車谷長吉のレビュー一覧

  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    前半と後半で雰囲気が変わり、後半は耽美な幻想文学に思えました。とても美しく儚い。

    私小説の有名作ということだけ知ってたので、身の回りのことを細々とぼやいてる暗い作品なのかなと思って読み出して、最初はそのイメージにあってましたが、カフカ的な雰囲気を感じたり、異界の幻想文学のようで、とても感じ入りました。傑作。

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    2026年09月27日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    全編「生(なま)の言葉」で書かれた小説の前では、どんなに理性的な言葉で感想を綴ろうとしても、どんなに作品を理知で論じようとしても、それは「嘘の言葉」にしかならないような、手から砂がこぼれ落ちるように作品の本質を取りこぼしそうな気がして、言葉にならない

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    2026年09月23日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    なにを言わないかで成立している世界、何事も起きない時間に揺れる女の心と最後まで境界を踏み越えない強さ、この世界で生きる人間ではない鈍臭さ、おそろしく生々しい人間味など、緊張感がすごい
    言葉遣い含めとても良かった

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    2026年09月06日
  • 漂流物・武蔵丸

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    ネタバレ

    本書は著者の傑作集で、実際に体験したことを基に書かれた作品と小説論のエッセイが収録されている。なかでも『抜髪』は、母親が、息子に対して、テンポよく一方的に語り、諭すという奇妙な話で印象深い。また『私の小説論』で、私小説家である著者が小説に関する意見を述べ、小説を書くことは自分の血を流す行為だという。

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    2026年03月25日
  • 漂流物・武蔵丸

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    帯に「私小説の極北」とあるが、この短編集に収められているのは必ずしも私小説だけではない。母親の語りが続く「抜髪」、料理人時代の同僚が語る「漂流物」、直木賞受賞時の日記など、バラエティに富んだ構成で著者の作品の幅が楽しめる。
    「漂流物」として世捨て人を目指して生きてきた著者ではあるが、本書で語られる様々な文学賞(非)受賞の顛末などを知ると、あえて俗物性を全開に自身を戯画化していて、そうした所こそ自分の肉を切ってこその小説であるとの持論が徹底されている。まさに「最後の文士」とも呼ぶべき作家である。

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    2024年11月09日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    文庫の帯に加藤シゲアキが推薦文を寄せていたので読んでみた。
    著者は2015年に亡くなった直木賞作家の車谷長吉。
    朝日新聞土曜版に連載されていたもので、読者からの悩みに車谷氏が答えるというシンプルな人生相談形式なのだが、この回答のぶっ飛び具合がなかなか凄い。
    一例を挙げると、定期的に教え子の女子生徒に恋心を抱いてしまうという妻子持ちの高校教師に対して
    「生が破綻した時に、はじめて人生が始まるのです。」
    「好きになった女生徒と出来てしまえば、それでよいのです。」
    「阿呆になるのが一番よいのです。あなたは小利口な人です。」
    と唆したと思えば、人の不幸を望んでしまう自身の心を入れ替えたいという主婦に対して
    「まず思ったのは、この人は一生救われないな、ということでした。」
    「あなたは人生の不幸を乗り越える力がありません。愚痴死が待っているだけです。」
    と吐き捨て、妻が新興宗教にハマってしまった会社員に対しても
    「夫であるあなたが説得することは出来ないでしょう。」
    と身も蓋も無いことを書くという、真剣に悩んで相談を寄せた者からしてみたら唖然とするであろう回答ばかりなんだけど、第三者として読んでいる分には実に面白くて笑えてしまうのである。
    特に「美禰子」のくだりは最高。まさか夏目漱石先生もダッチワイフに名前を拝借されるとは思っていなかったでしょうに。
    初版から10年以上経っているけど、時代の経過を感じさせない魅力が本書にはあると思う。それは恐らく、世間一般でいうところの「道徳」とは対極にある、人間としての真理を突いた部分があるからではなかろうか。

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    2023年08月06日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    素晴らしい本に出会いました。知らないままでいずにすんでよかった!朝日新聞に連載された車谷長吉さんの人生相談。ただ、なんとか悩みにこたえようとする人生相談とはまったく違う。ある悩みへの車谷さんの返答の冒頭が「あなたの相談を読んで、この人は一生救われないなと思いました」…!さらには車谷さん自身が重度の障害者であり、生まれつき鼻で息ができないという。手術のときは「失明してもよい」という同意書にサインをしたという。これではどんな悩みも吹き飛んでしまう。つまりは、人生には悩みがあって当たり前。解決しようなんて虫がいいんじゃないですかと。そんなメッセージを感じます。なにかに悩んだら、駆け込み寺のようにこの本を手に取りたいと思います。毒を持って毒を制す、ワクチンのような一冊。

