トーマス・マンのレビュー一覧

  • トーニオ・クレーガー 他一篇

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    序盤の耽美で拗らせた感じの雰囲気がとても好き。文学に関する小説でもあるんだけど、人生に対する深い洞察が詰まってる。
    マーリオの方はシンプルに楽しめたし、一人称小説の模範のように思えた。

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    2026年10月01日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    われわれは深淵を否定したい。人間の品位を保っていたいのだが、われわれがどうじたばたしようと、深淵はわれわれを引寄せるのだ。

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    2026年02月15日
  • 魔の山(下)

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    ネタバレ

    読み終えたあとに言い知れる感動に襲われた、と言いながら、しかし、感想を言う。ハッタリ、衒学も含まれていると思うが、しかし、話題が豊富で、文章も文芸の極致。圧倒的。言語を超えた身体的、フェロモン的強靭、巫術、こっくりさん、決闘にまで話が及ぶ。読み進んでいくと、高原のサナトリウム=療養所という閉ざされた実験場と療養者を配置して、その化学反応で、高原の下の世界、俗世で起こりつつあるヨーロッパ文明の自壊を鮮明に、そして凝縮して描き切る。主人公の一人称に次第に俯瞰映像=筆者の視点が入るところに筆者の諦観が滲む。

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    2026年02月14日
  • 魔の山(上)

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    今のところ、ドイツ流の教養(Bildung、自己形成)小説といった観が強い。概して恋と知的な友情との二つの要素でストーリーは組み立てられている。それにしては、ストーリーにとっては余計に見える医学の話なども出るが、この上巻最後のショーシャとのフランス語での会話のなかで伏線として回収されていく。ショーシャとの対話はカタカナで記されているため、読みにくい。けれども、刺激的であり、感情を強く揺さぶってくる。圧倒的名作と評価されているくらいだから、下巻では、予想、期待を超えて大きなもう一山が待っているのだろう。

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    2026年02月11日
  • 魔の山 下

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    1999年に観た2本の映画「マトリックス」と「ファイトクラブ」が、四半世紀たったいまもfavouriteだ。この2本の映画は、ひたすらに画面が暗い。暗い画面の中に、ひとりの憂鬱な男。クソみたいな人生。しかし、男はやがて気付く。こんな世界は偽物だと。ザックの声と、ブラック・フランシスの声が、目を覚ませと、魂はどこにあるのかと、呼びかける。こんなにも気持ちを昂らせてくれる映画はそれまで観たことが無かった

    私がトーマス・マンの「魔の山」を読んだのは、その3年後くらい、2002年の頃だった。「魔の山」のラストシーンで、私は同じような、いやそれ以上の気持ちの昂りを感じた

    「魔の山」のラストシーンでは、「社会や人生を変えてしまうような歴史の転換点においては、その転換点の直前であればあるほど、遠い昔の出来事であるかのように思われる」と語られ、ハンス・カストルプは7年過ごしたサナトリウムを離れ、第一次世界大戦へと向かって歩き出す

    それの何が昂るのかというと、別に戦争に行きたいわけではない。抜け出せない泥沼の中で長い間苦しんだ後に、主人公は魂としか呼びようのないものを手に入れて、さらに苦しい絶望に向かって歩き出す。その姿を描くトーマス・マンの文章が、私の背中を押してくれているような気がして、生きていく勇気が湧いたのだ

    魂を掴んで歩き出した後、一度だけ振り返ってみると、その転換点直前の出来事は遥かに遠く感じられ、その転換点というのは、2本の映画においては21世紀のことだったし、「魔の山」においては第一次世界大戦だったということだと思う

    トーマス・マン。なんてイカれたチョビ髭オヤジなんだ!って思った

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    2025年11月16日
  • 魔の山(下)

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    上下合わせて☆4.8くらい。

    長いけど、読みたいと思わせてくれる小説だった。

    一人でスキーをする場面が、印象的だった。自然との闘いではなく、思索的な旅だったのがよかった。

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    2025年10月20日
  • 魔の山(上)

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    高校生のとき挫折したけど、何回も読み返したい本になった。

    ドストエフスキーのような思想が積み込まれた本だけど、彼と違うのは、この本の通奏低音がカオスではなく、教養小説的な自己刷新であること。一つの大きな出来事がきっかけになるのではない。サナトリウムという非生活の中での、現実的な生活を通して、人との関わりを学んでいく。そうした、ナイーブな存在から大人になる過程を描いている。

