松井信彦のレビュー一覧
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面白かったー。
こういう科学エッセイ大好き。
興味深い話はたくさんあったが、一番驚いたのは天然核分裂反応炉のオクロの話。
ウランと水と藍藻類だけで稼働していたというのだ。
びっくり。
そんなこと初めて聞いた。
藻類が過剰な酸素を作り、水が強い酸性になり、ウラン235を溶け込ませ、藻類が水をろ過してウランを特定の場所に集中させ、臨界量に達した。
ただ、それだけではウランが核分裂を起こしても連鎖反応は起こさない。
水があることで中性子の速度が落ち、連鎖反応が起きたのだ。
そのため、核分裂が発生すると高熱になり、水が蒸発し核分裂がストップ、冷えて水がたまると再度核分裂が発生、とのサイクルが発生してい -
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私はホログラフィー、多宇宙信じます。
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・ホーキングは「果てがないのが、宇宙の始まりの条件なのだ!」という。ここでの果てがないとは宇宙は「特異点」として始まったのではなく、虚数の時間で始まるなら物理法則にしたがってなめらかに始まったということである。
・相対性理論に従うならば、宇宙は特異点から始まらなければならないという特異点定理を証明したが、量子重力論、つまり一般相対性理論に基づけば、反対に特異点なしで宇宙は誕生するのだという理論である。
・宇宙は有限)重要なポイントは全体としての空間の大きさではなく、さまざまな領域ないしポケット宇宙についてその多様性の幅を私たちが格段に狭めたという事 -
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アインシュタインがその存在を予測してから100年、2015年秋米国ルイジアナ州とワシントン州に置かれた検知器LIGO (laser Interferometer Gravitational-wave Observation)で、ついに重力波が人類によって捉えられた。長さ四kmのアームの中で、陽子の直径の一万分の一のレベルの時空の変化を捉えたものだ。観測実験技術として想像を超えるほどの高度なノイズ除去技術が必要なことが何も言われなくてもわかる。ノーベル賞がほぼ確実視される偉業であり、宇宙の観測に新しい手段を加えることによって、現在の宇宙論が抱えるダークマターやダークエネルギーという謎に関して新し
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被曝治療の専門家による著作。放射線の発見の歴史から、ガンとの関係、遺伝性疾患、医療における放射線治療、原発と廃棄物(他の発電方法との比較を含む)、といった複雑な問題を説明している。
タイトルどおり冷静に記述しており参考になる。ただし、原子力発電の廃棄物処理方法についてはスッキリしない。
福島原発から排出された放射線物質を海に捨てることは「ひどいこと」としながらも、大量の海水による希釈と競争(生き物がセシウムをカリウムと似たものと認識すること)によりセシウムが海洋生物に与える影響は小さい、という説明がされている。理性ではわかるのだが、感情としては納得しにくい。海にいつも行く人間と行かない人間で -
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原発、放射線の是非について最低限、踏まえなければならない事実がたんたんと述べられている。しかし、これを読み込んで議論できる人はどれだけこの日本にいるのだろう。
私は感情的に原発はダメ、理性的には仕方なかろう、という立場だったが、本書によって、大幅に立ち位置を変えざるを得なかった。まさしく、「冷静」になったわけだ。
分かったことは、
・エネルギーの問題を極端に論じてはいけない。
・医療と被曝のことは意識的になった方がよい。
・喫煙は放射線被曝が絡む。
・放射能という現象にあまりに神経過敏になる必要はない。
・放射線殺菌技術の吟味。
・核テロは実害よりも心理的パニックが怖い。
・被爆の遺伝性は -
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この本は、ヒッグス粒子の理論を提唱し、2013年にノーベル物理学賞を受賞したピーター・ヒッグスの人生とヒッグスボゾンの誕生までを描いたノンフィクション。
この本では、1964年にヒッグスが発表した論文を起点に、彼がどのようにして「万物の質量の起源」となるヒッグス機構を提唱したのか、そしてその理論がどのようにして実験的に証明されていったのかが、科学的背景と人間ドラマの両面から描かれる。
特に、ヒッグスが非常に控えめで目立つことを好まない人物でありながら、巨大な国際プロジェクトに巻き込まれていく過程が印象的。
素粒子の世界は、わかるようでわからない不思議な世界。その世界の真理を探究する研究者の -
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「SNSでは自分の政治信条にあうフォロワーばかり揃えて対立意見が見えなくなるエコーチェンバーが起きる」とされている。これへの処方箋として、よく「対立意見もよく聞いて対話をすれば、自身の意見も適切に軌道修正できて妥協点が見つかり、建設的なやり取りができる」「相手の意見に触れることが大事」などと言われる。本書はこの解決策が逆効果であることを、大規模な実験を通じて浮き彫りにしている。アメリカ共和党と民主党のそれぞれの支持者による対立が舞台になっていて、第1次トランプ政権の頃の話が載っている。第2次トランプ政権の衝撃が続く今読んでも納得感はとてもある。