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    2023年07月24日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    異質な作品。
    作者は暗くある種陰惨な私小説をキャリアとしていて、本作品もベースは世捨て人の作者自身を投影した様な一人称視点。
    にも関わらず、本作品の直木賞受賞には納得をしてしまう寓話性があり、作品が締まった瞬間物語の世界から弾き出された様な寂しさを感じた。
    特に女性とのさもしい縺れた恋情を描くのが巧すぎる。

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    2023年06月28日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    日常を虚で湿った目線でかすめる言葉たちとなにかの起きていることはわかるがなにが起きているのかはわからない感覚とがまじりあって神話的な雰囲気を醸成している。ただ二十四節で終わってほしかった。釣れない釣りを続けるひとたち好きだった。

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    2022年12月25日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    社会の底辺で生きる人達と、そこに身を置かざるを得なくなった主人公の話。
    文章が面白過ぎて、全然好きな題材じゃないのに怖い物見たさもあり一気に読んでしまった。
    主人公が「生きる世界が違う」と体良く追い出され更に女の後を追いかけて彼の地を離れるまでの冒険譚のような話だった。

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    2022年10月03日
  • 雲雀の巣を捜した日

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    私小説よりも私小説的な。エッセイ・俳句その他雑文集ではあるが、様々なトラブルへの身の処し方やものの考え方に著者らしさが溢れ出ている。白洲正子に見出されたというのも本書で初めて知った。

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    2022年04月13日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    上手い。文章が、ストーリーが、人間描写が驚くほど上手い。地下鉄神楽坂駅の伝言板に始まるあっち側とこっち側を意識させる世界観。会社を辞めてアパートの一室でモツを串に刺し続ける「私」。背中に迦陵頻伽の刺青のある隣室の女がある日「うちを連れて逃げてッ」ーこの目に見えない境界線は何なんだろう。そして本当にそこに境界線はあるのだろうか。何がそれを作るのだろう。さらにあっち側にも魅力が垣間見える。近所の焼鳥屋が肉を串に刺し続ける仕事、時給1200円と聞いて、それは違うと思った。

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    2021年11月19日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    近鉄の駅に夏になると貼られる赤目四十八瀧の観光ポスター。毎回気になるのだけれど、旅慣れた京都でも奈良でも大阪でもなさそうな場所で、なんとなくふわふわした「いつか…」のままちょっと心の奥にしまってある現実感のないところ。そこがタイトルだったので手にした本。

    久しぶりにこれだけ黒いマグマのような力のある小説を読みました。
    尼崎・やくざ・刺青といった好みのジャンルではなかったけれど、ドロドロとした臓物までさらけ出すように刹那的に底辺を生きる登場人物たちの描写から感じるものが色々ありました。それは感動とかそういうものではなくて、リアルにこういう世界に生きている人たちもいるのだろう、とにかく自分も今日を踏ん張って生きて、少しでも今の場所から這い上がらなければ…という生へのリアルさでした。
    それには自分はここまで落ちてはいないという安心感もある。そして立ち止まり過ぎていたら、ここに落ちてしまうかも…という不安でもある。

    日常で使う「しかし」という字は「併し」って書くことも知りました。
    短めの小説だし、また疲れたら読んでみよう。

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    2021年02月06日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    赤目四十八瀧というのは、三重県名張市の近くにある有名な観光地である。といっても、近くにいながら僕は一度も訪れたことがない。一度は行ってみたいと思っていたが、この作品を読んだら行く気が失せた。それは何故かと問われても説明がうまくできないのだが、背中からぞくぞくするような寂寥感が迫ってくる描写に、妙に不吉な臭いを連想し困ってしまった。
    作品の中に、主人公の生島とアヤちゃんが、死に場所を探しながら滝壷を覗き込むシーンがある。これが何とも切ない。最終のバスに乗り遅れて、バス停で呆然と佇むような感覚とでも言おうか、次に何をしたらいいのか分からないもどかしさを感じるのである。
    夕闇が迫るとともに観光客の姿もなくなった連瀑を覗き込み、「死ぬことについての意味など何もない」と思いながら、成り行きに任せて心中を決心していく主人公の姿が悲しい。安定した会社勤めを簡単に辞めて、隠れるように移り住んだ薄暗いアパートの一室で、臓物にひたすら串を刺していく毎日。欲もなく、自分を追いつめるように空気の如く生きる生島の姿は、まるで修験者のようでもある。凡庸と欲望に凝り固まった自分には生島の生き方は到底理解できない。“流される”と表現するのが一番合っているような気がするが、ただひたすら流され続ける生島の生き方は、人間を捨てた仮の姿であり、無欲が成せる崇高な姿ではない。魂を抜かれた“抜け殻”と表現するのが合っている。
    作品の中で、生島が姫路に生まれ、小説を書いていたというエピソードが出てくるが、このあたりのあらすじは著者の過去を彷彿とさせるものがあり、自らの体験がベースになっている作品と言えるのかもしれない。関西の下町を舞台に、陰をもった人々の暗さをたっぷりと書き込んでいる筆致は、著者の分身とも言えなくもない主人公の生島の育ちの良さを時折垣間見せながら、まるで梅雨空から抜け出せないような暗い関西弁のイントネーションを使って、隠花植物のように暗さに溶け込まさせる。育ちの良さが発する輝きを無理矢理に封じ込めるという絶妙なバランス感覚をうまく表現し、著者独特のシュールな世界を作り出すことに成功している作品であった。

