あらすじ
「中流幻想」ははるか彼方の過去の夢。1980年前後に始まった日本社会の格差拡大は、もはや後戻りができないまでに固定化され、いまや「新しい階級社会」が成立した。前著『新・日本の階級社会』により、日本社会の実態を客観的な調査データに基づいて明らかにしてみせた著者が、2022年の新たな調査を元に提示する衝撃の第2弾。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
とりあえず、大事だと思ったのは女性が正規雇用を維持しながら出産することはない難しいこと。いじめや不登校の経験者がアンダークラスになりやすいこと。アンダークラスの人々が格差を是正してほしいと思っているとは限らないこと。自分は小さい頃、学校嫌いだったためいじめや不登校と経済的なリスクの関係性は身につまされた。
Posted by ブクログ
前著に続き、2022年三大都市圏調査から階級分析。
・階級を5つに分類
資本家階級:従業員5人以上の経営者・役員 250万3.9%
新中間階級:専門職・管理職・正規雇用事務職2051万32.1
正規労働者階級:販売・サービス・製造・建設等新中間階級以外の正規雇用労働者 1753万人 27.4%
旧中間階級:自営業者・家族従業者 658万人10.3%
アンダークラス:パート主婦以外の非正規雇用労働者 890万人 13.9%
その他:失業者・無業者 273万人 パート主婦788万人
・マルクス史観による資本主義による階級構造の変遷を述べ、フォーディズム資本主義・福祉国家から1970年代から90年ごろに、フレクシ=グローバル資本主義・新受有主義国家に転換し、その中で労働者階級が正規雇用者と非正規雇用のアンダークラスに分解し、アンダークラスの賃金はもはや再生産可能コストを割り、社会の持続可能性に赤信号。再生産不能者は江戸時代には減少し、残存した名子、京阪・江戸の都市下層民だけだったのだが。
・政治意識によるクラスター分析結果
①リベラル(26.4%)再分配支持・憲法擁護・排外的でない・中道革新野党
②伝統保守(21.0%)再分配支持・憲法改正・やや排外的・自民党
③平和主義(20.9%)再分配あまり支持しない・憲法を強く擁護・無党派
④無関心(18.5%)まったく排外的でないが他不明確・無党派
⑤新自由主義右翼(13.2%)反再分配・憲法改正・顕著な排外主義・自民党・維新
・新自由主義右翼は、男性・高所得・資産・高学歴。資本家にやや多くアンダークラスにやや少ないが、広く分布。
Posted by ブクログ
アンダークラスの転職理由は現職への不適合が多い。
新自由主義右翼は高学歴、高収入の男性がメイン。
リベラルが多数で次が伝統保守、新自由主義右翼は少数。
Posted by ブクログ
橋本健二氏による新しい階級社会論。アンダークラスの存在を明確に定義し、日本が格差社会に陥っていることに問題提起するとともに、本来少数派であるはずの新自由主義右翼に政策的な主導権を握られてきた15年程度の期間にその傾向が強化されたとする。
本書のリーチは昨年2024年の衆議院議員選挙までで今年2025年夏の参政党の躍進は視野に入っていないけれど、去年の傾向が明示的に示されたのが今年の参議院選挙とすれば概ねその端緒は示されていると言えるだろう。すなわち、石破政権によるリベラル・伝統的保守へのシフトにより安倍政権以来の岩盤右翼層が離れ、保守党・参政党へシフトした結果、自民党が過半数割れに追い込まれたとする。加えて、本来リベラル色の強い公明党が連立政権にいたため、自民党が新自由主義右翼へシフトしたという分析は興味深く、この20年以上続く自公政権の功罪を考える際にも重要な観点だろう。
一方で、新自由主義右翼の解像度はそこまで上がっていないように思われる。本書は資本家階級、新中間層、正社員、アンダークラス、旧中間階層とするが、資本家階級でやや新自由主義右翼が多いとはいえ、各層に散っている。このクラスターが上手く政治思想を捉えられていないことを示しているように思えるのだがどうか。追加的な論考が待たれる。
Posted by ブクログ
かつて「一億総中流」と言われた日本社会。その幻想が静かに崩れ落ちた今、私たちはどのような現実に直面しているのか――。本書『新しい階級社会』は、この問いにデータと構造分析を通して真正面から答えようとする力作です。
著者は、現代の日本社会を五つの階層に分類しています。企業の経営者などの資本家階級、農業や自営業を営む旧中産階級、企業内の専門職や管理職を中心とした新中産階級、そして現場で働く正規雇用の労働者階級、さらにその下に位置づけられる非正規雇用の「アンダークラス」。こうした階層のすみ分けは、単なるラベルにとどまらず、収入や雇用の安定性、社会参加の度合いといったさまざまな指標によって、きわめて明確に分断されつつあることが、本書を通じて浮かび上がってきます。
