橋本健二のレビュー一覧
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社会階層についての著書が多い橋本先生による、統計から見た「アンダークラス」の説明本。
SSM調査を中心とした各種統計から、非正規労働者の置かれている境遇を分析し、いろいろな角度から解説を試みている。
ところが、誠実に分析した結果、「アンダークラス」とひとくくりにするのは難しい、というのが現時点での総括になってしまう。
かろうじて、誰しも「アンダークラス」に転落するかもしれない、という論理でつなぎとめるが、当然それだけで一つの結論を導くわけにもいかず筆も拡散気味。
そこで、首都圏に住む「アンダークラス」層のエスノグラフィー8例の記述を挟み、所属階層と政治態度の関連についての分析から、新たな政 -
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なんとも気の重くなる本であるがもう直視せざるを得ない。
「アンダークラス」の現状と真実。身長や体重にまで差が出てきているとはまるで産業革命期のイギリスを彷彿させる。日本はここまで来たのかとため息が出た。
著者は最左派の社会学者だと常々注目していたが、精密なデータを駆使した「アンダークラス」分析は、もはや警鐘というよりも事実確認だ。誰の目にも見えるレベルになったということだろう。
本書では「処方箋」も提示されてはいるが、政策としての実行は極めて困難だろうと思えた。
社会学の本として本書を高く評価するが、同時に真実とは苦いものであるとも痛感した。 -
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自己責任論
僕は否定しません。
チャンスが平等に与えられるなら結果の平等は危険と考えます。
でもAI化が進んでいくと過渡期に大失業時代が来てしまうんですよねσ^_^;
産業革命で労働者が仕事を奪われたとき壮年期にホワイトカラーへの再就職先があったか考えれば自明なことですσ^_^;
本書では
資本家階級
新中間階級(管理職等)
労働者階級に
旧中間階級(自営業者等)
の4階級から
労働者階級の下に
アンダークラスがあるとときます。
アンダークラスはいわゆる非正規雇用等です。
これを見ると労働者階級は管理職登用の芽がありますがアンダークラスに無いと言えます。
資本が無ければ旧中間階級にも移れない -
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現代日本社会の階級を六種類に分けて、さまざまな調査データを紹介していく。
六種類というのは、資本家、新中間階級、旧中間階級、正規労働者階級、パート主婦、アンダークラス、の六つである。
平たく説明すると、新中間階級は管理職や専門職であり、旧中間階級は自営業者である。正規労働者階級は正規雇用だが平社員、アンダークラスは非正規雇用者である。
本書では主にアンダークラスについて、特に詳しく触れられることが多い。これはきわめて現代的な(とはいえ本書によると80年代以降の現象なのだが)事象だからである。
なお、アンダークラスの出現は先進国において起きていることであり、「アンダークラス」という呼称は英米 -
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なんとなく格差拡大は進んでいると思っていたけど、具体的にどういう状況になっているんだろうと興味が湧いて手に取った。
たくさんのアンケートデータで格差があることがはっきり示されていて、アンダークラスの人たちが生活において命や幸せに関わるレベルで切羽詰まっていることを知った。そしてこの格差は他人事じゃなくて、別の階層の人間にも不利益があるという指摘も印象的だった。
ただ、それ以上に驚いたのは自分自身のことだった。読み進めていくうちに、自分が無意識に「努力は報われるべき」とか「頑張ってこなかったら貧困でも仕方ない」みたいなことを思っていたことに気づいて、正直怖くなった。
冷静に考えれば、自分が -
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本書は、大規模調査データを元に、日本に住む人を5つの階級に分けて、それぞれがどのような傾向にあるかをまとめている。
複数のデータを組み合わせることにより、その階級に属する人はどんな人達なのかを多面的に見ることができるのが一つの特色と感じた。
