笹本祐一のレビュー一覧
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“「どーして転校生連れてんだよ!」
「んえ?」
言われて振り返った沖田は、狛犬の所から引っ張り出した結希の手をつかんだまま逃げてきたのを思い出して目を覆った。連れられてついてきた結希が、困ったような顔をして視線をはずす。
「えーと、あのこれは、なんとゆーか……」
真田に言い訳しようとして、沖田はあらためて斜め上を向いている結希の顔をしみじみと見直した。
「おまえ、本当にSCFか?」
結希はうなずくように目を伏せた。腹に響くような七四式戦車の一〇五ミリ砲の発射音が照明弾の空に響いた。真田が思わず耳を塞ぐ。
「とりあえず、逃げよ」
「どこへ?」
真田が訊いた。沖田は結希の手をつかんだまま歩き出した -
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かなりのスピード感。サクサク物語が進行する。置き去りにされてしまった場面もチラホラ。
やはり考えてしまうのは「この本が約30年も前に描かれた」ということだろう。
自分は生まれていないが、バブルの少し前だろうか。そんな時代に描かれたのだ。この作品は。
今でこそ学園SFというおおまかなジャンルは確立しているのだろうが、30年前にはそんなものはなかっただろう。やはり、何事も最初になすというのは、陳腐な言い回しになってしまうが、ものすごいことなのだろう。
今更思うが、物語が創り出す想像の世界はすごい。言葉だけで、無限に世界を広げてしまう。その世界に浸れることが、今の私の最高の幸せなのだ -
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“「まったく何なんだ……」
沖田は訳のわからない顔でベッドに腰をおろした。
「現在男子寮金紺館では廊下を中心に猛吹雪に襲われており、階段では雪崩の危険があります…一晩で男子寮がアルプスの山ん中にでもワープしたのかよ!」
「さっき女子の新聞部と連絡とれてね」
連絡待ちといった体の和田がいった。
「今日は日が出た時から雲一つない快晴だってさ」
「じゃなんで廊下の中にまで吹雪が舞ってんだよ!」
沖田はびっしり霜のついた窓をにらみつけた。外は——白い闇。
「季節外れのバカ雪でなけりゃ、何だ!自然研のマッドが降雪機の実験でもやってるのか」
「自然研はシロだぜ」と和田。「さっき一年の奴が言ってた。文化祭で -
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“「まきこみたくないんだってば!」ノブが声をあげた。「迷惑かけたくなかったの!」
「だったら、ほっといたよ!」
榊も負けじとどなり返した。
「エスパーの超能力コンプレックスなんざ、話の中にしか出てこないと思ってた」
「あっそ」ノブが鼻をならした。「ここに一人、立派なコンプレックス持ちがおりますわ」
「やだね......ったく」
「あなたにはわからない」
ノブが榊から目をそらした。
「あーわーったよ。病気持ちのヒロインてみんな同じこと喚くんだから。わかったよ、超能力者。エスパー。へーへー、認めましょ。で、何が気に入らないんだ?」
おだやかな口調に戻して榊が訊いた。
「力があるってこと」ぽつんとノ -
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それにさ、あの場はああ言ったほうがかっこいいとおもわない?(p.256)[内容]順応しつつある唯佳/物理法則すら書き換えることができるノウハウが「笑う大海賊」のお宝らしく、皆が欲しがっている/海賊たちは手を結ぶことにし、その頭にジャックを据えたいというがなんせ海賊なので誰かが裏切りそうだ/また、既にスクラップ寸前になっているヴァイパー(コンピュータは上物)をどうするのか/ようやく「海底軍艦」的機能が役立つ[感想]ハードな「ひと夏の経験」ですなあ…
■簡単な単語集
【アルピナ】海賊。アレックスの部下。スキンヘッドの大男。身体をあれこれ改造しており自称「ワンマン・クルーザー/一人巡洋艦」。
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地球に隠遁していた元宇宙海賊がお宝らしい何やらをめぐって以前の部下たちとドンパチやりあうライトな宇宙冒険活劇。「ワンピース」と「ターミネーター」と、うーん、そうやなあ…「スカーレット・ウィザード」を足したような感じ。前半はアクション満載のわりにちょっとテンポが悪い。たぶん、いちいち軽く説明が入るからそこでカクッとなって乗り切れなかったかも。唯佳がアレックスに捕まって以降、会話主体となり少しテンポがよくなった。戦闘シーンは今どきらしく情報戦の駆け引きから。
■簡単な単語集
【アルピナ】海賊。アレックスの部下。スキンヘッドの大男。身体をあれこれ改造しており自称「ワンマン・クルーザー/一人巡洋艦 -
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宇宙基地への物資輸送や
宇宙設備の整備点検を行う民間企業。
そこで働く飛行士や技術者たち。
もうすぐこんな職業も当たり前になるかも。
やる気はあるのに機会に恵まれなかった
新人宇宙飛行士の美紀が
アメリカの会社に臨時採用されてやってくる
その最初のシーンから私好み(*´∀`*)
映画を見ているようなやりとりがかっこいい!
想像力が足りないので
宇宙船を飛ばすブースターのような物体は
テキトーな形でしか捉えられないけど
それをギリギリかわす小型機の姿は思い描ける。
そんな美紀のミッションを成功させるために
最初は能力を疑ってたりした社員たちも
だんだん仲間になってきて
それぞれの仕事に熱が入 -
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『妖精作戦』は1984年の作品で、ライトノベルの先駆けとも言われ、有川浩さんなどの多くの作家に影響を与えたという。
また、4巻あるシリーズのラストは当時読んでいた若者たちの間で物議を醸したそうだ。
2011年の創元SF文庫復刊版では、有川浩さんが解説を務めた。
先に、悪かったところを述べておこうと思う。
この作品は笹本さんのデビュー作であり、加えて、先駆けだろうがなんだろうがラノベはラノベである。
だから、文章は上手ではない。
三人称視点と一人称視点が混ざり合っていたり、段落を変えずに違う人物の視点に変わったりするため、読みづらい。
また、心理描写がとにかく少ない。
せっかく魅力的なキャラク -
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1巻に続いて相変わらず硬派かつ骨太なライトノベルだ……という印象。まさしく理系の小説なので、文系に生まれてしまった自分との相性は決して良くないんだけど、だからこそ珍しさというか、普段と違う毛色の話に触れるという体験自体は楽しい。
登場人物にそれぞれ「この人物はこういう性格なんだろうな」というのが割り振られてはいるものの、それが全くキャラクター然としていないというか、システマチックに喋る分人間味が薄いと感じてしまって登場人物にあまり愛着が湧かないんだけど、その辺もまた硬派なわけですよ。そういうのが好きな人は、そういうライトノベルを読めばいいだけの話で。このベテラン作家さん(現役最古のラノベ作家を