なかでも本書が丁寧に描き出しているのが、「アンダークラス」に分類される人々の現実です。非正規雇用として不安定な立場に置かれ、十分な賃金や保障を得られない人たちは、自己責任論では語りきれない社会的な困難を抱えています。著者の視点は、そうした人々に対して決して冷淡ではなく、むしろ「どうしてこのような立場に追いやられてしまったのか」を、社会構造の側から理解しようとする、温かく誠実なまなざしに満ちています。
一方で、このような階級分化を後押ししてきた大企業のふるまいに対しては、厳しい視線が向けられています。短期的な利益を優先するあまり、正規雇用を減らし、非正規雇用の拡大を進めてきた結果、アンダークラスを増加させてしまった。その帰結として、日本社会の中で分断や貧困が固定化されつつあることに、私たちはもっと目を向ける必要があります。本書は、こうした企業行動の問題点を静かに、しかし明確に指摘しています。
ただし、希望がまったくないわけではありません。本書の終盤では、「現在の格差はあまりにも大きすぎる」という点で、社会の中に一定の合意が生まれつつあることが示されています。これは、分断の現実を直視した上で、私たちがどのような社会を望むのかを考える出発点となるでしょう。例えば、大企業に対する規制強化や、最低賃金の引き上げ、正規雇用の拡充といった政策的なアプローチも、もはや避けては通れない議論です。
『新しい階級社会』は、今の日本で何が起きているのかを理解するための重要な一冊です。特に、声を上げにくい立場にいる人々の現実に目を向けたい人にとって、本書は多くの示唆を与えてくれることでしょう。格差の背後にある構造を知り、共に変えていく道を探るための第一歩として、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
Posted by ブクログ
最後の章は、格差と政治についての話だった。
政治は経済と大きく紐づいていることを認識できた。
ただ、知識不足により理解が追いつかなかったため、まずは政治の基礎知識を学びたいなと思った。
Posted by ブクログ
データの分析が中心。
社会を資本家階級、新中間階級、正規労働者階級、アンダークラス、旧中間階級に分け、それぞれの特色とどのような格差があるのかを分析する。
後半は支持政党の話などもあり、格差是正に向けた政治への提言という感じ。自分がどの階級かを捉えてから読むと面白い。アンダークラス(雇用が安定せず低所得な層)が増えると、社会のあらゆる生産・再生産が停滞するという話は納得がいった。
Posted by ブクログ
現代日本社会の階級を六種類に分けて、さまざまな調査データを紹介していく。
六種類というのは、資本家、新中間階級、旧中間階級、正規労働者階級、パート主婦、アンダークラス、の六つである。
平たく説明すると、新中間階級は管理職や専門職であり、旧中間階級は自営業者である。正規労働者階級は正規雇用だが平社員、アンダークラスは非正規雇用者である。
本書では主にアンダークラスについて、特に詳しく触れられることが多い。これはきわめて現代的な(とはいえ本書によると80年代以降の現象なのだが)事象だからである。
なお、アンダークラスの出現は先進国において起きていることであり、「アンダークラス」という呼称は英米で使われているらしい。国によっては差別的なニュアンスがまとわりつくことを回避するために、もっとマイルドな呼称がされているらしいが、本書では単刀直入でイメージしやすい、という理由で「アンダークラス」を使っている。
本書の調査結果自体に驚くようなものはないと思う。おそらく、上に挙げた階級への直感的な印象を裏付ける以上の意味はない。
本書のメッセージとして重要な点は、格差の拡大は議論の余地なく問題である、という点だろう。
現代の資本主義においてアンダークラスの人材は必要である。契約社員やアルバイトがいないと成り立たない会社など、誰でもいくらでも思いつくだろう。
しかしアンダークラスは再生産されない。再生産されない、というのは結婚ができない=子どもを持てない、という意味である。なぜならアンダークラスへの賃金にそんな余裕はないからだ。
ということは、アンダークラスの人材は他の階級の子どもから補充するしかないのである。つまりアンダークラスはすべての階級において他人事ではない、ということだ。
ちなみに本書内でも調査されているが、Aの階級の親ならAの階級の子になりやすい、というのは部分的な事実である。階級の移動はそれなりに起こる。
本書内で、この本の読者は新中間階級が主だろうといったことが書いてある。たぶんそうなんだろう。しかし、アンダークラスも他人事ではないことが本書を読めばわかると思う。
Posted by ブクログ
なんとなく格差拡大は進んでいると思っていたけど、具体的にどういう状況になっているんだろうと興味が湧いて手に取った。
