松原隆一郎のレビュー一覧

  • 〈景観〉を再考する

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    内容(「BOOK」データベースより)
    乱立する高層建築、街中に張り巡らされた電線、均質な郊外風景。戦後の日本で、経済政策優先の都市開発が生み出した無味乾燥な“景観”を私たちはどのようなものとして受容してきたのか。マンション景観訴訟や景観法、景観行政などの従来の政策や議論が見落としがちな景観の社会的な意味や歴史的な形成過程について考察して、景観を語る言説に刻まれている歴史性や政治性を具体的に浮き彫りにする。生活者の主体性を排した都市計画や、理念への羨望と現実での絶望との間で循環する議論を回避して、近代日本で“景観”がどのように形成され変容し、そしてその過程でそれをどのように内面化してきたのかを探

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    2015年09月20日
  • 経済学の名著30

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     昨今の経済状況を観て、経済学は冷たいものなのだろうか。そんな疑問を持ち手にとった一冊。しかし読み終えたあと希望を持てた。古典を深く読むならばその根底には温かい哲学が流れている、そう思えた。
     はじめにの章で「資本主義」と「市場経済」の対比が便利であるとの提案になるほどと思った。「資本主義」という見方では貨幣や資産が中心となり実際の商品や財は背後に退いていく、とのこと。いままさにピケティが注目を集めているがその考えに共通の理念を感じる。
     そもそも何のための経済か。なぜ経済学から哲学がパージされたのか。今こそ古典に流れる哲学の復権を望む。私も本書をガイドに古典を読み進めたい。

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    2014年12月25日
  • ケインズとハイエク―貨幣と市場への問い

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    ネタバレ

    相当ハイレベルな内容を圧縮して詰め込んだ本。

    ケインズ、ハイエクそれぞれに、経済学だけでなく、哲学、歴史など多様な要素が含まれている。その分楽しめるとも言えるが、自分の知識をいかようにも試され、降参してしまう。

    それにくらべて、年金制度の行き詰まり、トップダウン故につまづいている貨幣経済など、今日の日本経済が実に情けなくなってくる。

    「ハイエクならば、貿易自由化という以上は同時に貨幣発行の民営化まで踏み込まなければならないと主張するのではないか。農業は製造業とは別の民間通貨を使うのである。」との意見は、官から民にお金の流れを変える事の大切さを考えさせられる。

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    2012年05月10日
  • ケインズとハイエク―貨幣と市場への問い

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    要約を好む人は多い。「一言で言うと?」というのは慣用句。しかし事実は複雑で、くだくだとしたプロセスを追わなければ概略すら理解してとは言えない(せいぜい、知ったような気になるだけで、正しくもなければ利用も出来ない)。
    本書ではケインズとハイエクの数十年にわたる思考の過程を追っていく。難しいが彼らの理解に一歩近づけたような気になる。

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    2011年12月31日
  • 日本経済論 「国際競争力」という幻想

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    小泉政権下での構造改革や規制緩和、低金利政策による円安誘導など一連の政策を、輸出企業の国際競争力強化を図る「重商主義」と定義し、輸出企業が稼いできた利益が国民に分配されなかったことや内需が絶対的に弱ってしまったことで実質的には行き詰ったもの、と断じている。
    一方で、民主党政権による政策については、結局農家の戸別保障制度や家族手当などのばらまきに終始してしまったために、持続的な成長戦略を全く欠いてしまっているとしている。
    その上で、著者としては内需の成長こそが日本経済に必要であると論じ、具体策として、国民にとって本当に必要な公共事業を行うこと、たとえば保育園の整備だったり、人と自然が調和をして国

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    2011年05月23日
  • 日本経済論 「国際競争力」という幻想

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    民主党政権には、国民の歓心を買うためにカネをばら撒くのではなく、将来不安の解消や公共心を培うための公共ストックの充実に向けて使ってもらいたい。それが重商主義時代の終わりに臨む政治の構え方。

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    2011年03月23日
  • 日本経済論 「国際競争力」という幻想