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    2025年10月17日
  • トーニオ・クレーガー

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    「人生の過ごし方」を深く考えさせてくれる本だと感じました。
    主人公は芸術家として人と違う存在でありながらも、そのことで人から一目置かれると自らが思う姿が描かれています。
    また、嫉妬の場面や、人に冷たくしてしまう場面などを読みながら、「自分にも似たような動きがある」と感じました。結局、人は同じような感情や行動を繰り返しているのだと気づかされます。その描写に共感。
    この本を通じて、自分を少し上から見つめるような視点を持てるのではないかと思います。

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    2025年08月14日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    情景描写がすごく美しい。同じ芸術家をテーマにした2作だけどなんだか違う。自分と自分の外側と。芸術家も所詮人間。いい意味で。

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    2025年08月03日
  • トーニオ・クレーガー 他一篇

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    おすすめされた?本
    ドイツ文学は硬いイメージがあったけど、さくさく読めた。

    この世界に馴染めない 
    それでもトーニオは人生を愛し続ける 
    あなたもそんな気持ちを抱いたことがあったのですか?

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    2025年07月23日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    ネタバレ

    ショタコンの教科書だ…たまげたなぁ

    大抵の小説が情景描写から入るところが、この作者は異次元の存在だから大抵美少年の描写から入る。まあドイツは美少年多いからね、しかたないね。
    祖母が「いやらしい本だから読むな」というのでいついやらしくなるのかとページを捲るうちに読破してしまった。
    それが、当たり前だけど素晴らしい。美少年が出てきて、虚しい片想いをしてノータッチで終わる。萩尾望都とか好きな人は好きじゃろ?こういうの。美しい思い出の片想いなんだなぁ。美少年は偉大なんだ。

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    2025年01月03日
  • 魔の山 上

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    この小説は私にとって非常に大切な作品です。私の「十大小説」を選ぶとすれば『魔の山』は確実にその中に入ることでしょう。それほどこの作品は力強く、強烈なインパクトがあります。とにかくスケールの大きな作品です!

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    2024年08月22日
  • 魔の山 上

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    100分で名著で現在説明されている。昔読んだような気がするが定かではない。結核患者の従兄に会いに病院に行ったところ自分も具合が悪くなり、そこに逗留するようになったところまでが上巻である。5章で病院の人々と自分がかかわっていくことが説明され、ここが上巻の半分ぐらいを占める。

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    2024年05月27日
  • 魔の山(下)

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    主人公ハンス・カストルプの高地国際療養所での周囲との交流と成長を描いた小説、
    とあらすじはシンプルだが登場人物たちの議論や言動の濃密さとその影響を受けてハンスが精神的に変化していく様は圧倒的な描写で流石にビルドゥングス・ロマンの大傑作。忘れられない読書体験。人間関係のさまざまな側面、自然、病、科学、政治・経済、宗教、哲学、心霊、文化、遊び…とありとあらゆるテーマが飛び交い、延々と言葉が積み重ねられていく描写は人によっては「退屈」と感じられるのだろうし、長い『魔の山』登山を楽しんでいた私自身でも「一体何を読んでるんだ?」と混乱してくる場面もあったが、多感な青年の成長とは理路整然や首尾一貫よりは混沌としながら進んでいくものだと思うので、そうしたことを読書体験全体としても感じられた。読んでよかった!

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    2024年01月19日
  • 魔の山 下

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    長期滞在が続くハンス・カストルプは、ショーシャ夫人との出来事のあとも、様々な出会いと別れを重ねていく。

    まぁ、本を手に取った時点でわかっている話(700ページ近い厚さ)ではあるが、下巻もとにかく長い(汗)。ストーリーそのものだけにしぼればもっと短くできそうなものだが、音楽(レコード)やオカルト(こっくりさん的な降霊術)などにハマる長々とした描写も含め、ダラダラと論争や語りが続くところに意味のある小説なんだと思う。

    上巻以上に重要な出会いと別れが続き、単調であるはずのサナトリウム生活には話題が尽きない。多様な登場人物との触れ合いがこの小説の魅力だ。病いと死に隣り合わせのため、面白おかしいというわけにはいかないが、下界とは一線を画する環境であるゆえの人物描写が独特の味わいをみせている。

    本書最大の山場はおそらく、第六章にある節「雪」だろう。スキーに出た雪山で吹雪におそわれたハンス・カストルプは、幻想的なビジョンを夢で見たあと、対照的な思想を持つセテムブリーニとナフタの論争を超越し、理性に代わって生と死の対立を超える「善意と愛」に目覚めていく。