たくさんのアンケートデータで格差があることがはっきり示されていて、アンダークラスの人たちが生活において命や幸せに関わるレベルで切羽詰まっていることを知った。そしてこの格差は他人事じゃなくて、別の階層の人間にも不利益があるという指摘も印象的だった。
ただ、それ以上に驚いたのは自分自身のことだった。読み進めていくうちに、自分が無意識に「努力は報われるべき」とか「頑張ってこなかったら貧困でも仕方ない」みたいなことを思っていたことに気づいて、正直怖くなった。
冷静に考えれば、自分が今の地位を築けたのは、ある程度の生活ができている両親に育てられて、教育を大事に思っている母親がいたからだと思う。「努力できる環境」があったこと自体が、すでに恵まれていることを認識できた。
本を読み終わって一番大きかったのは、政治にどう参加するかというか、どういう目で政党を選ぶかっていう視点が増えたこと。自分の利益だけじゃなくて、社会全体としていい方を選ぶっていう目線を持てるようになった気がする。
ちょっと数字やグラフが多くて読むのは大変だったけど、読んでよかったと思う。
Posted by ブクログ
本書は、大規模調査データを元に、日本に住む人を5つの階級に分けて、それぞれがどのような傾向にあるかをまとめている。
複数のデータを組み合わせることにより、その階級に属する人はどんな人達なのかを多面的に見ることができるのが一つの特色と感じた。
また格差是正には政治との関わりが不可欠ということで、階級と政治との関わりもまとまっている。 支援の必要な層が政治に無関心で、結果支援を受けられないという現実がある一方、与党、野党の掲げることが国民の求めることと一致しにくいという点は、個人的に納得感を感じた。
この点が変わってくると、政治への向き方というのも変わっていくのかもしれない。
Posted by ブクログ
現在の日本の階級社会についてまとめた本。
今まであまり気にしていなかった部分を統計データを使って説明されており、色んな見方があるんだと気付くことが出来た。
にしても資本主義って中々残酷な世界だと思う。
Posted by ブクログ
最初は、格差の固定の話かと思ったら、そうではなくて、アンダークラスの生活が悲惨という話と、男女間の格差の話になり、コロナの影響の話が続き、最後には、政党ごとの支持者の傾向と格差の関係を持ち出し、自民党は、所得再配分については、野党主流派とそう変わらないのに、一部の新自由主義者を取り込むために、政策が右傾化しているという。そして、新自由主義者を集める別の政党が出てくれば、最右翼は自民党を離れてそちらに行くので、自民党は、逆にリベラル陣営との協調をしやすくなるだろうと予測している。
この本が出たあとの、2015年7月の参院選では、現実に、参政党などの新自由主義政党が躍進したので、この著者の予測が正しければ、自民党は、立憲民主党などとの協調路線に移行するだろうということになるが、果たしてそうなるのか、あるいは逆に、参政党などにより近づく方向に移行するのか、今後の政治の変化が興味深い。
Posted by ブクログ
自分の暮らす社会の現状は、大雑把でもいいので把握しておきたいものだ。その点で本書は、格差拡大の現状分析、各階層の意識を知る良いきっかけを与えてくれる。
「格差拡大は社会に対して多くの弊害をもたらす」
自由競争の社会で自らの弛みない努力の結果、富を得ることは良くないことなのか?
過度な競争主義は徒に格差拡大を加速させるのか?
社会はどうあればよいのか?
考えることが沢山ありそうだ。
本書は、日本社会における階級構造の固定化と格差の拡大を、独自の調査データ(東京、名古屋、大阪の20から69歳の住民約4万人)をもとに明らかにし、日本の社会がどのような方向に進むべきかを問いかける。
この調査データ、質問に対する回答に対し、さまざまな角度から分析している。年収とか金融資産の残高とか自分はどの辺なのかとついつい数字を見て、安心したり、不安になったりする。
やはり人は、悲しいかな同世代の中でどの辺に位置しているのか、とても気になると思う。幸福の度合いは絶対的水準があるのではなく、相対的なもの、つまり、あの人より多い、上だと思う意識何だろうと思ってしまう。(この辺の記載は本文とはあまり関係ない)
格差拡大は多くの社会的弊害がある。貧困層が拡大し、多くくの人が困難な人生を強いられる。教育の格差、そして命の格差が生み出される。社会保障支出は増大し、国家は財政危機に陥る。消費が伸び悩み、景気は低迷する。社会から連帯感が失われ、人々の社会活動への参加が減少し、犯罪が増加する。こして社会が病んでいく…
所得再配分だけでは最終的な問題解決にならない。格差拡大の背景にある階級構造を一変させる必要がある。
ここはやはり政治の力が必要なんだろうな。選挙を前にバラマキ政策だけが横行する現状を鑑みるにやるせない気持ちになるのは僕だけなんだろうか。
失礼ながら日本の政治家の皆さんに是非とも読んでもらいたい1冊。