ボリス・ヴィアンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ鈴木創士訳がバッチリ決まってます。終盤の人殺す時の仕草とか、感情の生臭さが素晴らしいです。戴冠せるアナーキストを読んだときにも感じましたが、文才、というよりも詩の美しさに似てるな、と思います。音楽やってる人って激情家が多いんですか。俺もなれますか。んでお気に入りは、兄弟の復讐のことで同じ黒人の兄に諭される場面があって、そこの会話が、切ないんだけども、かっこええです。なぁ兄さん、弟の仇をとってやろうか?いや、お前には黒人らしいところがないから普通の暮らしが歩めるだろう。神はお前を救ってくれるんだよ。神が俺らのことに構うもんか。兄貴は本当に俺のことを愛してくれた。勇気が湧いてきて、なんでもできる気がした。てな会話が書いてあります。兄弟愛みたいのんは日本だとあんまり馴染みが無い気がするんで、というか俺が見たことないんでニュアンスが伝わりづらいかもだけど、海外の映画を観てるときの、『俺ら死ぬときゃ一緒だぜ』感がなんか新鮮というか、心熱くなるし、愛おしく感じられるじゃないですか。そんなホモさに近い感じですか。あと、表紙がめちゃくちゃ可愛い〜♡ティムバートン作品のキャラクターみたいで好きな絵だ!
-
Posted by ブクログ
ネタバレまず、描写が綺麗、美しい。脳内でその綺麗な映像が細かく、鮮明に思い浮かべられるし、その映像が本当に綺麗。文章力に、脱帽です。ところどころの表現はすこし非現実的で、けど内容はどこか現実味を帯びているような表現だなと思いました。
アリーズとシックの結末、またハツカネズミのこと、残されたコランのこと。すべてなにをとっても切なくて、もう、本当にすてきな小説でした。
ニコラとイジスの話が少なかったのが少し残念かな。でもあの二人はこの後も幸せに暮らしていくんだろうと思うからこそ書かなかったんろうと思いこむ!目に見えてわかるぐらいの展開に持ち込んで、あえてかかない。コランやシックたちのことを読んでいればわかるけど、きっと、幸せルンルンランランっていう小説が書きたかったんじゃないからですよね。
とてもすてきな小説でした。ありがとうございました。 -
Posted by ブクログ
幻想と皮肉と遊びと悲壮の入り交じった、美しいメルヘンです。根底に暗澹とした「不条理」が見え隠れしているところなんかは、いかにも当時のフランスらしい感じもしますが、簡単にフランス文学と一括りにはできないほど力強い作品だと思います。耽美で独特な描写は、このボリス・ヴィアンでしか見たことがありません。
ストーリーだけ追ってしまうとなんだかいただけないのだけど、その見せ方は本当に秀逸です。ストーリーのトーンと同調して、描写の色合いも変化していくところはとても見事でした。おおまかに言うと、前半はライトでファンタジック、透き通った色水のようなのですが、物語が進むにつれてそこに濃紺のインクがぽたりぽたりと滴り、暗く滲んでいくような感じです。
普通の青春群像劇として読むと、現実と空想の境目にあるこの世界観を味わえないどころか、嫌気が差してしまうんじゃないでしょうか。通勤途中に途切れ途切れ、ではなく、休日の晴れた昼下がりに紅茶でも淹れて読み始めるのがいいと思います。
他の作品も読んでみたいなあ。 -
Posted by ブクログ
ものすごく独特の世界。
1P目からにきびが自発的に引っ込んだりして、もしや誤訳?と思いながら読み進めると、どうやらそういう世界らしい。
こうあるべきが具現化されている、まるで現代アートを読んでいるような感覚になる。これは独特だなぁ。
描写は細かくなく、現実感を欠いている。
結婚するまでは薔薇色ふわふわ。光をひねっちゃうぐらい。
ハネムーンからが暗い。お金を数えだすところからは闇。文字通り光も届かない。
幕切れはいささか急。短い描写だけど、それでも悲しい。
シック、アリーズのサイドストーリーは、これだけ面白ければ大歓迎。
ここでは誰も幸せになれないんだね。
ピアノカクテル、花で治療など、超現実的なアイディアも楽しい。
本作、新潮の「日々の泡」と同内容。 -
Posted by ブクログ
悲劇的な、あまりに悲劇的な恋愛小説。
これ以上に悲痛な作品を、ぼくは未だ読んだことがない。
"二つのものがあるだけだ。それは、きれいな女の子との恋愛だ。それとニューオーリンズかデューク・エリントンの音楽だ。その他のものはみんな消えちまえばいい。なぜって、その他のものはみんな醜いからだ。"
そんな序文に始まる物語の中で、登場人物はその醜いもの達に踊らされ、右往左往するばかり。醜くない二つのものを守ろうと、身を削ったところで、レコードは擦り切れ、金は尽き、血は流れ、人は死ぬ。
あらゆる恋愛感情は、突き詰めると性欲と依存心と虚栄心に因数分解される。未だ反証を見ないそんな持論を持つ人間にさえ、この作品は悲哀を抱かせる。 -
Posted by ブクログ
再読。もう何度読み返してるかわからない大好きな小説
というか世界でいちばんこの本がすき
あまりにも道化で可笑しいことばかりがあふれるのにどうしてこう悲痛なのかしら
本当に悲しいことは真面目なもののなかよりも、ふざけたものの中にあるのだと思う
幸せな時は全然長続きしないなぁ
そんなことないっていうひと達はとても多いけど、人間関係の脆さと同じくらい壊れやすいものだと思う、私は。
この小説だけが彼の作品の中で飛びぬけて評価されてるのも皆そのことに気付いてるのだと
だからこそ、コランとクロエが二人で過ごした時や、シック、アリーズ、ニコラ、イジス達との楽しい時がよりいっそう、きれいにみえる
酷い小説。残酷で夢も希望も全然ないけど、大好き。
「ぼくは絶望してるが、同時にすごく幸福だよ。この時点でどうでも何か欲しいものがあるってことはすごく気分のいいことだよ」
「彼はクロエを膝にのせた。ふたたび、ふたりはすっかり幸福な感じになっていた。
『ぼくはあんたのどこもかしこも全体を愛してるんだって言ったじゃない』
『それなら、もっとこまかく、どこもかしこも愛してよ」とクロエは、蛇の子みたいに甘ったれて、コランの腕の中に身をすりよせながら言った。」
「人はそう変わるもんじゃない。変わるのは物事だよ」
「コランはもう何もきこえなかった。彼は過去に生きていた。時どき微笑しては何もかも思い出しているのだった。」