廣松渉のレビュー一覧
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[ 内容 ]
マルクスは人間や社会や歴史をどうとらえ、『資本論』で何を語り、近代資本主義の未来をどのように予見したのか?
今やマルクス主義は本当にもう無効になってしまったのだろうか?
20世紀世界の根幹的思想を、独自の視点と平明な言葉で掘り返し、脱近代への発展的継承を試みる。
[ 目次 ]
●マルクスの開いた新しい世界観
人間観をどのように改新したか
社会観をどのように更新したか
歴史観をどのように転轍したか
●『資本論』で言いたかったこと
物象化された経済の構造的分析
賃労働者を搾取する機構の暴露
資本主義経済体制の包摂的支配
●資本主義の命運と共産主義革命
近代的市民社会像 -
Posted by ブクログ
「大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝 (斎藤幸平著)」と「コモンの再生(内田樹著)」からの流れで本著を手に取った。
本著138頁からの{84}a=[40]の節、「こうして、ここに、自然発生的な生産用具と、文明によって創出された生産用具との差異が際立ってくる。(中略)第一の場合、つまり自然発生的な生産用群も場合には、諸個人は自然に服属させられ、第二の場合には労働の生産物に服属させられる。それゆえ、第一の場合には、所有(土地所有)もまた直接的・自然発生的な所有の支配として現れ、第二の場合には労働の、とりわけ蓄積された労働の支配として、つまり資本の支配として現れる。(後略)」に始まる本節をじ -
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「モノ」の情報が~,「コト」の情報が~
といってたら,後輩のS氏に渡されました.
大御所なのでしょうが,
その時代の哲学者らしく,難しい漢字にドイツ語カタカナ読みでかながふってあったりして,なかなか読んでいて悩ましい.
それはさておき,入門一歩前ってのは入門の手前っていみと,入門して一歩前へって意味をかさねたはるらしい.
相対性理論や量子理論を引き合いに出して,原始論的な実在主義がもはや科学においても崩壊してると論じつつ,認識論についてかたられています.
いろいろ難しいことはおっしゃってますものの,やはり純な哲学ですと,言葉を粘土のごとくこねまわすだけでは,新しいモノは出てこないような -
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著者のマルクス論を簡潔に提示した入門書。
著者は、西洋の実体論的発想と対置される、関係の第一次性の立場から、マルクスの思想を理解する。著者は『資本論』の内容の紹介に先立って、みずからの物象化論の概要に触れている。「物象化」とは、人と人との社会的な関係が、日常的な意識において自立的な物象の相で現象する事態を意味する。ただしこの物象化を、心的ないし精神的なものが物的ないし客体的なものへと転化するという仕方で理解してはならないと著者は言う。そうした理解は、近代哲学の二元論的対立を前提としている。だがマルクスは、そうした二元論的な枠組みを解体し、関係の第一次性の立場に至ったというのが著者の理解である -
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著者の哲学の入門書。『新哲学入門』(岩波新書)より幅広い話題を扱っており、「モノからコトへ」というサブタイトルが示すように、実体論的世界観に代わる関係論的世界観の意義について比較的詳しい説明がある。
第1章では、現代の常識となっている、物理的実在を実体とみなす見方の問題点を指摘するとともに、場の量子論などを取り上げて、自然科学の内部で実体論的な発想を乗り越える試みがなされていることに触れている。第2章では、カメラの写像をモデルとして認識を説明する見方を退け、ありのままの現相的世界から出発しなければならないと説いている。
第3章では、本質直観の対象となるようなイデア的存在者の自体的存立を認め -
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著者の哲学の入門書。認識論、存在論、実践論の3部で構成されている。
第1章では、著者の「四肢的構造」論が解説されている。著者はまず、意識対象・意識内容・意識作用という三項図式を取る近代的認識論の枠組みの問題点を指摘し、現にあるがままの知覚風景的な場面から出発しなおすべきだと説いている。その上で著者は、知覚的現相には「個別的・直接的でレアールな所与を、それ以上のイデアールなあるものとして覚知する」という機制がそなわっていると論じる。それ以上の「あるもの」は「所識」と呼ばれ、「所与」と「所識」という二肢構造に基づいて、哲学的判断論を再構築するための道筋が簡潔に示されている。
一方、こうした覚知