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    この著者については,朝日新聞「論壇時評」のときから注目していた。経済学者でありながら,社会の動きに広く目配りをして,説得力ある論旨を展開していた。本書はその改稿を含め,現在の日本社会・経済・政治の問題点を指摘し,それに対して(著者なりの)一定の処方箋を与えようとしている。自民党の高度成長期が終了するころまでの政策を一定程度評価しつつ,その晩期における問題の指摘はうなずけるところであり,また一方,現在の民主党政権への政権交代に一定の時代的必然があるとしながらも,個別政策とその背景にある考え方に一定の疑問符をつけている。「コンクリートから人へ」は,現実には「コンクリートからカネへ」ではないかという

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    2011年02月24日
  • 経済学の名著30

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    経済学の古典三十冊を要約して紹介するもの。
    著者が自負するとおり自説に関係なくその古典の著者の意思をバイアスなしで紹介していて感心。
    そうゆう意味で今まで誤解され批判を受けてきた古典や考えに新しく光をあてていて、「あ、そうだったんか…」と唸る事が多かった。
    加えて経済思想史に関する本を読むのはこれが初めてだったので、今までどれだけの知の巨人がいたのかとゆうことでも驚かされた。
    今大学で学んでいる経済学はミクロってのもあって新古典派経済学と言える。それ自体には不満はないがおれが個人的に強い関心を持つのは経済思想史とかだったりする。「経済思想史の変遷」とゆうクラスがあるらしいけど実際教えられている

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    2010年05月29日
  • アントニオ猪木とは何だったのか

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    面白かった。それぞれ面白かったが、
    やっぱりターザンの文章が1番面白い。
    これはもう「すりこみ」なのだと思うけど。
    テレビの古舘伊知郎、雑誌のターザン山本、
    この2人に言語能力は鍛えられた気がする。
    吉田豪がトリ、
    というのもパンクで猪木的でした。

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    2024年03月13日
  • 経済学の名著30

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    松原隆一郎(1956年~)氏は、東大工学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、東大教養学部助教授、東大大学院総合文化研究科教授等を経て、放送大学教授、東大名誉教授。専攻は社会経済学、経済思想史。
    本書は、経済学の古典・名著から厳選された30冊について、そのエッセンスをそれぞれ6~12ページ程度で紹介したものである。
    収録されているのは、ロック『統治論』、スミス『道徳感情論』、『国富論』、J・S・ミル『経済学原理』、マルクス『資本論』、シュンペーター『経済発展の理論』、マーシャル『産業と商業』、ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』、ポラニー『大転換』、サムエルソン『経済分析の基

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    2022年01月17日
  • 経済学の名著30

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    経済思想の豊穣さを感じられる一冊。公務員試験の教科書に載っている経済学は、サムエルソンの伝統を引き継ぐもので、経済学の一部に過ぎないことが分かり、目から鱗だった。一方で経済学者の眼は、時に正義論をも巻き込み、政治学や倫理学との境界上で、その範囲を自問していることに分かり、非常に興味深かった。

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    2018年06月22日
  • ケインズとハイエク―貨幣と市場への問い

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    偉大な経済学者であるケインズとハイエクの思想、理論を、時代背景や経済学会の動向、政治、経済、戦争などの状況と並べ、解説したもの。景気循環や政治的都合と共に、ケインズもハイエクも蘇るのだが、それは経済政策的に最適だからというだけでなく、政治の事情や国民の意識が絡んでいることがよくわかる。景気というと単に日経平均の指標くらいしか意識しないが、金利や失業率、財政収支、通貨供給量などにも関心を持つことで、先行きを少しは見通せるようになると思うし、仕事でもとても役立つだろう。

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    2017年04月01日
  • 無電柱革命 街の景観が一新し、安全性が高まる

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    とても正しく、ピュアな主張。
    例えば、電柱(電線)有無の写真を比べて感覚的に良さを訴えてくるあたりもよい。

    おそらく小池氏も松原氏(『失われた景観』の著書がある)も、もともとは景観上の観点から無電柱を主張し始めたはず。それでも、おそらくあとから、防災を看板に加えたりオリンピックもきっかけに加えたりしている。
    そして、実際本音は景観なのだとしても、それでよいと思うのである。これまでの東京の都市の歴史においても、例えばグリーンベルトが(本音はアメニティのためであっても)防火を看板にして主張されて実現したことがあった。プランナーは本音は大事にしつつも、時には工夫をして財政を説得するテクニックが問わ

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    2017年02月15日
  • 無電柱革命 街の景観が一新し、安全性が高まる

