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東京から流れつき、どこに行くあてもない「私」は日の当たらない蒸し暑いアパートの一室でモツを串に刺し続けた。向いの部屋に住む女の背中一面には、極楽の鳥、迦陵頻伽(カリョウビンガ)の刺青があった。ある日、女は私の部屋の戸を開けた。「うちを連れて逃げてッ」──。圧倒的なストーリーの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。直木賞受賞で文壇を騒然とさせた話題作。寺島しのぶ主演の映画化も、日本映画大賞など数々の賞を受賞。
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Posted by ブクログ
異質な作品。 作者は暗くある種陰惨な私小説をキャリアとしていて、本作品もベースは世捨て人の作者自身を投影した様な一人称視点。 にも関わらず、本作品の直木賞受賞には納得をしてしまう寓話性があり、作品が締まった瞬間物語の世界から弾き出された様な寂しさを感じた。 特に女性とのさもしい縺れた恋情を描くのが...続きを読む巧すぎる。
日常を虚で湿った目線でかすめる言葉たちとなにかの起きていることはわかるがなにが起きているのかはわからない感覚とがまじりあって神話的な雰囲気を醸成している。ただ二十四節で終わってほしかった。釣れない釣りを続けるひとたち好きだった。
社会の底辺で生きる人達と、そこに身を置かざるを得なくなった主人公の話。 文章が面白過ぎて、全然好きな題材じゃないのに怖い物見たさもあり一気に読んでしまった。 主人公が「生きる世界が違う」と体良く追い出され更に女の後を追いかけて彼の地を離れるまでの冒険譚のような話だった。
上手い。文章が、ストーリーが、人間描写が驚くほど上手い。地下鉄神楽坂駅の伝言板に始まるあっち側とこっち側を意識させる世界観。会社を辞めてアパートの一室でモツを串に刺し続ける「私」。背中に迦陵頻伽の刺青のある隣室の女がある日「うちを連れて逃げてッ」ーこの目に見えない境界線は何なんだろう。そして本当にそ...続きを読むこに境界線はあるのだろうか。何がそれを作るのだろう。さらにあっち側にも魅力が垣間見える。近所の焼鳥屋が肉を串に刺し続ける仕事、時給1200円と聞いて、それは違うと思った。
近鉄の駅に夏になると貼られる赤目四十八瀧の観光ポスター。毎回気になるのだけれど、旅慣れた京都でも奈良でも大阪でもなさそうな場所で、なんとなくふわふわした「いつか…」のままちょっと心の奥にしまってある現実感のないところ。そこがタイトルだったので手にした本。 久しぶりにこれだけ黒いマグマのような力のあ...続きを読むる小説を読みました。 尼崎・やくざ・刺青といった好みのジャンルではなかったけれど、ドロドロとした臓物までさらけ出すように刹那的に底辺を生きる登場人物たちの描写から感じるものが色々ありました。それは感動とかそういうものではなくて、リアルにこういう世界に生きている人たちもいるのだろう、とにかく自分も今日を踏ん張って生きて、少しでも今の場所から這い上がらなければ…という生へのリアルさでした。 それには自分はここまで落ちてはいないという安心感もある。そして立ち止まり過ぎていたら、ここに落ちてしまうかも…という不安でもある。 日常で使う「しかし」という字は「併し」って書くことも知りました。 短めの小説だし、また疲れたら読んでみよう。
赤目四十八瀧というのは、三重県名張市の近くにある有名な観光地である。といっても、近くにいながら僕は一度も訪れたことがない。一度は行ってみたいと思っていたが、この作品を読んだら行く気が失せた。それは何故かと問われても説明がうまくできないのだが、背中からぞくぞくするような寂寥感が迫ってくる描写に、妙に不...続きを読む吉な臭いを連想し困ってしまった。 作品の中に、主人公の生島とアヤちゃんが、死に場所を探しながら滝壷を覗き込むシーンがある。これが何とも切ない。最終のバスに乗り遅れて、バス停で呆然と佇むような感覚とでも言おうか、次に何をしたらいいのか分からないもどかしさを感じるのである。 