登場人物を通してひたすら討論していく場面が続く。しんどい。下巻、盛り上がりを見せてきたところで終わってしまう。しんどい。小説というよりも哲学書のような。しんどかったけど達成感はあった。これを読めたらもう何でも読めそう。ハンスが遭難しかけて生と死について開眼していくところは繰り返し読んだ。あの部分のために他を読んだのだと言ってもいいレベルで沁み入った。結論、しんどかったけど読んでよかった。しんど

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    2019年03月16日
  • 魔の山(上)

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    ハンス・カストルプは、ダボスのサナトリウムで療養中のいとこを訪ねたが、滞在中に病に罹り、そこでの長期療養を余儀なくされる。療養生活の中でショーシャというロシア婦人に思いを寄せるようになり、謝肉祭の夜に告白する。しかし、それは彼女が翌日サナトリウムを発つという日であった。

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    2018年11月04日
  • 魔の山 下

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    ネタバレ

    とてつもなく大作。
    様々な人が入り混じり
    通り過ぎ去っていく…
    そしてハンス青年は変わらず…

    彼の心はどこか空っぽだったのかもしれませんね。
    最終的には強制的に魔の山からは
    去らざるを得なくなり、
    必然的にこの物語は幕を閉じます。
    いつかはやってくるのですよ。
    自主性を持つ日が…

    結局のところセテムブリーニやナフタのような存在は
    机上の空論を食っているだけで
    やはりどこか読んでいて違和感を覚えました。
    ハンスは彼らにとっては無知の象徴でしたが
    染まらなかった点では無知でないと思いましたが。

    人には様々な誘惑もあり、
    その中には悪のものもあります。
    ショーシャ夫人がある種の堕落の
    象徴なの

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    2018年06月29日
  • 魔の山 上

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    ネタバレ

    これは読むのに苦労したなー…
    なぜならば終盤のハンス青年の
    ほのかな思いが成就するときに
    他の言語でしゃべっているのを表現するために
    カタカナ混じりの会話になってるのよ。

    平凡な位置青年であるハンスが
    いとこの療養に付き合いうために
    3週間の期限付きでサナトリウムに
    行くことになったけれども…

    …がつく通りでお察しです。
    それとページ数で。
    結局彼も発熱により
    サナトリウムから降りられなくなるのです。

    平凡な彼は
    やがて様々な患者に感化され
    心の成長を遂げていきます。
    人体に興味を覚えたり
    恋というものを覚えたり
    そして、それが成就したり。

    下巻、すごく気になるのよね…

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    2018年05月28日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    大作「魔の山」の前に、トーマス・マンの雰囲気をつかもうと思って読んだ。「ヴェニスに死す」は別の訳で読んだので割愛。「トニオ・クレーゲル」は魔の山を読む前に読むには丁度いい小説だと思う。多少、観念的で暗中模索気味な読書になるが、読み通せば感じるものはある。傷口が拡がるような感覚じは読み通して良かったと思えるものだし、再読しがいのある作品だと思う。三島的感性というよりも芸術や青春に対する憧れや愛着といったものを見つめている。途中少し集中が切れそうになったが読み終えてよかった。読み通す価値のある小説だと思う。

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    2017年12月18日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    トーマス・マン。
    とにかく長大・重厚な作品を書いた大作家という印象だが、本書は比較的ボリュームの軽い、中編を2編収める。
    とはいえ、ここにも「過剰なる叙述の片鱗」と言ってもいいような、詳細かつ細部に分け入っていく、畳みかけるような描写がある。
    2編に共通しているのは、「決して混じりえぬものへの憧憬」とでも言えようか。。

    『トニオ・クレーゲル』は一人の芸術家の半生を描く。謹厳な父に、異国から嫁いだ、夢見るような母。周囲に完全に溶け込むことのない一対の観察する目のような少年時代が印象的である。少年トニオが愛したハンスは、トニオよりも乗馬友達の方がお気に入りだ。長じて詩人となったトニオが女流画家に

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    2015年08月13日
  • 魔の山(上)

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    本当は岩波文庫で読もうと思っていたんですが、新潮文庫に日和ってしまいました。
    それでも、読むのは大変でした。
    なにせ長い!