また格差是正には政治との関わりが不可欠ということで、階級と政治との関わりもまとまっている。 支援の必要な層が政治に無関心で、結果支援を受けられないという現実がある一方、与党、野党の掲げることが国民の求めることと一致しにくいという点は、個人的に納得感を感じた。
この点が変わってくると、政治への向き方というのも変わっていくのかもしれない。 -
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最初は、格差の固定の話かと思ったら、そうではなくて、アンダークラスの生活が悲惨という話と、男女間の格差の話になり、コロナの影響の話が続き、最後には、政党ごとの支持者の傾向と格差の関係を持ち出し、自民党は、所得再配分については、野党主流派とそう変わらないのに、一部の新自由主義者を取り込むために、政策が右傾化しているという。そして、新自由主義者を集める別の政党が出てくれば、最右翼は自民党を離れてそちらに行くので、自民党は、逆にリベラル陣営との協調をしやすくなるだろうと予測している。
この本が出たあとの、2015年7月の参院選では、現実に、参政党などの新自由主義政党が躍進したので、この著者の予測が正 -
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格差社会の形成が1970年代から始まっていた等、ジニ係数の推移からデータに基づいて説明があり説得力がある。一億総中流の古き良き時代の幻想は勘違いだったとの主張は面白い。たしかに設問方法が3段階なら中流と答えるし、過去の比べて暮らし向きが良くなったら中流と思えるし、他国のアンケートでも中流が多くて日本だけが中流と思う人が多かったわけではないという証拠をつきつけられると、うならざるを得ない。他国や他人の生活を知らなければNepalが幸福の国と信じていたネパール人と同じだね!
中間階級を資本家階級でも労働者階級でもない層と分類して、独立自営の旧中間階級とホワイトカラーの新中間階級に分ける。労働者階級 -
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自分の暮らす社会の現状は、大雑把でもいいので把握しておきたいものだ。その点で本書は、格差拡大の現状分析、各階層の意識を知る良いきっかけを与えてくれる。
「格差拡大は社会に対して多くの弊害をもたらす」
自由競争の社会で自らの弛みない努力の結果、富を得ることは良くないことなのか?
過度な競争主義は徒に格差拡大を加速させるのか?
社会はどうあればよいのか?
考えることが沢山ありそうだ。
本書は、日本社会における階級構造の固定化と格差の拡大を、独自の調査データ(東京、名古屋、大阪の20から69歳の住民約4万人)をもとに明らかにし、日本の社会がどのような方向に進むべきかを問いかける。
この調査デー -
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何かで紹介されていた。
東京23区の各区を住民の学歴や収入、就労している業種などで比較して、分析するという内容。
確かに区によって雰囲気や物価が違うし、住宅にかかるお金も違う。でもそこまで区による違いがあるだろうか?と思う。
学歴や将来の収入は、どの区の出身か?ということよりも、本人の意思や、両親の経済力や考え方で決まってくると思う。大人になってからどこに住むかは個人の価値観だと思う。
周辺区は収入が低く、都心区は収入が高い傾向はあると思うが、それが区の価値を決めるわけでもないのに、底辺や頂点などと序列をつけていて、自分自身は周辺区、都心区のいずれの出身でも在住でもないが不愉快に感じた。 -
Posted by ブクログ
興味深い内容ではあったけど、表面を撫でて終わっちゃったなーという感じ。特に一般的な読者にとっては各区の分析が本書のキモだと思うので、そこにページを割いてもらいたかった。港区の意外な一面とか、杉並区内においても所得格差に西高東低が見られるとか、もっとセンセーショナルにぶち上げてもいいじゃん。ダメ?そしてそのあたり深掘りしたらいいじゃん。
下町と山の手の混淆という解決策も曖昧で、具体的にどうするの?って感じ。著者からすると新中産階級が下町に降りてきて混淆が進んでるのよね?よりフラット化することにならない?そうであるにもかかわらず格差は依然解消されていないように思われるけど。
とはいえ面白かったので