    後半でハンス・カストルプに大きな影響を及ぼすペーペルコルンが物語に活力を与えている。三角関係のようになってしまうショーシャ夫人との顛末も面白く、素直に楽しめた。

    作中で「人生の厄介息子」と称されるハンス・カストルプの生き様は、現代でいえばニートに類似するものではあるまいか。訪問者が時間の感覚を失って居座ってしまう、この「魔法の山」での生活のなかで、生と死、社会と人生における広範なテーマを模索し学び、長いモラトリアム期間を過ごしたあと、現実に戻っていくというような、青年期におけるイニシエーション的な奥行きがあると思った。

    映像的かつ詩的なラストの描写には大きな感動を覚えた。ああ、そうなるのか、と。
    非情に深い感慨を受けた本作。一読では消化不良の部分もあるため、ぜひともいずれ新潮文庫版も読んでみたい。

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    2023年08月07日
  • 魔の山 上

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    1924年刊。スイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとなった、青年ハンス・カストルプの精神の軌跡。

    20世紀三大小説家のひとり、との声もあるトーマス・マンの代表作。年配の某文学系YouTuberの方が、『魔の山』はトーマス・マンの中では亜流で『ブッデンブローク家』こそ正統派だ、とおっしゃっていて、なるほどそうなのか~と思いつつも、やはり有名なので先にこちらを選んだ。何よりも、「今読みたい」と直感が働き、これがドンピシャだった。

    というのは、本作で主人公の青年ハンスが、過去に想いを寄せていたプリビスラウとの関係を引き合いに出しながら、ロシアの婦人への恋心をひそやかにしつつ、あまりにも控えめな行動力で陰キャ的なやり取りをする描写に、たまらなく共感を覚えるタイミングだったからだ(汗)。
    P250 「現実的に、いまのひそかな関係以上の交渉は持てないという確信、二人のあいだには越えられない深淵が横たわっていて、彼女と一しょでは彼の承認しているどんな批評にも及第できないという確信」
    絶対に越えられない壁がある相手に恋をしてしまったら、こうするしかないだろうな、という行動をハンスがとるので、恋の行方が気になり、それが引力となって読み続けられた。

    したがって、自分は本作の上巻をほぼ恋愛小説として読んだのだが、もちろん下のレビューや各所で言われているように、本作は20世紀初頭の思想や医学などについてつらつらと書き綴られた教養小説というやつで、読んでいて退屈な部分は確かにある。あまりにも変化のないサナトリウムの生活は、実は死と隣り合わせで、いやでも思索的にならざるをえない環境でもあり、こういった議論や語りが続くような小説には格好の舞台といえる。

    しかし、数多い個性的な登場人物と人間関係の描写はなかなかに面白く、高原の景色も趣に富む。物語というよりも、こういった光景を楽しむ小説として考えていると、いつしかハンスと共に自分自身もその場にいるような不思議な感覚すらわいてきた。章の間にいくつもの節で区切られているためコツコツ読むには向いていて、この小説に取り組んでいる数日間ずっと手元のそばに置いていたので、サナトリウムの世界にどっぷりつかっていた感じが強い。その他、時間感覚についての考察は興味深い。

    上巻ラスト付近の急展開は楽しくて仕方なかった。ハンス君やらかしすぎ(笑)。つくづく自分には合う小説だなぁと。下巻はもっと長いようだけど、全然イケそう。

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    2023年07月11日
  • 魔の山(下)

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    最後に至るまで思弁的で、冗長で、密度が高く、読むのが辛かった。

    しかし、読み終わって思索してみると、ハンス・カストルプの凡俗さに人間存在の危うさが垣間見れる力作であった。

    女性の描かれ方が考えさせられる。観念、理性が男性に割り振られ、情緒、感情が女性に割り振られている。

    ショーシャが連れ戻ってきたピーター・ベーペルコンの存在感が印象的だった。

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    2023年07月09日
  • トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す

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    ネタバレ

    コロナ騒動でカミュ「ペスト」を読み、さて次はと本棚から取り出した。
    「ペスト」よりもどちらかというと「ヴェニスに死す」や「ゾンビ」や「ノスフェラトゥ」など頽廃に惹かれるタチなのだ。
    そもそもヴィスコンティ「ヴェニスに死す」は生涯ベストに入る。
    (ちなみにヴィスコンティはカミュ「異邦人」も監督している。最近の読書をこっそり架橋していたのだ。さらにドストエフスキー「白夜」も入れて文豪映画化シリーズに入れておきたい)
    それで読んでみて。