課題の提示と実証は的確かつ興味深いのだけれど、最 -
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ネタバレクリス・ベイルの『ソーシャルメディア・プリズム』は、現代のソーシャルメディアが社会の分極化を加速させるメカニズムを実証的に解明し、それに対する解決策を模索する一冊である。本書は、従来の「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」という単純な説明を超え、ソーシャルメディアがどのように個人のアイデンティティを歪め、社会の分断を助長するかを明らかにする。ベイルは、ソーシャルメディアが単に人々を偏った情報空間に閉じ込めるのではなく、むしろ「プリズム」のように人々の社会的アイデンティティを変容させ、極端な意見を促進する場となると主張する。一般的に、ソーシャルメディアは同じ意見を持つ者同士を囲い込み、異な
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ネタバレ人工知能(AI)の進化は、私たちの社会に計り知れない影響を与えている。すでに医療、金融、交通、エンターテインメントなど、あらゆる分野で活用され、その可能性はさらに広がり続けている。しかし、AIが高度化し、人間の知能を超える汎用人工知能(AGI)が誕生したとき、私たちはその力をどのように制御し、活用すればよいのだろうか。この問いに対し、スチュアート・ラッセルは『AI新生』において、AIがもたらす危険性に単純に警鐘を鳴らすのではなく、それらを的確に見極め、人類の利益となる形で運用するための道筋を示している。本書の特徴は、AIのリスクを過度に誇張するのではなく、どのような課題が生じる可能性があり、
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視点を逆転した意表をつくタイトル。著者はハーバード大学で研究所長や各種の委員長をつとめており、科学的データに基づく推論を展開し、眉唾物ではないノンフィクションとして纏めている。
2017年10月に太陽系外から飛来し、その奇妙な振る舞いからオウムアムア(ハワイ語で斥候)と命名された天体?(飛行体?)の謎に迫っている。8時間周期で自転し長短比が10倍という前例なき天体?であり、太陽からの重力で取り得る軌道から外れ、彗星に見られるような噴出物もなく、謎の加速をして飛び去った。その異様な軌道データからは天体か飛行体(知的生命が関わる)を判別できず、近くに寄って観測する手段もない中、太陽系外へと逃してし -
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身の回りにあるコンピュータの基本構造を設計した科学者ノイマン。現代稼働しているコンピュータはノイマン型コンピュータの枠をまだ出ていない。ノイマンが天才であることは知っているので、どれくらい天才なのかを知るために読んだ。ノイマンの業績としてはコンピュータだけではない。核兵器開発やゲーム理論、人工生命などに及ぶ。現代生活の基盤や危機の原因などは現代まで影響を及ぼしている。ノイマンは未来が見えていたのだろうか。きっと見えていたと思うが、そういう人ほど短命であるのが残念だ。少し難しい本であるが、科学好きでノイマンについて知りたいのなら読んだ方がいい。
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ネタバレ重力波とは何か、その謎を追う科学者たちのノンフィクションストーリー…というよりは、身内争いや政治圧力や対立などを克明に描いた告白本に近いかな。
ブラックホールは光すら逃れられない強力な重力を持っており「どんな直接的観測結果も得られない」はずだった。
だからこそ重力が生み出す空間の歪みが重力波となり、歌として聴こえるかもしれないという理論は素晴らしく魅力的になる。ブラックホールの直接的観測が可能になるからだ。
重力波の骨子はこんな感じだけど、まぁ9割くらいは人と人の諍いに割かれている。別に悪いというわけじゃなく、「科学者」として生きていくなら「科学」だけをしてるわけにはいかないぜ、って当たり -
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2017年9月に突如現れて太陽を周回し加速して飛び去った謎の物体をハワイの言葉で「オウムアムア」と名付けられた。著者はハーバード大学の天文学課長でこの本に書かれている事実は紛れもないもの。そこから導き出した可能性が、恒星間航行物体ではないか、というものだ。人類ではない未知の太陽系外の知的生物が作った何らかの飛行体。
もしかしたらそれは宇宙のブイのようなもので、太陽系がたまたまそのブイに接近してしまったという可能性も。
これが慧星や小惑星だとしたら物理的に軌道が説明できない不思議な動きをしている。さらに表面は輝いており、8時間で自転する円盤形だと推察される。
本書ではこの仮説から、宇宙に知的な生 -
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ネタバレ2017年に観測史上初めて太陽系外から飛来した天体としてその通過が観測されたオウムアムア(ハワイ語で「斥候」の意)。通過したわずか11日間という期間で観測されたその特異な特徴(①形状が既知の天体と比べて異様に縦長か扁平であること、②太陽接近時に太陽の重力だけでは説明できない加速を見せたこと)から、太陽系外の知的生命による人工建造物である可能性を、ハーバード大学天文学部長である著者が自説として展開している書。解説にあるとおり現在の天文学会の間では主流ではない説にしろ、そのように考えても矛盾しない観測事実が示されていることから想像が膨らまされ、中盤は繰り返しも多く冗長であるものの、まるで野尻抱介著