夕闇が迫るとともに観光客の姿もなくなった連瀑を覗き込み、「死ぬことについての意味など何もない」と思いながら、成り行きに任せて心中を決心していく主人公の姿が悲しい。安定した会社勤めを簡単に辞めて、隠れるように移り住んだ薄暗いアパートの一室で、臓物にひたすら串を刺していく毎日。欲もなく、自分を追いつめるように空気の如く生きる生島の姿は、まるで修験者のようでもある。凡庸と欲望に凝り固まった自分には生島の生き方は到底理解できない。“流される”と表現するのが一番合っているような気がするが、ただひたすら流され続ける生島の生き方は、人間を捨てた仮の姿であり、無欲が成せる崇高な姿ではない。魂を抜かれた“抜け殻”と表現するのが合っている。 作品の中で、生島が姫路に生まれ、小説を書いていたというエピソードが出てくるが、このあたりのあらすじは著者の過去を彷彿とさせるものがあり、自らの体験がベースになっている作品と言えるのかもしれない。関西の下町を舞台に、陰をもった人々の暗さをたっぷりと書き込んでいる筆致は、著者の分身とも言えなくもない主人公の生島の育ちの良さを時折垣間見せながら、まるで梅雨空から抜け出せないような暗い関西弁のイントネーションを使って、隠花植物のように暗さに溶け込まさせる。育ちの良さが発する輝きを無理矢理に封じ込めるという絶妙なバランス感覚をうまく表現し、著者独特のシュールな世界を作り出すことに成功している作品であった。
文体が古臭くて湿っぽくてクセがあって、読みやすいわけではないけど、何となく引き込まれる。主人公やアヤちゃんがどういういきさつで今の生活に至っているのか、あまり触れていないことが興味を引き立たせる。主人公が最終的には普通の生活に戻ったということにさらにびっくり。
選んでここにきた主人公と、ここでしか生きられない人との対比が生々しく、歴然としている。そしてそこがこの作品の面白さだと感じます。暗くて救いようがないのに、どこかあっけらかんとしている。映画を見たときは幼くて全く理解できなかったけど、リトライの思いで本作を手に取って良かった!かなり好きな作品です。
自由人の人生は、ひやかし人の人生といえよう 生来の自己評価の低さや それを補うための実存主義的冒険主義 そういったものに根差した鼻つまみ者の悲しみが 自由人にもあるけれど 大学まで出させてもらっておきながら 今は鶏肉を串に刺して生きている、そんな生き方は 単に易きに流れる人のだらしなさとすら見てもら...続きを読むえない 底辺に生きる人々の仲間づらして その実、精神的には上から覗き見している偽善者、ひやかし者 そう思われても仕方がないのだった そういう、他人の冷ややかな目線にさらされることが かえって安らぎに思えるというならば 彼は、そう、マゾヒストである 尼崎でのやくざな生活にだんだんなじんでいく主人公を やがて周囲の人々は 心配混じりの親しみで遇するようになるのだが しかし所詮は、綱渡りで生きている人々の群れであり その終焉もあっけなくおとずれる 兄の不始末のカタで、人身売買にかけられた女は 自由に一瞬の夢を見たか 主人公を誘ってあてのない逃避行に出るのだった
冥い底辺に蠢く人々を圧倒的な筆力で描いた作品。 内容も文体もまったく違うけど、開高健の「日本三文オペラ」(ちょっとスカッと抜けすぎてるか)や「ロビンソンの末裔」(うん、こっちの方が近い)、中上健二(作品はうろ覚えだけど)などを思わせる雰囲気があります。 虚無でありながら、日も差込まぬ暑い部屋でひたす...続きを読むら串を打ち続ける「私」。無関心のようで気を使ってくれる口の悪い焼き鳥屋の女主人。口もきかず、ただ毎朝夕に肉を配達する男。不気味な恐怖感を奏でる刺青師。そしてその愛人らしき美人。たむろするくすぶり(下っ端ヤクザ)達。登場人物は多彩で、それぞれが見事な造形です。 ただ単に描いたと言うより、重い情念が書かせたという感じがする作品です。 いや、読み応えが有りました。
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