車谷長吉のレビュー一覧

  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    文庫の帯に加藤シゲアキが推薦文を寄せていたので読んでみた。
    著者は2015年に亡くなった直木賞作家の車谷長吉。
    朝日新聞土曜版に連載されていたもので、読者からの悩みに車谷氏が答えるというシンプルな人生相談形式なのだが、この回答のぶっ飛び具合がなかなか凄い。
    一例を挙げると、定期的に教え子の女子生徒に...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    素晴らしい本に出会いました。知らないままでいずにすんでよかった!朝日新聞に連載された車谷長吉さんの人生相談。ただ、なんとか悩みにこたえようとする人生相談とはまったく違う。ある悩みへの車谷さんの返答の冒頭が「あなたの相談を読んで、この人は一生救われないなと思いました」…!さらには車谷さん自身が重度の障...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂

    異質な作品。
    作者は暗くある種陰惨な私小説をキャリアとしていて、本作品もベースは世捨て人の作者自身を投影した様な一人称視点。
    にも関わらず、本作品の直木賞受賞には納得をしてしまう寓話性があり、作品が締まった瞬間物語の世界から弾き出された様な寂しさを感じた。
    特に女性とのさもしい縺れた恋情を描くのが...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    日常を虚で湿った目線でかすめる言葉たちとなにかの起きていることはわかるがなにが起きているのかはわからない感覚とがまじりあって神話的な雰囲気を醸成している。ただ二十四節で終わってほしかった。釣れない釣りを続けるひとたち好きだった。
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    社会の底辺で生きる人達と、そこに身を置かざるを得なくなった主人公の話。
    文章が面白過ぎて、全然好きな題材じゃないのに怖い物見たさもあり一気に読んでしまった。
    主人公が「生きる世界が違う」と体良く追い出され更に女の後を追いかけて彼の地を離れるまでの冒険譚のような話だった。
  • 雲雀の巣を捜した日
    私小説よりも私小説的な。エッセイ・俳句その他雑文集ではあるが、様々なトラブルへの身の処し方やものの考え方に著者らしさが溢れ出ている。白洲正子に見出されたというのも本書で初めて知った。
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    上手い。文章が、ストーリーが、人間描写が驚くほど上手い。地下鉄神楽坂駅の伝言板に始まるあっち側とこっち側を意識させる世界観。会社を辞めてアパートの一室でモツを串に刺し続ける「私」。背中に迦陵頻伽の刺青のある隣室の女がある日「うちを連れて逃げてッ」ーこの目に見えない境界線は何なんだろう。そして本当にそ...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    近鉄の駅に夏になると貼られる赤目四十八瀧の観光ポスター。毎回気になるのだけれど、旅慣れた京都でも奈良でも大阪でもなさそうな場所で、なんとなくふわふわした「いつか…」のままちょっと心の奥にしまってある現実感のないところ。そこがタイトルだったので手にした本。

    久しぶりにこれだけ黒いマグマのような力のあ...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    赤目四十八瀧というのは、三重県名張市の近くにある有名な観光地である。といっても、近くにいながら僕は一度も訪れたことがない。一度は行ってみたいと思っていたが、この作品を読んだら行く気が失せた。それは何故かと問われても説明がうまくできないのだが、背中からぞくぞくするような寂寥感が迫ってくる描写に、妙に不...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    大半を通勤バスの中で読んでいたので、
    声を出して笑い出しそうなところを、
    堪えるのが大変だった。

    読みすすめるにつれて、
    車谷長吉という魂から紡がれた言葉が、
    いつだって柱となり、
    普遍性を生み出していることに慄き、
    心の底からため息が出た。

    身も蓋もないような言葉の連なりなのだが、
    それが一貫...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    先天的な障害と貧乏と…色々薪炭を舐めて仏の道に明るい作者の前にあっては、どんな質問も薄っぺらで、どう一蹴されるのか心配になってしまう。それでいて爽快。
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    文体が古臭くて湿っぽくてクセがあって、読みやすいわけではないけど、何となく引き込まれる。主人公やアヤちゃんがどういういきさつで今の生活に至っているのか、あまり触れていないことが興味を引き立たせる。主人公が最終的には普通の生活に戻ったということにさらにびっくり。
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    選んでここにきた主人公と、ここでしか生きられない人との対比が生々しく、歴然としている。そしてそこがこの作品の面白さだと感じます。暗くて救いようがないのに、どこかあっけらかんとしている。映画を見たときは幼くて全く理解できなかったけど、リトライの思いで本作を手に取って良かった!かなり好きな作品です。
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    すさまじい小説でした。「私」は、あらゆるものを捨て去った底辺で生の、すなわち真の言葉がうまれるところへと流れてきたけれど、自分はそこの人々のように堕ち切れない。それが己の原罪の表れだと思っている(だからセイ子ねえさんは「私」を真面目な人間だと言う)。表題からして「未遂」と言っているから、そのことは最...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    自由人の人生は、ひやかし人の人生といえよう
    生来の自己評価の低さや
    それを補うための実存主義的冒険主義
    そういったものに根差した鼻つまみ者の悲しみが
    自由人にもあるけれど
    大学まで出させてもらっておきながら
    今は鶏肉を串に刺して生きている、そんな生き方は
    単に易きに流れる人のだらしなさとすら見てもら...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    回答者の車谷さんの歩んで来た人生が壮絶過ぎて、相談者の悩みが霞んでしまう。
    相談に対し、ご自身の苦悩や人生経験を述べられ、
    「人生に救いはないのだから、ありのまま今の自分を受け入れ、阿呆になり黙々と生きなさい」
    と諭す、斬新な回答スタイル。
    車谷さんの苦悩が桁違いに大きいので、相談者の悩みはちっぽけ...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    解説の万城目学が書いているように、悩みを次々と殺していく、車谷長吉さんのお悩み相談。
    朝日新聞の連載のときも、車谷さんの当番回が来るのがいつも楽しみでした。

    もはや悩みの回答になっていませんが、妙に痛快で、読みながらふっと笑ってしまえる不思議。
    中年には絶望的な切り返しがおおいけれど、まだまだ先が...続きを読む
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    回答の意味がよく分からないところがありましたが、悩みを人に解決して貰おうと言うのが無理な相談なのかと思いました。
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い
    この本を読み始めてすぐに、頬を平手で叩かれたような感覚に陥った。
    目が覚めるとはこういうことか。
    最初の相談についての答えは、自分の不運を嘆くことは考えが甘い、覚悟がないとけんもほろろである。相談者の悩みに寄り添って回答するありがち悩み相談とは一線を画している。
    もうぐうの音もでない。

    この本は車...続きを読む
  • 赤目四十八瀧心中未遂
    冥い底辺に蠢く人々を圧倒的な筆力で描いた作品。
    内容も文体もまったく違うけど、開高健の「日本三文オペラ」(ちょっとスカッと抜けすぎてるか)や「ロビンソンの末裔」(うん、こっちの方が近い)、中上健二(作品はうろ覚えだけど)などを思わせる雰囲気があります。
    虚無でありながら、日も差込まぬ暑い部屋でひたす...続きを読む