橋本健二のレビュー一覧
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最初から最後まで本当に面白かった!馴染みがあるのは,生まれた中央区,終の住処と心の中では定めている渋谷区,勤め先だった港区や新宿区あたりだったけど,その他の地域についても,是非街歩きしてみたくなる情報満載でだった!
渋谷区笹塚についての記載は,かつて自身のブログで論じた内容ともかなりの範囲でリンクしていて,「もっと,もっと突っ込んでくれー」と思ったのと,中央区東日本橋の『日本橋なのに下町』的な,やや特殊な地域性について触れていなかったのがちょっと残念…と言うかそんなに細かく書いてたら新書一冊では収まらないか,とも.
ところで,祖父が『さしすせそ』が言えない東京弁話者で,下町要素の色濃い育ち方を -
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「格差と階級」というどちらかと言えば、センセーショナルな題名とはうらはらに、実態データを丹念に分析した、どちらかと言えば、学問的な雰囲気を持った本だ。実際に社会学の研究をベースとして本書は書かれている。
例えば「中央区銀座一丁目」というような単位を、「町丁目」と呼ぶらしいが、その町丁目ごとに色々な統計データを取得し、地図上に、それを色の違いや、白黒のページは印刷の濃さにより一覧性をもったものとして示した地図が多く掲載されている。取得され、本書の中で紹介されているデータとしては、例えば、「世帯年収」「管理職・専門職比率」「大学・大学院卒業者比率」「1世帯あたり人員」「未婚率」「65歳以上比率」な -
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東京23区におけるその街のブランド力や住みたいまちランキングにみられる格差がどのように生じたか、歴史的、地形的な観点からその秘密を掘り起した、意欲的な一冊といえるでしょう。
さまざまな統計データ(年収や職業など)、さらには著者の長年のフィールドワークの成果を駆使して、街ごとの”格差”が示されています。説明の文章に若干のわかりにくさもありますが、たとえば世田谷の持ついわゆる”高級感”、対照的な城東エリアの”下町感”など、世間一般の方々がその街ごとに持っている印象を裏付ける内容でもあり、興味深く読み進めました。
統計データで色分けされた図表(地図)のサイズが小さく、紙面の都合もあるのでやむをえ -
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東京23区内の経済的格差の歴史。下町と山の手がどのように形作られてきたのか。都心3区から今の23区に至る歴史。鉄道の沿線に沿って単身世帯が集中するのは交通の利便性や身軽さがあるから。
ある程度の年収のある世帯は所得再分配は必要ないと考え、そうでない世帯は必要と考える。
23区は様々なステータスの人が住むある種、不思議な空間だなと思います。格差はあっても良いと思いますが、人の行動を阻害したり、軽蔑するものであってはいけないと思う。そういう意味だと、所得の再分配は必要かなと思いますし、回り回って、自分の所に戻ってくるかもしれない。理想論かもしれませんが。 -
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正社員になれず、収入が少なく、多くの困難を抱える。
増大しつつある「アンダークラス」が、今後、日本社会にもたらすであろう問題について説き、警鐘を鳴らす書籍。
バブル崩壊後の1994年から2007年までを「就職氷河期」、この時期に大学卒業を迎えた世代を「就職氷河期世代」と呼ぶ。
今回のコロナ禍で、就職氷河期が再来する可能性がある。
2030年は日本社会の大きな曲がり角になりそうだ。次の2つの理由で、日本社会の構造転換が完成するからである。
①バブル期に登場したフリーター世代が65歳となり、非正規労働者として生涯を送る世代が、現役世代の全体を覆う。
②フリーター世代に続く氷河期世代が40歳代後 -
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2000年代にあった「『格差論争』」に終止符を打った」本ということで読む。
20年経った現時点からわかるのは、確かに、日本社会は「格差社会」に「なった」ということ。その原因は、次の3つに思われる。
1つは、高齢化。2つめは、非正規雇用。3つめは、雇用されている者のなかでの格差拡大(専門職vs労働者)。
これまで、雇用統計の推移から、非熟練層が、自営業から非正規雇用に移っていったのが、この数十年の流れだと思っていた。それは、非熟練層を、経済的に、かなり厳しい状態に追い込む動きになる。
それと、2000以降の企業の利益と労働分配のトレンドは、全体として労働者への分配を減らして、かつ、その中 -
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東京23区に限定して、社会階層とその格差をデータに基づき分析した結果を「格差社会と都市空間」という本をベースにして、一般人にもわかりやすく書いたものであるらしい。
データを地図上で表現したものを豊富に掲載しているので、読むものにはわかりやすいが、東京の地理に詳しくない人にはいまひとつ十分な理解が進まないかもしれない。
23区といっても狭いようで広いので、著者のような街歩きをしていない者には、いろんな地域の歴史も知ることができて、訪れてみたいところも出てくる。
この本を読みながら感じたのは、小泉政権以来、延々と続けられた「グローバリゼーション」というのは、結局のところ、アメリカと同じように金融を -