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    電柱は害悪(景観上)とする立場も、電柱は日本の道路・建築事情と経済原理と災害即応性を考えた必然とする立場も、それぞれに言い分はある。
    しかし、そもそもコストが必要なものであってすべての人が撤去促進に賛成しているわけでもないのに、実質的に自分の美意識(と快適さ)だけをよりどころにしながら、「一義的に事業者費用とすべき」などと、社会の原理を無視した「幼児的・小学生的」主張を行う松原隆一郎は、「社会経済学者」などと名乗る資格は無いと思う。

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    2018年10月19日
  • ケインズとハイエク―貨幣と市場への問い

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    デフレの英国1920年~、金融対策の困難な現実に対処するケインズと、経済の景気循環説を貨幣理論により唱えるハイエク。
    今の金融危機と対比して読むと面白そうです。

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    2012年12月23日
  • 日本経済論 「国際競争力」という幻想

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    戦後一貫して政治経済社会と広範囲にアメリカの影響を受けてきた日本。

    政権交代があったが、自民党時代よりも混迷を深める様相を見せる民主党政権。

    なぜ「経済」をめぐる迷走が続くのか、「国際競争力」という幻想、構造改革、公共性の問題点をするどくえぐる著作である。

    ソ連崩壊後の米国、ヨーロッパの迷走、中国・ロシアの台頭。

    多極化する世界構造における日本のしっかりとした立ち位置を模索しなければならない。

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    2011年06月12日
  • アントニオ猪木とは何だったのか

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    小学生の頃、猪木を観てプロレスが大好きになった。
    テレビのスピーカーにカセットデッキを近づけて録音をしたなぁー。
    休み時間は、プロレスごっこ。「ロープに振ったら返ってこなくちゃいけないんだぞー」

    猪木の人生、知らないことがたくさん書かれてました。夢枕獏さんの個人的な思い出がストレートで良かった。

    自分にとってのアントニオ猪木は何だったのか?
    そうですね〜、、、世界で一番強い日本人でいてほしい人、かな。
    子供ごころに「感動」ということを教えてくれたことが忘れられない。実況をカセットで何度聞いても感動したなぁ。

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    2024年02月13日
  • アントニオ猪木とは何だったのか

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    現役時代も現役を引退してからも、意識的にか無意識にか、多くの謎掛けを残していった猪木(猪木が現役バリバリだった頃はまだプロレスを見ていなかったので、あくまで印象だが)。とてもプロレス的で、今になってYouTube等でこれを分析するチャンネルがあって、楽しく見ている。だからこそ気になった本。内容としてはライトで読みやすかったが、ターザン山本の文章(文体?)に懐かしさを感じた。かつて週刊プロレスを隅から隅まで(何なら縦帯まで)読んでいたので、あの頃の記憶が蘇ったのかな。何とも不思議な体験だった。

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    2024年03月23日
  • アントニオ猪木とは何だったのか

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    もう一周忌。プロレスをこれまでも語ってきた論者たちの一年遅れの弔辞集です。ターザン山本の「プロレスについて考えることは喜びである。」というキャッチフレーズは大嘘だ、って言い放ち「猪木について考えることは喜びである。」とヤバすぎるエピソード連発する遅れてきた猪木ファン吉田豪。日本が世界に誇る三大偉人として空海と宮沢賢治と猪木と並べる妄想マックス夢枕獏。猪木を1000万人に通じる言葉を求めた人として、村上春樹の横に置くアカデミズム松原隆一郎。久々のターザン節がなんとなく旬じゃない感じのターザン山本。猪木、たけしだけじゃなく、村松友視、古舘伊知郎、ターザン山本に洗脳されまくりの人生突き進み、そして傷

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    2023年10月06日
  • 経済学の名著30

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    原典を読んでおらず(理解できる自信もない)、著者の解釈や30冊のチョイスの評価は当然できないが、そもそも経済学が主観的で何が正しいとは言えない学問であることがよくわかった。
    時代背景や各学者の信条による守備範囲や前提条件の違いが興味深かった。知識不足で理解できなかった部分はこれから勉強したい。
    経済の本や専門家のコメントに触れる際に「この人はどの流派か」と考える上で参考になりそうだ。

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    2020年06月19日