社会階層についての著書が多い橋本先生による、統計から見た「アンダークラス」の説明本。
SSM調査を中心とした各種統計から、非正規労働者の置かれている境遇を分析し、いろいろな角度から解説を試みている。
ところが、誠実に分析した結果、「アンダークラス」とひとくくりにするのは難しい、というのが現時点での
...続きを読む総括になってしまう。
かろうじて、誰しも「アンダークラス」に転落するかもしれない、という論理でつなぎとめるが、当然それだけで一つの結論を導くわけにもいかず筆も拡散気味。
そこで、首都圏に住む「アンダークラス」層のエスノグラフィー8例の記述を挟み、所属階層と政治態度の関連についての分析から、新たな政治勢力の台頭の可能性についての話で終える。
「アンダークラス」について、広義の定義と狭義の定義で分けて、狭義のそれを「都市部に住む若年層の非正規労働者」あたりにして、そこに限定して進めたほうが、内容は繋がりやすかったと思うが、それは先生の学問的態度とはずれる、ということなのだろう。
ただ、こちらとしては統計の解説本にしては政治的言説の臭いが濃い、という感想を持ってしまう。
社会的分断をこれ以上進ませないためにも、所得再分配を全面に出しアンダークラスを支持基盤にする政治勢力の形成を、という話だが、これは暗に山本太郎を念頭に置いているような気がする。
そういう意味で、他国と比べて、他の時代と比べて、本当に社会的な分断があるのか、と言った指摘は的はずれなのだろう。
ところで、彼の演説は年々うまくなっていて、凄みが出てきた。
初期の衆院選のころの演説だと、どこに行っても同じセリフまわし。
一通り反原発をぶち上げ、最後にTPPについて言葉だけ触れるという感じで、セリフ覚えは良い、そうか彼は役者だったな、と感じる程度のものだったが、参院選当選後の6年でだいぶパワーアップしている。
相当勉強したんだろう。
言うことはより極端になってきたが、演説にも余裕が感じられ、アドリブでヤジを受け流す度量も出てきた。
昭和恐慌とか青年将校のテロとかそういう歴史の一ページを想起しつつ、より過激な主張が受け入れられやすい土壌は整いつつあるのだな、と。
野党再編が、連合の意向で左右されることからもわかるように、非正規労働者の意見を掬い上げる政治勢力というのは、これまで無かったのは事実で、その受け皿としての山本太郎という構図は別におかしくないのだと再確認。