    読む前は、なぜいとこが療養しているサナトリウムに3週間も見舞いとして滞在するのか、そこが疑問でした。
    だって、結核って伝染病でしょ?
    なんで見舞いに3週間?

    見舞いと言えば見舞いなんですけれど、ハンス自身も体調があまりよくないというので、転地療養をするように医者に言われて、いとこのいるサナトリウムに来た、と、そういうことでした。
    それにしても体が弱っている時に、結核患者のたくさんいる所へ来るという時点で彼の運命は決まってしまったと言えましょう。
    3週間後、彼は見舞客か

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    2014年10月16日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    ドイツの作家トーマス・マンが1903年に発表した"トニオ・クレーゲル"と1912年に発表した"ヴェニスに死す"を収録。どちらも映画されており、特に"ヴェニスに死す"は有名な作品です。どちらも芸術家を主人公にした作品で、作中ではそれぞれが苦悩する姿が描かれます。"トニオ・クレーゲル"は、作者自身の自伝的内容らしいが芸術に対する苦悩と思春期特有の苦悩が上手く結びつきあって、彼の独白に共感しやすさを持たせていると感じた。"ヴェニスに死す"は同性愛(BL?)的な視点で読んでみるのも一興かと。

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    2014年06月30日
  • 魔の山(上)

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    時々思想部分が難しく読みづらいところもありますが、それでも不思議と話に吸い込まれて夢中になって読めました。
    下巻も楽しみ。

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    2013年11月13日
  • 魔の山 上

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    上巻は3日、下巻は読み終えるのに1ヶ月半もかかってしまった。
    なんと切り口の多い作品。。
    まだ完全には消化しきれていない状態でこの文章を書いている。

    こういった間口の広い作品は、
    フィニッシュをどこに持ってくるかという問題があり、
    巻末の解説でも書かれているように、
    実は作者自身も明確にはそれを決めずに書き始めて
    流れに身を任せたようだが、
    個人的には最終章の決闘のシーンが終わった時点で
    充分な満足感が得られ、
    あとはどう結論をつけても何らかの片はつくだろうと感じたので、
    それだけに、このフィニッシュには少々不満が残った。

    他の人はどう感じたのか気になったので色々とレビューを読んでみたが、

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    2013年06月15日
  • 魔の山 下

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    下巻に入ると俄然興味深くなってきた。フリーメーソン会員であるセテムブリーニとイエズス会士のナフタによる論戦は20世紀初頭の時代精神を感じさせるし、そうした形而上学的議論を吹っ飛ばすペーペルコルン氏のわかり易い器の大きさとその退場の仕方は現代的だ。物語は「人間は善意と愛を失わないために、考えを死に従属させないようにしなくてはならない」という言葉が感動的な「雪」の章の後、緩やかに下山するかの様に死の景色が強くなるが、先の言葉を思い返すことでその景色を越えていくのだ。そして物語の時は止まり、私達の時が動き出す。

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    2013年04月03日
  • 魔の山(上)

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    全2巻。ドイツ文学・教養小説の傑作。主人公のハンス・カストルプは、いとこを見舞う目的で訪れた結核療養施設で三週間の滞在を予定していたがいつの間にかそこが彼の安住の地となる。下の世界とは隔絶された施設での平穏な、しかし生と死が絡み合った濃密な生活の中で彼は時宜を得た教育者によって哲学的な思索を深化させ、自己形成を図る。そして物語のどんでん返しはまさしく晴天の霹靂のごとく訪れた。この小説の世界にはドイツ的気質が横溢しているように思われる。一言でいえば堅苦しく、展開される思想は難解で読みすすめにくい。だがある場面においては、特に数少ないショーシャ夫人と主人公との間に交わされる会話の場面ではあたかも眼

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    2013年02月24日