藤野可織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「いやしい鳥」
「溶けない」
「胡蝶蘭」
文芸誌で短編一本読んだときから何となく気になっていた作家さん。
やはり好みな作風だった。
いずれの話も非日常・非現実な事柄が登場するのだけれど、それがもしかしたら語り手だけの体験なのではないかと不安を抱かせる。
この非日常との距離感がとても自分にしっくりくるもので、もっと他の作品も読みたいと思った。
「いやしい鳥」
即座に結びつく証拠は、この表題作でも消されている。最初に詮索好きで勝手に妄想を膨らます主婦の視点から、この物語の主要な語り手を外から描写。そして男の語りも最初は支離滅裂。とても疑わしい。
鳥になった男の不気味さは秀逸。同じ人間とは思えないところから、本当に人外へとなってしまう。
「溶けない」
三編の中では一番好き。
幼いころ「恐竜」に飲み込まれた母親は、姿形も記憶もまったく同じ別の母親になって戻ってきた。
同じくカメレオンを見たという同じ大学の女性や、「恐竜」じゃなくコモドオオトカゲだと言う大家。
飲まれるって何なのか?
母親との関係性や主人公自身の変化などが、人を飲み込もうとする何かとつながりを感じられて、このつながってるぽい距離感もいい感じ。
明白じゃないけど、意味を感じる。
「胡蝶蘭」
スッキリとまとまった一編。
最後がおしゃれ。 -
Posted by ブクログ
「いやしい鳥」
鳥を飼う男。その隣人たる主婦。この二人の視点が交錯しながら、鳥とそれを食した青年の惨劇が紡がれる。
「溶けない」
幼い頃、母を恐竜に食われてしまった女性、その記憶と、その後の人生、そして再びの遭遇を描く。
「胡蝶蘭」
物喰らう胡蝶蘭。それを引き取った女性。その、奇妙に、愛しい日々。
3作ともに完成度が高く、なかなか満足だった短編集。個人的には「溶けない」が好きですかね。
現実と幻想がぐるぐると静かに渦巻いて、奇妙で、不気味で、どこか惹かれる世界を形づくる。読者はとにかくその流れに身を任せてしまえば良し。
文章もかなり好み。感覚をここまで適切に書ける人も珍しいのではないかと思います。過不足ない言葉で描かれているがゆえに、かえってその描写が浮き立って見えるとでもいいましょうか。人が何気なく感じていることを言葉にして提示する、という小説ならではの仕事を見せてくれました。