ボリス・ヴィアンのレビュー一覧
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<裕福な青年コランは友人のパーティーで出会った美しい女性クロエと恋におちる。
デュークエリントンの曲と同じ名前の彼女と送る幸せな結婚生活。しかし彼女には・・・>
カズオイシグロの作品は全てハヤカワep文庫より出版~。
ということですっかりハヤカワep文庫支持者になりました。
そしてそれではハヤカワep文庫の他の著者のも読んでみようと買ってみた一冊。
あとがきの書評が小川洋子というわけで。
あらすじはいたって普通というか定番。
しかし「スケートでぶつかり合った人間達の死体は係りの人間が脇へ掃いていった」とか、
「一般家庭の蛇口からうなぎが出てきたのでそれを料理した」等、
奇妙さ、不思議さ、アイロニーがこめられた細部が、現実を一部離れたような世界を創造している。
そして最後のストーリー展開。
その結末は、世界観とあわせ、涙というより悲痛な笑顔を読者に抱かせるものでしょう。 -
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全く同じ内容であるという「うたかたの日々」(ハヤカワepi文庫)は翻訳文に抵抗があって、全く読み進めることが出来なかった。
しかしこの曾根元吉訳の「日々の泡」(新潮文庫)は問題なく読むことができた。日本人作家でも合う合わないがあるから、それの違いかな?
肺に睡蓮の花が咲く奇病に冒されたクロエと、彼女に恋をしたコランの物語なのだけど、シックやアリーズ、そしてニコラと、彼らを取り巻く人々までもが不幸になっていく。
救いのない哀しい物語。
もう少し、彼らに救いがあってもいいのではないだろうか?
シックは致し方ないにしても…。
カクテル・ピアノや素敵なギミックがあちこちに。
部屋や街の様子、物事の描写などいろいろな部分で、村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のハードボイルド・ワンダーランド部分を想起してしまった。
似てるというわけではないのに。
黒ひげの灰色ハツカネズミが松葉杖をついて歩いてる姿など、映像として見たいと思ってしまった。 -
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初めてのシュールレアリズム文学でした。
最初は、コミカルな印象を受けて、本当に面白いのかと思いながら読み進めました。
中盤、斜陽文学の感じが出てきたので、谷崎の細雪に近いものを感じました。
そして、終盤の急展開がまさに悲劇でしたね。読書会では意見が別れましたが、私はラストがとても強く印象に残りました。
シュールレアリズム文学ってどうなのかなと思ってましたが、不思議な現象の描写が、逆に心理描写を際立たせている感じを受けました。
クロエに関しては、悲劇のヒロインなのか、さげまんなのか考えるのはとても面白いと思います。
そして、花が何を象徴してるのかという事も。
カフカの変身の様に、何かの象徴何でしょうが、それは何かと考えるのは面白いですね。 -
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数年前に、この小説を題材に書かれた岡崎京子さんの漫画と、この小説のオマージュ映画『クロエ』を観ていて、両方とも不思議なお話だと思った記憶があります。
特に漫画はこの物語をそのまま漫画化したもので、それが岡崎京子さんの独特のタッチとあいまって、とても印象に残りました。
小説は…たぶん、受け付けない人は全然受け付けないタイプの作品だと感じた。
軸は恋愛小説なのだけど、SFであり、ファンタジーであり、見方によるとサスペンスでもあり。
とにかく不思議。日本人が書く小説ではないなってすごく感じた。(ボリス・ヴィアンはフランスの作家)
ありえない設定も出てくるし、脇役はありえないくらいあっさり死んだり殺されたりするし(それなのに殺した側は捕まらない)、その辺りは完全にファンタジー。
