無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
とてもよかった。
まずは、表題作『トーニオ・クレーガー』から。
繊細で、感傷的で、扱いにくいこの感情を、何と呼ぼう。
しかしその危うい心を、柔らかに緩やかに収束させるラストに、ほっとさせられる。
「つまり、いまそこに座っているあなたはね、なんのことはない、要するに〈普通の人〉だってこと」
トーニオが言われたこの言葉に、ショックを受けない少年少女が果たしているだろうか!
そう、トーニオも迷子なのだ。私と同じように。彼もまた、〈迷子になった普通の人〉なのだ。
そんなトーニオは、ささやかな故郷への旅に出る。そしてそれは、小さな決別と、大きな決意の旅となる。
「危険をものともせず、偉大でデモーニッシュな美の道を行き、〈人間〉を見下す誇り高い冷静な人々にぼくは敬意を払っている――。でも、羨ましいとは思わない。なぜなら、もし物書きを作家にできるものがあるとすれば、それこそが、普通の人であるぼくの愛――人間的なもの、生き生きとして、平凡なものに寄せる愛なのだから」
物語のラストで告げられるトーニオの決意は、まるで静かな祈りのようだ。
『マーリオと魔術師』も、とてもよかった。
悪魔的な人物の気味の悪さとその魅力を、じわじわと見事に描いた佳作。
美しくて悪魔的な人物、というのはそう珍しくない。しかし、醜悪で、くたびれていて、不機嫌そうな悪魔的人物というと、これは難しい。
しかし、この作品はそれをとてもよく描いていて、面白かった。その人物が登場するまでが単調に思えてしまうものの、それからの筆の乗り具合が素晴らしい。雰囲気に飲まれる一品。
Posted by ブクログ
機会があって少し触れたところ、想像以上の面白さに一気にすべて読み切ってしまった。繰り返し読みたいと感じさせる作品で、今後愛読書になりそうである。
「マーリオと魔術師」についてもその巧みな描写力に圧倒され、まるで自分もその場で催眠術にかかっているかのように空気にのまれながら、マーリオの登場と結末に向かうピンと張り詰めた空気に触れさせられたが、何よりも「トーニオ・クレーガー」が秀逸だった。言葉によるソナタと言う表現は的確で、完璧に構築された全体のなかでモチーフが美しく用いられ、心に迫った。貴重な作品である。
この作品から我々が受け取るものは数多くあるだろうが、その中で「若きウェルテルの悩み」と通じるものが挙げられているのは非常に妥当だと感じる。この作品が「若きウェルテルの悩み」であり、また「人間失格」であると私には感じられた。
文学に通ずる人からは批判されてしまうかもしれないが、おそらく当時の若者が「新世紀エヴァンゲリオン」を通して碇シンジから受け取ったものも、これと同種のものであったのだと私は考える。そしてまた、そのような受容の仕方が現代の世代(ハルヒ以降)の事後的なエヴァンゲリオンの受容の中には見られず、単純に碇シンジを軟弱な他者、旧エヴァを難解で未完成の作品ととらえる動きの中に、作品と人間の関係性について考えるべき問題点が潜んでいるように思われてならない。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
ビジネス・実用
ビジネス・実用
小説・文芸
小説・文芸
試し読み
小説・文芸