車谷長吉のレビュー一覧

  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    下手なマネをすれば死に直面しかねない暮らしにありながら、どこか他人事に見えるインテリな「私」の身の置き方は、私小説とはいえどこまで事実に基づくかはわからないが妙にリアリティがある。アヤちゃん、セイ子ねえさんのキャラクターも本作の魅力である。

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    2025年04月13日
  • 漂流物・武蔵丸

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    車谷長吉氏の著作を読むのは3作目。
    数奇な人生は、本作の作中の著述と夫人の巻末エッセイ「けったいな連れ合い」で
    知りました。
    また著者の最期についてはwebで知りましたがあり得ない最期、放浪の旅のさなかでは料理人としての仕事もしていた筈だったのに…。
    Punksを体現した生き様だったのか…。
    本編では「武蔵丸」「狂」が印象に残りました。

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    2022年04月19日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    心が近鉄電車の中にまだ自分もいるような感じで動けない。

    夏目漱石もゆうとったらしいけど、やっぱり「書くということ」は“命の交換”なんやと。

    命を削りながら、描くというよりは、命と交換するくらいの気持ちでないとあかんということやとおもう。

    この小説では「池に沈んだ月を掬い取る」という表現をしているけど、そんなどうなるかわからんようなもんに命をかけるとは、恐れ入るしかない。そして文学とはそうなんやと。

    この小説は、書くということで作者が命を差し出す迫力に圧倒される。読後、しばらく心が痺れて動けないでいる。

    2022/1/29 再読(コロナ罹患のため療養中に)

    人や出来事を丁寧に彫り起こ

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    2021年08月02日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    ネタバレ

    主人公は自己評価が低く最初は太宰文学を読んでいるようなつまらない感じでしたが途中から状況が緊迫し一気に読み上げました。
    登場人物はそれぞれキャラが立っていて印象的です。
    映画ではあやちゃんを寺島しのぶが演じだそうだがかなり印象と違い残念。

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    2020年09月04日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    小説家を目指しつつ、東京で仕事をしていたが、とあるきっかけですべてを捨てて尼崎の居酒屋の女将に匿ってもらってほそぼそと暮らす男の人生。

    何もかも捨て尼崎に降り立った生島は、居酒屋のセイ子に拾われ、ボロアパートでモツの下処理をする仕事を貰う。隣には刺青師、色っぽいその妻アヤコが住み、周辺にはカタギではない人たちが行き交う。

    あんまり調べてないけど、作者の私小説的な部分が多いのではないかと思う。ちょうどゴールデンウィークに、吾妻ひでお『失踪日記』『うつうつひでお日記』を読んだところだったことや、もともとつげ義春なんかを愛読していたので、こういう世界は大歓迎。

    読み始めから「併し(しかし)」な

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    2020年05月22日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    ネタバレ

    何もしないでいるにはあまりにも長い人生だから、何か意味が見出せないと、生きることの怖さや死ぬことの怖さを受け入れられない。‬
    ‪血なまぐさい湿り気が漂う不快さの中で、人間の芯の部分が常に見え隠れしていた。‬
    ‪捨てた・失ったと言えるのは、それだけのものをはじめは持っていたということであり、その違いは決定的。‬そして道を分けるのはその奥底に潜んだ僅かな違いかもしれないと思う。

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    2019年07月07日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    車谷長吉さん・・・破天荒な半生と現在の静かな生活。それは理想形のひとつ。人生とは正解などないもの、そのときどきに応じて根拠めいたものを考えて行動はするけれど、結果はさまざま。そういう意味では、人生の無常感を感じさせてくれる小説群。そこから出てくる人生相談もまた、無常を知らずして生きることの虚しさを語る。

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    2018年10月13日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    『併し』が多いな、併し。っていうのが読み始めの印象。読み進めるうちにだんだん減ってはくるけど、たまに出てくる度に気になった次第。それによって引っ掛かりを覚えるから、漫然と読み進めてしまうのを防止する効果はあり。心中相手の最期は描かれていないとはいえ、最終的にはあらかたの結論が出てるから、純文学ってよりエンタメ色の強いものとして、直木賞受賞に至ったのかしら。なぜ今のタイミングで本作かっていうと、今度赤目滝の近くまで行くから。

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    2018年10月09日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    「人としてこの世に生まれてきたことには、一切の救いはありません」
    車谷さんが答える、新聞のお悩み相談をまとめたものですが、とても面白かったです。
    悩みの相談に、更に深いところから答えるというような一冊でしたが、読んでいるうちに心が落ち着いてきました。
    悩み相談の解決にはなってないよなぁ…と思いますが、仏教の教えもあり、穏やかな気持ちです。
    生きていれば悩み苦しみは尽きないですが、人生そんなものだそう。生きます。

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    2018年07月19日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    2015年に69歳で逝去した車谷長吉が、朝日新聞で連載していた人生相談をまとめた一冊。

    とはいうものの極めてアクの強い作風を持ち、「人生が破綻していく最中でも人間は甘美を感じることができる」という人生観を持つ著者のことであり、一般的な人生相談からはあまりにかけ離れている。

    例えば夫の浮気を知りながら世間体を気にする余りに身動きが取れなくなっている女性に対する助言はこのように語られる。これが真理だとしても、なかなかここまでストレートにアドバイスをできる人間はこの世にはいないだろう。