    「ヴェニスに死す」
    びっくりするくらい原作に忠実な映像化だったのだ。
    というか小説を読むと映像が鮮烈に甦る。
    違うのはアシェンバハの職業くらいか。
    思うだに奇蹟の采配と執念が完成させた映画なのだろう。
    ところで小説は映画と違い人物の内面に比重を置くが、本作の語り手は結構アシェンバハから距離を置いている。
    とはいえ映像と重ねることでより立体的に迫ってきて、今回小説を読んで一番の収穫だったのは、
    アシェンバハがはっきりと「疫病との共犯意識」を持っていたと書かれていることだ。「理性を越えた甘美な希望」とも。
    老境迫る壮年が「あちらがわ」に行くきっかけはタジュウだが、その背中を押したのはコレラだったのだ。

    「トニオ・クレーゲル」
    は事前知識を特に入れず、流れで読んでみた。
    が、まったく他人事とは思えないし、既視感たっぷり。
    まずは絵柄。小説にこういうのはなんだが、はっきり萩尾望都先生の絵で浮かんだ。
    そして既視感はヘッセ「車輪の下」からも。単純に似ているのだ。
    少し離れるが宮沢賢治「銀河鉄道の夜」のジョバンニのカムパネルラに対する憧れも連想(ここまで行くと脱線だがのび太と出木杉をジョバンニとカムパネルラに重ねることもできそうだ)。
    極私的には宝塚「激情ーホセとカルメン」(1999年の姿月あさと、花總まりを中心とした宙組による初演時)も連想。
    要は生真面目な人物が劇的な恋に死ぬ話に、一言では言い尽くせない感情を抱いてしまう。
    表面的には「激情」に比されるのは「ヴェニスに死す」なんだろう。「あちら側へ行く」話だから。
    そして「トニオ・クレーゲル」は「芸術家」ー「市民」という対立軸を作った上で、「市民的気質を保つ芸術家」に落ち着こうという結論だから、ちょい違う。宮崎駿ふうに言えば「生きねば」に落ち着くのだ。
    が、もはやここまで来たら死ぬも生きるも恋も鈍感もどちらも同じでどちらでもよいような地点に行きつくのではないか。
    おそらくこの「遠くへきてしまった感じ」は萩尾望都先生も皆川博子先生も同意してくれるのではないか。
    終盤に「あの男女」が再登場するが、「ただの似たカップル」という説もあるらしい、が、もう当人でも空似でもどうでもいいところに、トニオは来ているのだと思う。
    選民思想インテリ向けに書かれている部分は確かにあるだろう。
    が、決して凡人にも無縁ではない、というか思春期を一度でも体験した者には全然他人事ではないことが、書かれている。
    構成も描写も多少退屈で迂遠なところはあるが、なんでもソナタ形式なのだとか。
    この堅牢な構成には、再度注目しつつ読み返してみたいところ。
    三島由紀夫や北杜夫など連想の幅も広がった。いずれ「魔の山」にも挑戦すべきだ。

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    2020年05月14日
  • 魔の山 下

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    この上下の大長編を読み終えて無言で本を閉じることはありえるだろうか。否、ありえない。私たちはニヒリズムという平行線から逃れ、ベルクホーフという山あいで生み出した綜合的な思想の萌芽を見逃さずにはいられない。退廃主義、退嬰的、ニヒリズム、ペシミズム、デカダンス、などありとあらゆる悲観主義を表す言葉は物語上では一定の水準に収まった一個人の叫びにすらならない悲壮の体現者の特徴にしかならず、どのような感受性も生まれない。それに対してトーマスマンはセテムブリーニの啓蒙主義とナフタの原初主義かつ神秘主義の思想がぶつかり合わせる弁償的論理でハンス・カストルプに新たな見地を植えつけた。その後ペーペルコルンの身に起きたことも含め、全てがバランスの上で螺旋状に向上する物語であったといえよう。それはある意味、たった一つの世界の定理を求める問いであるように思えた。

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    2020年02月11日
  • 魔の山(下)

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    くっそムカつくしイライラする展開ばっかりなんだけど文学作品として最高峰のレベルに位置しているのはわかる。不条理をありありと描いた小説。

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    2018年11月06日