廣松渉のレビュー一覧
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存在論および認識論について、もっとも基礎的なところから丁寧に整理して話が進められていく。話が原理的なところに遡りすぎていて頭がついていかなくなることもしばしばだが、哲学というのは本来常に原理的(原初的)なところへ立ち戻ろうとする営みだと思うので、がんばって著者の思考についていくしかないだろう。話はだんだん難しくなっていく。第1章と第2章は著者の手際のよさに感動して読んだ。第3章・第4章あたりになると部分的にはわかるものの、全体の筋道が追いづらくなったのが正直なところ。ただ、1章だけでも読む価値は十分にあった。「実体」ということについて頭が整理できたように思う。
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ネタバレ物理学を理解していない人、哲学が好きな人でなければ、決して分かりやすくない。
廣松渉の本の中では、分かりやすい方だという趣旨で分かりやすいだけかも。
本書と廣松渉の講談社の「哲学入門」の両方読んで、何も感じるところがなければ、他の廣松渉の本を読まない方がよいという意味で、 廣松渉入門だと思ってもいい。
現代物理学の到達点は、物の認識を事として理解しようということだと知れば、いっきに理解が進むかもしれない。
物理学を勉強する人が、微積分の形式だけに捉われることがないように、あるいは微積分の形式が哲学的にどういう意味があるかを知るのに読むとよいかもしれない。 -
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[ 内容 ]
〈実体(モノ)〉的三項図式にかわり、現相世界を網のように織りなす〈関係(コト)〉的存立構制、その結節としてたち顕れる「私」とは、どのようなものか?
量子論からイタリアの戯曲まで、多彩なモデルで素描する、現代哲学の真髄!
[ 目次 ]
事物に「実体」はない(事物の本体を探ると;自然科学の「物体」像;「量子力学」と原子論;物理的「実在」と認識)
認識は「写実」ではない(写像的知覚観の破綻;現象学の雄略と頓挫;現相的世界への定位;観測と実在相の構成)
本質はどう仮現するか(個別存在と普遍概念;本質認知の擬直覚性;意味的本質の存立性;2重の物象化的錯認)
事態は斯様に妥当する(「所与‐ -
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私は自らの研究の最も重要なテーマの一つにイデオロギーを据えながらも,イデオロギー研究の出発点ともいえる『ドイツ・イデオロギー』を読んでいなかった。そもそも,マルクスの著自体,『共産主義者宣言』(太田出版),『哲学の貧困』(岩波文庫)に続いて,3冊目にすぎない。だから,そもそもマルクスの人生において,本書がどの辺に位置づくかも知らなかったし,そもそも,本書がエンゲルスとの共著ということすら知らなかったのだ。
そんな浅はかな私だから,ともかく新しい版の方がよいと思って,この岩波文庫版を古書店で見つけて購入したわけだが,内容以前にもいろいろ考えさせられる本であった。まず,『ドイツ・イデオロギー』はマ -
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マルクスが編み出した思想、『資本論』の要点、資本主義の行く末と共産主義の実現に関する考察と、内容を大きく3つに分けて、それを1冊にまとめた本。
マルクスといえば、「唯物史観」が有名であるが、これは自然界の歴史と人間界の歴史を腑分けすることなく一つの歴史観としてまとめたこと、また、人間がこれまで有してきた生産手段に着目したことが画期的であった。
また著者は『資本論』の内容を要約し、その内容の意図を語るが、一言で言うと、近代市民主義の欺瞞を暴く、つまり人間は一見すると自由で対等な関係を築いたように思われたが、実は労働者と資本関係というの新しい奴隷制(賃金奴隷制)が誕生したことを明かした。そ -
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1988年に出版された同書のアンコール復刊を手に取りました。本書ではまず哲学とはどういう学問なのかという著者の見解が示された後に、認識論、存在論、実践論の大きく3つのテーマが取り上げられています。ただ著者も冒頭に述べているように、1番のウェイトは最初の認識論に割かれていて、そこでは廣松氏の代名詞とも言える共同主観的な視点からの認識論が展開されています。
その意味で本書のタイトルは「新哲学入門」となっていますが、廣松理論入門という方がふさわしい気はしました。認識論では、カメラモデルと呼ばれる知覚論、すなわち「意識対象–意識内容–意識作用」という三項図式がこれまで当たり前と思われてきましたが、著 -
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ネタバレとてつもなく難易度の高い本。
あまりにも有名な人だけれども、
どうやら国家レベルで都合のいいように使われていたようで
本当の意味ではなかなか知りえない人かと。
本当は労働を対価にすることが
えてして不条理とも取れるかもしれませんね。
結局のところ、搾取はやまないわけで。
だけれども、最近はその搾取に異を唱えている人が
出てきてはいますね。
後半が見どころかな。
どうすれば人間は理想の地へ下り立てるのか。
そこにお金の概念をなくすには
どうすればいいのか。
途方もないでしょ?