    「自分の世間体など捨ててしまえばよいのです。恥をかいて、醜態をさらせばいいのです。道の真ん中で、夫とその女に

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    2018年07月08日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    三重県の赤目四十八瀧を、わけあり男女が死ぬ場所を探してさすらう話かと思って読んだのですが、全然違いました。

    主人公の生島与一は、もともと東京の会社員だったのだが、彼女と別れたことをきっかけに会社を辞め、流れ流れて今は尼崎のぼろアパートで、モツを串に指して日銭を稼ぐ暮らしをしている。

    やけになっているわけではない。
    何かが決定的に欠落してしまったのだろう。
    同じアパートに暮らすわけありの人々に、心ならずも関わり合いになりながら、やはり主体性なく流されていく主人公。

    テレビも電話もなく、所持品と言えば風呂敷に包んだ2冊のノオトと万年筆にインク壺くらい。
    鍵のかからないアパートの部屋で、日がな

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    2017年12月04日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    社会の底辺から見える情景をここまでビビッドに活写した小説もなかなか無い。この主人公の生き様をヘタレと断ずるのは容易い。しかし底辺だからこそ、死を背中に感じているからこそ、できる恋愛もある。この本は今までで五指に入る恋愛小説だと思っている。

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    2017年11月26日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    新聞に連載されていたらしい、人生相談の文庫化。
    最近は新聞を取っていないので、そのようなコーナーがまだあることにまず驚く。
    昔は興味深く読んだものだけど。

    しかし、ふと思った…
    本当に一般人の投稿なのか?
    それにしては文体が統一されすぎている気がしないでもないが、本当だと信じるとして。

    車谷氏は、それぞれのお悩みにつき、ある時は毒舌でもって切り捨て、ある時は真摯に相談に乗っているように見せかけながらも、韜晦しているのでは?と思わせる。
    その回答は一見、「言ってること違うじゃない!」という感じなのだが、実は「言いたい事」は全部同じなのかもしれない。

    「あなたより救われない人がいます」
    「人

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    2016年12月04日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    ネタバレ

    東京でのサラリーマン生活が長続きせず、故郷には帰れない生島は流れ着くように、アマ(尼崎)の狭いアパートで焼肉屋で出される臓物を串に刺しながら、裏社会の入り口に身をおいていた。
    飽きもせずに暑いアパートの一室で黙々と臓物を串に刺しながら、同じアパートに住む彫眉さんとその愛人アヤさんと関わりを持ち接近し、いつしかアヤさんと心中に突き進んで行く。
    社会の底辺に生きる人々を描き出す車谷長吉の文章を楽しませてもらえた。

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    2016年03月15日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    2015年最後に読んだ本。著者の車谷長吉さんが2015年に亡くなったから年内に、と思って。(誤嚥性の窒息が死因だったとかでけっこうショッキングだった)
    直木賞受賞作。この映画で寺島しのぶが賞を総なめしたイメージが強い。

    33歳の生島は、歩んでいたエリート街道を外れて底辺の生活へと身を落とす。尼崎にあるアパートの一室で、病気で死んだ牛や豚の臓物を串に刺し続けるという仕事にありつく。
    向かいの部屋からは彫眉という男が女たちに刺青を彫る苦痛の声が漏れてくる。
    階下の部屋には彫眉の情婦で妙に艶かしい女・アヤ子が住み、生島は密かに心惹かれていたのだが、ある日アヤ子が突然部屋を訪れたことから、事態は動き

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    2016年01月15日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    ずっと読みたいと思っていたこの本。
    ラストは妙に感動した。アヤちゃんは、主人公は、このあとどういう人生を歩むんだろう。
    文章から伝わる退廃的な雰囲気がなんとも言えない良さ。

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    2015年10月05日
  • 赤目四十八瀧心中未遂

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    ひりひりするような文章を、もっと読みたくなる。

    かつて読んだことがありましたが、また私の年齢環境想いも違って、新鮮に楽しめました。

    最後まで読み進め、瀧での放浪、その後の泥まみれの映像だけ、自分の脳裏に当時しっかりと焼き付けていたようで、そのシーンにあたるところでそうだーそうだ、これだとぴたりとあてはまりました。

    見てはいないのだけれど、どうしても、映画、寺島しのぶ、というイメージに引っ張られてしまう面は否めない。

    あれ、アヤちゃんだったのか、いやそれともこの赫毛の女なのか?と思い読み進め、ああアヤちゃんなのか、と合点の行く始末。

    ちなみに他の出演者は誰だったのさと気になって調べてみ

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    2015年09月22日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    まあ、おかしな人生相談であります。相談するほうも何かまともな答えは期待していない風でもあり、基本誰も救われていないのだけれど、なんだか気分はよくなるのですね。父が女性の下着を隠し持っている、という娘からの相談に、申し訳ないけれど笑いました。

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    2014年03月13日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    何かね、人生相談いうより、人生両断という感じで。どこか辛口、でも、救いの真実の言葉が心地よい。新しい感覚の癒され感覚であった。

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    2013年07月18日
  • 車谷長吉の人生相談 人生の救い

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    もー車谷長吉すばらしすぎる。。。人畜無害なタイトルと装丁がかえって凶悪なこの劇薬毒薬感。救いなんてどこにもない。
    話題になった女生徒に恋した高校教師の相談ももちろん収録。これは何度読んでも傑作。(知らない人はググって読むべし)

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    2013年02月09日