満園真木のレビュー一覧
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ものまね師事件が解決して数カ月、ジャズのもとをニューヨーク市警の刑事が訪れた。
この小説は設定が変わっている。主人公ジャズの父親は、21世紀最悪の連続殺人犯であるビリー。彼に施されたのは殺人者としての英才教育であり、ビリーはジャズを溺愛していた。そして、何より自分を超える殺人者、シリアルキラーになってくれることを望んだ。そんな家庭環境のもと、成長したジャズ。シリアルキラーの片鱗を見せていてもおかしくないのに、ジャズは正しく成長する。この設定の時点で、かなり特質だと思います。
ジャズは正しく成長するといっても、本来人間が備えている恐怖への怯えをしっかりと覚えているという点が、葛藤や苦悩を -
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主人公ジャスパー(ジャズ)・デントの父であり、稀代の凶悪連続殺人犯であるビリー・デントの脱獄で幕を閉じた前作から二ヶ月後。
「殺人者を狩る」存在になろうと決意したジャズのもとを、ニューヨーク市警の刑事が訪れ、同市で暗躍する連続殺人鬼「ハット・ドッグ・キラー」の捜査への協力を求めます。
馴染み深い田舎町ロボズ・ノッドから遠く離れた大都会で、ジャズは捜査に加わるのですが…
残虐さと狡猾さを増す連続殺人鬼との対決に加え、ビリーがこの事件にも関係しているようなエピソードが随所に挿入され、緊迫感を煽ります。
また、ロボズ・ノッドに残ったガールフレンドのコニーや親友ハウイーも別の謎を解き明かそうと、時 -
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設定にひねりのあるミステリ。探偵役が解剖学を学ぶアスペルガー症候群の青年なのだ。解説で香山リカさんが書いているとおり、現在では専門家はアスペルガーというくくり方はしないようだが、やはりこのとらえ方にはインパクトがあり、また、なるほどと腑に落ちる所もある。その「普通ではない」感覚の持ち主である主人公が、共感を誘うように描かれていて、知らず知らず肩入れして読み進めていくことになる所が、うまいなあと思った。
決して爽やかな読み心地ではない。どうしても周囲と軋轢を生じてしまう主人公パトリックの孤独や、その母の苦悩がえぐり出すように書かれる。また、犯罪の舞台となる病棟で、昏睡状態にある患者の絶望的な苦 -
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ネタバレアスペルガー症候群の主人公が、解剖学実習で出会った献体が、殺人により死んだのではないかという疑問を抱き、その謎を一風変わった手法で解いてゆく物語。
前半は、昏睡状態から目覚めた男の長い独白や、解剖の微細な描写が続くけれど、解剖体の男の正体が分かってからの、ある人物との息詰まる攻防戦や、パトリックのあまりに冒険的な(無謀な、とも言える)行動にハラハラし、残り数十ページは一気に読みました。
ブラックジョークや伏線も効いていて、ミセス・ディールの謎、パトリックの父の死の真相も、「ここらで大団円かな」と思える頃にポンと出てきて、本編よりも更にびっくりさせられました。
海外の本格ミステリ -
Posted by ブクログ
三部作の『ブラックランズ』『ダークサイド』『ハンティング』の出来が非常に良かったので、この最新作も読んでみた。
アスペルガー症候群のため人とのコミュニケーションが苦手のパトリックは、父親の事故死をきっかけに死に取り憑かれる。医大で解剖学を学び始めたパトリックが抱いた疑念とは…
いわゆるイヤミスのような味わいの作品であり、三部作に比べると少し物足りなさを感じた。
タイトルの『ラバーネッカー』とは、ゴムのように首を伸ばした人という意味で、転じて、むやみに見る人、物見高い人という意味らしい。つまり、タイトルはそのままズバリ、パトリックを示しているようだ。 -
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Posted by ブクログ
これは、北朝鮮から生きるために脱北したパク・ヨンミの自著伝だ。勇気を出して自分や母の経験した壮絶な脱北行を。
脱北前後の長い旅のあいだには、人間が人間にこれほどおそろしいことができるのかと思うようなことも目撃してきた。そのいっぽうで、およそ考えうる最悪の状況においても、人がやさしさや親切さや犠牲心を発揮するのも見てきた。人が生きのびるために人間性の一部を失うことがあるのも知っている。と同時に、人間の尊厳という火が完全に消えることはないのも知っている。
自由という酸素と愛の力があれば、その火がふたたび燃えあがることも。
これは、著者自身が生きるためにした選択の物語だ
身分を表す出身成分は三つ