空間がゆがむSF。
主人公コランが愛する妻・クロエが抱える病はサスペンス。(肺に睡蓮が咲くという奇病)
物語の冒頭では幸せだった人々が、物語が進むにつれて破滅に向かっていく。
悲しいまでに美しく退廃的なのに、文章のタッチが軽くて、奇妙なギャップがおもしろい。
悲しいしつらい物語だけど、日本特有の湿った情緒みたいなものがないせいなのか、それともこのヴィアンという人の書き方の影響なのか、終始乾いた感触で読みきった。
フランス映画は独特だとずっと思ってきたけれど、フランス小説も同じくなのかも。 -
Posted by ブクログ
40年前、四人囃子やPRISMのギタリストだった森園さんの♪いつもスモールシガレット 指にはさんで ボリス・ビアンなんか読んでた♪という歌を聴いて、ボリス・ビアンの名前を知り、うたかたの日々を読んだ。
マライヤの清水靖晃さんのアルバム「北京の秋」も持っている。
他人様には何のことやら判らないことだろうけれど、兎も角、本屋で新装丁の本書を見つけ、購入。そうでもなければ読まなかった本である。
帯に「いうまでもないことだが、この作品には『中国』も『秋』も出てこない」とあり、チョッと驚く。
いつまでも通勤のバスの乗れないアマディアス・ジュジュ、殺人の後に隠者になろうとするクロード・レオン、彼に恩寵を与えるプチジャン神父、恋人同士のアンヌとロシェル、オマケのアンジェル、模型飛行機に夢中の医師のマンジュマンシュ。
それぞれの出鱈目な話が綴られる長い引用部。それぞれ関係のない話と思ったが、砂漠のエクゾポダミーに集結する。
考古学者アタナゴールやホテルのレストランシェフのピッポを交え、鉄道敷設の物語が語られる。
正直、引用部のことを忘れて誰が誰だったっけ状態になるが、どうでもいいじゃないかという気分で読み進める。
(P.108から引用)「わざとそうしているんだ」マンジュマンシュが答えた。「クロエが死んでしまって以来さ」
初めからコワレタ物語。そして長い長い話の最後は壊れきって無くなる訳でもない。
うたかたの日々のような幸福感は皆無。アンヌとロシェルの恋も只々、消耗しあうだけの即物的なもの。だから喪失感も無い。
詰まらないかというとそんなこともなくて、読み続けたけど、何とも言い難いとしか言いようがない。 -
Posted by ブクログ
昔、小学生の頃か、友達とスイカを一緒に食べているとき、種を飲み込んだら胃の中で芽が吹いて最悪死ぬこともあるんだぜ、という忠告を貰ったことを思い出した。
身体の中でスイカ発芽だとどうしようもない間抜けだが、これが睡蓮の花咲くとなると途端に悲劇的な運命の感が出てくる。
なぜ睡蓮の花が肺に咲くのか一切説明が無いように、この小説はただ作者のイメージの跳躍に任せ読者もそれを味わうことに尽きる。
筆者がトランペット奏者であるのも関係しているのだろうか。作中物語の展開のイメージに合わせて主人公とヒロインの住む家も変形していく様は、ポーを中心としたアメリカ的怪奇趣味をむしろフォローしているかのように思える。
ちなみに個人的には、主人公・コランとヒロイン・クロエの悲劇よりも、脇役カップルであるシックとアリーズの悲劇の方が実はより現実的で、それ故胸に来るものがある。 -
Posted by ブクログ
内容・構成は凡庸。作品の最初を読んだところで、最後まで見通せてしまうし、特に面白いシーンもない。ボリス・ヴィアンの傑作『うたかたの日々』に比べると見劣りする。ただボリス・ヴィアンの「白人が不快になるような本を書いてやろう」という強い思いが全体に強く出ていてその怨念は面白い。『うたかたの日々』もそうだったけど、ボリスヴィアンは、劇として小説を書くことが非常に上手い。いかに主人公が白人を憎んでいるか、ということを自らの家を燃やしてしまう、というシーンで象徴的に描いているところは、さすが、という感じ。
白い肌を持った黒人、というテーマはたしかデュボイスもなにか書いていたけど、面白いと思った。ネラ=ラーセンの『白い黒人』とか読んでみようかな。