車谷長吉のレビュー一覧
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相談してはいけない相手。相談しても無駄な人。っていう人がそれぞれいると思う。
車谷長吉は、絶対に相談なんかしちゃいけない奴だと私は思う。
教え子の女子生徒が好きで好きで堪らず、「情動を抑えられません。どうしたらいいのでしょうか」という40歳の高校教師の深刻な悩みに、
「破綻して、職業も名誉も家庭も失った時、はじめて人間とはなにかということが見えるのです。あなたは高校の教師だそうですが、好きになった女生徒と出来てしまえばよいのです」
と、とんでもない、不道徳極まりない解決策をけしかけている。
こんなのが毎週朝日新聞の別刷りの紙面に連載されていたんだそうな。それが一冊にまとめられたのが -
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壮絶。圧倒されて読みました。
底辺に堕ちたと主人公の生島は思っていたけど、アマに住む他の人たちは「あんたはここにいる人とちがう」と、最後まで仲間みたいなものには入れなかったな生島のこと…それは希望みたいなものかもしれないと思いました。ここに馴染ませてはいけない、と。中には陥れようとする人もいるし危ない事にも関わってしまうけど、それでも助けてくれる人もいるし。
こんな世界は表からは見えていないだけで、まだあるんだろうなと思わせられる現実感がありました。アヤちゃんみたいになる人もいるんだろう。。迦陵頻伽の入墨って凄い。
晋平ちゃんも幼いながらに(これは言葉にしてはいけない)を弁えてて悲しくなりまし -
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一風変わった恋愛小説としても十分面白いのですが、それよりも意図的に使われる大正ロマン(大正をよく知りませんがなんとなくそんな雰囲気)の文体を愛でる作品のような気がしました。その意味では、この小説は芥川賞候補でもおかしくなかったのでは。舞台は昭和53年なのに、この文体の効果で尼崎のどんよりとした底辺にうごめく人間模様が一種独特な迫力で描写されます。打算的で利己的だが主体性の薄い主人公が、身を崩し特殊な下位社会の中で流されて生きる、その絶望的な状況でも誰かを信じてみようと思わせる人間のやさしさとはかなさを知る・・
「圧倒的な小説づくりの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る」という宣 -
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ネタバレ文体が全体的に異臭というかそれでいて狂気と静謐さを帯びている。私とアヤちゃんの関係性と、私とセイ子ねえさんとの関係性。くすぼり、と呼ばれる連中達の中でひりひりとした私の心情がスカタンと自らを呼び、どこまでも世捨て人として落ちていこうとする。けれど、周囲の人間は私にあんたはここで生きていく人間ではないと突き放す。私はどれほどスカタンで落ちていく人間だとしても彼女や彼らにとってはインテリの観察者でしかないのだ。だから最後アヤちゃんは私との心中を未遂にしたのではないか。車谷長吉の言葉は良い意味で古臭く、アマの生活での言葉遣いが理解出来ない場面があったので、これはまたいつか再読するべき本だと思った。
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ネタバレ「いやあ、今日も車谷先生、豪快に殺したはるわ~」
万城目学による所感。先日、万城目の『ザ・万地固め』の中に本書の”解説”が丸々収録されていた。それを読んで、こりゃ面白そうと読んでみたもの。確かに、面白かった。
人生相談ものは、なんと言っても悩みそのものより回答者の人となりが出る回答っぷりが見もの(読みもの?!)。お題を与えられて答える、いわば大喜利のようなもんだ。
古くは中島らもの『明るい悩み相談室』にハマり、最近読んだものでは、伊集院静の『悩むが花』が痛快だった。楠木健による、いかにも胡散臭い回答だらけの『好きなようにしてください』も、ある意味、こうした人生悩み相談の本質がよく分か -
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ネタバレいやもう、こら凄い。激重。どヘヴィー。ちょっと、もう、口あんぐり、としか、いいようが、、、ないな。
読んで良かった、という気はするのですが、自分みたいな根性なしは、この世界では、全く生きていかれへんだろうな、と、思うしだいです。喰われる立場になって、それこそこの小説の主人公が、毎日ひたすら作り続ける、病死した鳥や牛や豚の肉の串焼きの具になる立場やな。そう思うたのです。
関西弁?というか大阪言葉?神戸言葉?まあ、一応は、関西弁って言い方になるのか。小説内で、登場人物がしゃべるその言葉が、めちゃんこリアル。まんまそのもの、っていう、うひゃあ、これが生の言葉か、って感じ、でしょうか。読んでて、め -
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新聞で連載されていたのをまとめたものですねぇ…自分は車谷さんのファンですのでまあ、楽しめましたかね…。基本的に絶望の中に居るというか、もう生きている、その状態が車谷さんにとっては苦痛なんだそうで、そうした視点から回答するものですから、相談者からしたらもう…絶望と言いますかね、突き放されたような感じを受けるんじゃないでしょうか? 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
でもまあ、僕も個人的には車谷さん側の人間でしてアレですね、悩んでもしょうがないと言いますか…こういう、人生相談とか、他人に相談して答えをもらうっていう考え自体アレかと…まあ、他人に相談して少し気が楽になる、そういう意味合いであれ -
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愛読する朝日新聞の身の上相談コーナー。「おすすめ文庫王国」で炎の営業杉江さんが推していて、これも本になっていたのを知った。杉江さんの言うとおり、車谷長吉さんの回答はいつも同じ。でも読ませる。これはもう「芸」です。
なんといってもすごいのは、車谷氏自身は、人をおもしろがらせようとか、ウケようとか思って書いているわけではない(と思える)ところ。そして、その誰に対しても同じ答えである「人としてこの世に生まれたことには、一切の救いはありません」という言葉に、その絶望的な響きとは裏腹の、突き抜けた励ましを感じてしまうところ。
しかしそれにしても、思わず「え~!?」と声の出る箇所がいくつか。
「うち