でも、この世界で生き抜くためには
無駄な摩耗は無くすべきなのよね。
あらゆる面の無知をね。 -
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廣松渉は大森荘蔵と並んで戦後日本の二大哲学者。
本書は廣松哲学の入門用として熊野純彦が編んだ。廣松の主要論文が6篇載っている。彼はマルクス主義者だったが、これらが書かれた頃になると廣松哲学と呼べるほどの独自の哲学を論じている。量子力学や相対性理論もその哲学に取り入れている。だが、数式は少ない。それでも物理の素養もあることをうかがわせる。ちなみに、彼の文体は難しい漢字の訓読みが結構出てくる。これで読み手に負荷をかける。それ以上に内容が抽象化されている。一読しただけでは理解できない。もちろん、理解できる部分はある。だが、その論文全体の真意を理解するには並大抵のことではない。ただ、本書を読んでい -
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先日、五木寛之と佐藤優の対談本で五木氏と廣松渉の共著を読んでみる気になったが、絶版らしい。
廣松渉の名は知っていたような気もするというレベル。
講談社現代新書の表紙は既に画像と違っている。
これは高校の頃に読んだ形而上学に近いかな。しかし、何となく言い包められらような印象がなく、逆に終盤はこんなに問い詰めていかなきゃいけないのかと、少々音を上げた。
実体は目を通して網膜に写り、僕らはモノを見ていると思っているが、実際は網膜から視神経を通じて脳細胞の電気信号として処理されている。そう考えれば、皮膚感覚や匂いや味に至るすべての刺激がデータとして僕の存在実感が出来上がっているんだろう。そして僕 -
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アーレントの解説本を3冊読んだ上で『人間の条件』に取り掛かったけれど「どうしてもマルクスが前提知識として必要らしい」と悟り、本書を頼ることにした。
本書はソ連・東欧が資本主義経済に舵を切った直後の1990年に出版された。20世紀を通して“主流派”であったレーニン主義的解釈を削ぎ落とし、より純粋な形でマルクス思想の“核”を見てみよう、というのが本書のねらいだ。ちなみに、著者によれば、社会主義国家の失敗とマルクス思想の破綻はイコールでは結ばれない。
第1章では、マルクスが打ち出した新しい「人間観」「社会観」「歴史観」について説明される。
マルクスは、理性的側面を重視する伝統的な人間観を顛倒さ -
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マルクスやエンゲルスの体裁が整った著作とは違って、これはノートのような紙に思いついたこと、またはどこかで学んだことをひたすら書き連ねた本である。またエンゲルスが主に執筆した箇所をマルクスが書き加えたり、線を引いて消したり、また絵のような内容を書き加えたりしている。
体裁が整った著書は当然だが取捨選択しているので、彼らがどのような発想をしているか、も当然だが取捨選択している。しかしこの本に関しては思いついたこと、また学んだことの成果をそのまま載せているので、彼らがどのようにして「唯物史観」や「共産主義」の原理を構築したかが読み取れるし、またフォイエルバッハの哲学をどのように学んでいたか、が分かる -
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本書の副題は、「モノからコトへ」でして、「モノからコトを見つける上手い方法」がないかと探索中の一冊なのでした(……という目的にはそれほど参考になりませんでしたが……)。
本書を一言で言えば、Wikipediaの廣松 渉の解説にある、
実体があって関係があると考える物的世界観に対し、関係があってこそ実体があると考える事的世界観を提起した。
という哲学の入門書です。
まえおきに、
本書は、著者がこれまで出した本のうちで最も判り易いかたちにかけていると信じています。
と書いてあるように、予備知識なしで読むことができます。でも、独特の言い回しや漢字の使い方があるのですらすら気軽に読むと -
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ネタバレ[ 内容 ]
哲学とはなにを解明しようとする学問なのか。
近代哲学の行きづまり状況はいかにして打破さるべきか。
従来の物的世界像から事的世界観への転回をはかって独自の哲学体系を構想し各方面に波紋を投じている著者が、認識、存在、実践の三つの側面から、私たちを捉えている近代的世界観の根底的批判を展開し、新しい知の枠組への案内を試みる。
[ 目次 ]
緒論 哲学とは? そして本書は
第1章 認識するとはどういうことか(意識の存立構造 判断と態度決定 真理の成立条件)
第2章 存在するとはどういうことか(現相の存立構造 事象と因果法則 実在の成立条件)
第3章 実践するとはどういうことか(行為の存立 -
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哲学/認識論系の廣松渉の著作を数冊読んできて、ここでマルクス主義者としての彼の書物に挑戦してみた。
先に読んだアルチュセール『マルクスのために』なんかよりはずっとわかりやすく、興味深かった。
資本論の初版と改版との比較、マルクスをめぐる多数の論者の文章の引用とその批評など、精細をきわめる内容で、マルクス主義に疎い私にはついていきがたい部分もあるものの、著者の行論をたどっていくうちに、マルクスの「価値論」の重たさが、なんとなくわかったような気がする。
引用しておいた文章は、音楽の善し悪しに関する問題にも適用できるように思えて、注意をひいた。が、ここで私は廣松渉氏に完全に同意するものではない。
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