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サンデルさんの著作を読んで日本の格差の状況を詳しく知りたいと思い購読。格差社会、ワーキングプア、アンダークラスなど、格差を示す単語が広まったのは比較的最近のことで、ちょっと前まで一億総中流とか言ってたなあと思うが、考えてみると、歴史上格差がなかった時代なんてなかったわけで、貴族や武士が実権を握っていた時代は日本版カースト制度がキッチリ決まっていて、武士でなければ切られても文句言えない時代が何百年か続いていた。この伝統的な格差が一気に縮小したのが敗戦。農地開放や財閥解体により資本家層や華族の没落と小作人や女性の地位向上が進展。その後の高度成長で恩恵を受けた国民は多かった。また、階層間流動性も比較
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階層を①資本家階級②新中間階級③正規労働者④アンダークラスに分類する。就職氷河期世代は圧倒的にアンダークラスに属している。アンダークラスは非正規雇用労働者で低賃金に甘んじ、家庭を持たず、社会的に孤立している。氷河期世代内でも「アンダークラス」と「それ以外」と分断が起きている。また、自己責任論を肯定し、格差拡大を是認する者が多いのも氷河期世代の特徴である。氷河期アンダークラスは支持政党もなく投票へも行かないので、その声は政治に反映されることもなく、社会に取り残されている。アンダークラスの増大は大きな社会的コスト増大を意味する。その対策として①賃金格差の是正、②所得の再分配を提案している。特に、累
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「社会学」はどんな主張をしても5年~10年後にはデータが出揃うことによってその主張が正しいかどうかがはっきりしてしまう。本書では多くの社会学者の過去の主張とその変遷まで言及しているから、思わず笑ってしまった。
本書での「1970年代からはじまる格差のトレンド」を鋭く追求する論考は政治家のごとく断定的だが、ここまでデータが揃っていると反論の余地もないと思えた。
過去に、政治家や評論家がさまざまな学者の言説を引用して「格差」の存在を論争していたことを思い起こす。今から振り返ると、誤った認識の下に政策を遂行していた政治家には是非本書を一読してもらいたいものだと思った。
「社会移動」についての考察は身 -
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とても丁寧な本。統計数値を一つずつ確認して日本社会に存在する格差の姿を確認していく姿勢がとても几帳面で信頼感がある。その書き方ゆえに退屈な印象だったり、面白くないと感じるかもしれないが、こういうテーマなので丁寧さは欠かせないと思う。
そういう手順で導かれたのが、
「格差是正ー平和主義ー多文化主義の立場と、格差容認ー軍備重視ー排外主義の立場こそが、論理整合的な左派と右派の立場だと考えられてきたといっていい。」しかし「こうした構図はかなり崩壊している」。
ということだ。
つまり、社会の底辺で格差是正を求めるアンダークラスが、軍備重視・排外主義の傾向を示している。「ファシズムの萌芽?」とも表現さ -
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資本家階級、新中間階級、正規労働者、アンダークラス、旧中間層に区分けして、多くのデータにより日本の就業者の状況を分析している好著だ.旧中間層は戦後間もない時期に最大の割合を占めていた農民層と自営業者層だが激減してきた.問題はアンダークラス 非正規労働者だ.5つの階層は2015年前後でそれぞれ 4.1, 20.6, 35.1, 14.6, 12.9%だ.新中間階級は、穏健保守、自民支持のコアグループ、リベラル派に分けられ、それぞれ 38.8, 14.4, 46.8%だとの分析が面白かった.格差社会の克服には、アンダークラスと新中間階級のリベラル派を結集する新しい政治勢力の形成が必要だとの主張があ
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本書序文の「格差の拡大は1980年代に始まった巨大なトレンド」との指摘は実に重い。「アンダークラス」の出現と存在が誰の目にも明らかになってきた現在、本書の内容を広く世に知らしめるべきとは思うが、加筆した部分が最終章の直近10年分だけとはちょっと不満。
過去の著作の分析が書き直す必要もないほど正しかったという事かもしれないが、著作のほとんどを繰り返し読んだ小生としては物足りない。
本書の最後を悲観的に締めているところも同感出来ない。本書は今後の日本の政策の選択肢として「所得再分配」が大きな政策課題となることを誰の目にも明らかにしてくれている。
おりしも今世界はコロナ禍の真っ只中である。歴史を紐解 -
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各種調査をもとに、日本社会を「資本家階級」「新中産階級」「正規労働者」「アンダークラス」「旧中産階級」の五つの階層にわけて分析している。
階級によって、身長や体重が変わってくるのも意外だった。
(予想どおり、アンダークラスが一番うつ傾向が高い。)
「一般的にいえば、構想に関わる労働は、自らの意思を実現することのできるやりがいのある労働である。これに対して実行のみにかかわる労働は、人の手足となって行う労働であり、労働それ自体に意味を感じることが難しい。マルクスはこのような労働を「阻害された労働」と呼んだ。」
第5章の「女たちの階級社会」は17階層にわけて女性を分類しており、これは分析しづら