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    2021年01月25日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    大半を通勤バスの中で読んでいたので、
    声を出して笑い出しそうなところを、
    堪えるのが大変だった。

    読みすすめるにつれて、
    車谷長吉という魂から紡がれた言葉が、
    いつだって柱となり、
    普遍性を生み出していることに慄き、
    心の底からため息が出た。

    身も蓋もないような言葉の連なりなのだが、
    それが一貫していると、
    究極的な真理とおもいやりを体現するようだった。
    特に10代、もしくは20代前半の相談者への、
    優しさたるや。

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    2020年12月12日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    先天的な障害と貧乏と…色々薪炭を舐めて仏の道に明るい作者の前にあっては、どんな質問も薄っぺらで、どう一蹴されるのか心配になってしまう。それでいて爽快。

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    2019年10月14日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    文体が古臭くて湿っぽくてクセがあって、読みやすいわけではないけど、何となく引き込まれる。主人公やアヤちゃんがどういういきさつで今の生活に至っているのか、あまり触れていないことが興味を引き立たせる。主人公が最終的には普通の生活に戻ったということにさらにびっくり。

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    2019年06月30日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    選んでここにきた主人公と、ここでしか生きられない人との対比が生々しく、歴然としている。そしてそこがこの作品の面白さだと感じます。暗くて救いようがないのに、どこかあっけらかんとしている。映画を見たときは幼くて全く理解できなかったけど、リトライの思いで本作を手に取って良かった!かなり好きな作品です。

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    2018年02月17日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    回答者の車谷さんの歩んで来た人生が壮絶過ぎて、相談者の悩みが霞んでしまう。
    相談に対し、ご自身の苦悩や人生経験を述べられ、
    「人生に救いはないのだから、ありのまま今の自分を受け入れ、阿呆になり黙々と生きなさい」
    と諭す、斬新な回答スタイル。
    車谷さんの苦悩が桁違いに大きいので、相談者の悩みはちっぽけに思われ、昇華される。
    まさに毒をもって毒を制す!
    解説で万城目さんがこのことを、「殺す」と表現されていたのが可笑しかった。

    「人の不幸を望んでしまいます」という相談には、
    「子供が不治の病にかかるとか、夫が事故死するとか、
     苦い思いを舐めない限り救われないでしょう。
     あなたに待っているのは愚痴死だけ」と、ほとんど呪いのような言葉が....。
    ホント、殺してはるわ〜(笑)

    かと思えば、結婚するまでは寂しくて木目込み人形を抱いて寝ていたとか、
    「ほんまかいな?」というエピソードもちょいちょい挟まれ、
    冗談なのか真面目に言っているのか分からない、ぎりぎりのラインがまた可笑しい。
    車谷さんのことは今まで知らなかったが、俄然興味を持った次第です。

    私も山歩きが好きで、奈良にもよく出掛けますが、
    いつか山で「うれしいひなまつり」の歌声に遭遇したいものです。

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    2015年03月01日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    解説の万城目学が書いているように、悩みを次々と殺していく、車谷長吉さんのお悩み相談。
    朝日新聞の連載のときも、車谷さんの当番回が来るのがいつも楽しみでした。

    もはや悩みの回答になっていませんが、妙に痛快で、読みながらふっと笑ってしまえる不思議。
    中年には絶望的な切り返しがおおいけれど、まだまだ先が長い若者にはあたたかい目線があったりするのも、なんだか和みます。
    読んでいるうちに、「私の悩みなんて、たいしたことないのかもしれないなぁ」と思えてきます。

    個人的に一番好きなのは、「同僚の女性がむかつきます」の回答。
    傑作だと思います。
    車谷さんに言われちゃうと、もう山登りして歌うしかないかなと思えてくる(笑)

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    2013年04月30日