川辺謙一のレビュー一覧
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鉄道の安全を支へる「縁の下の力持ち」的な仕事をする人たちの存在も、最近漸く知られてきた感があります。その中でも本書は、普段意識される事もないやうな分野、即ちややメイニアックなジャンルに特化して取材をしたルポルタージュであります。
著者は理系出身の鉄道「技術」ライターで、従来のテツどもが敬遠する分野を専門にしてゐるやうです。
まづ一つ目は「分岐器」。線路が分岐するポイント部分ですな。只の分岐器ではなく、「日本最大の分岐器」であります。これは38番分岐器と呼ばれ、京成スカイアクセス線(成田国際空港へのアクセス線)と、上越新幹線と北陸新幹線が分岐する部分の二か所にしかないさうです。なぜ38番かといふと、レールが一メートル分岐するのに38メートル進むといふ意味で、確かに箆棒な長さと申せませう。この桁外れの分岐器があるお陰で高速鉄道も減速することなく分岐できるといふ訳です。
これを作つてゐる関東分岐器株式会社(といふ会社があるんですね)の埼玉県深谷市の工場を紹介してゐます。写真だけでもかなりの迫力。映像で見てみたいですな。平泉成さんのナレーション付きで。
二つ目は「地下鉄トンネル」。もう日本の地下鉄はほぼ完成状態で、東京メトロなどは「もう以降の新線建設はない」と表明してゐるさうです。なので工事の取材も難しいのですが、改良計画は続くので、その現場を取材できたとの事。
沿線住民にとつては何が改良されるのか分かりにくい上、五月蝿くて交通規制も発生する。迷惑なのであります。故に地元の人たちの工事への理解を深めて貰ふために、「展示室」なるものを設置し、模型や映像などで愉しめる設備にしてあるさうです。キッズスペースなんかもあつて、近隣の人たちが子供たちを遊ばせにくる程だとか。涙ぐましい努力と申せませう。
三つ目は「窓ガラス」。大量生産が出来るクルマのガラスと違ひ、鉄道の窓ガラスは受注の数が桁違ひに少ないので、少量多品種にならざるを得ず、手作業での工程が多いさうです。単価も高くなりますね。ここでは,世界最大手のガラスメーカーであるAGC(元・旭硝子)のグループ会社・AGCファブリテックとその外製拠点であるビューテック豊橋工場に取材してゐます。ビューテックといへば、わたくしども豊田市民には馴染みの深い会社で、梅坪といふところに本社があります。
最後の四つ目は「パンタグラフ」。確かにパンタグラフは誰でも知つてゐますが、それをどうやつて作つてゐるのかなんて、あまり考へませんね。最近は菱型よりも「く」の字型が主流になつてゐますが、勿論理由があつての事。また、現在は以前に比べて架線とパンタグラフの接触部分からバチバチ音がしたりスパークしたりが少なくなつてゐます。大変な努力の末、ここまで改良された事がわかります。日本のパンタグラフは世界的に見て特殊で、海外に売り込むのが難しいといふ。現場の人の「ガラパゴス化してゐる」との発言もありました。しかしスマホなんかと違ふのは、外来種が日本を席捲する事もまた難しいのださうです。
といふ事で、読めば読むほど興味深い内容なのですが、一見地味な装丁(叢書なので仕方ないが)だし書名も漠然としてゐるので、その分損をしてゐるかも知れません。ぢやあ何と名付ければ良いのだと問はれると困りますが。デハデハ。 -
Posted by ブクログ
東京の某所では一日約1400万人、約8000本の列車の運行を支えるところがあるとは知らなかった。
1996年に中央線に導入されたATOS(Autonomous Decentralized Transport Operation Control System)がどんどん進化して広い範囲の路線(2014年4月時点で線路延長1181.3km)をカバーしてるとのこと。
それでも指令室が管理する1269.7kmすべてをカバーし切れていない。まだまだ進化途中のようだ。
出版元の交通新聞社という会社は初耳だったが、鉄道関連の書籍を結構出版しているみたいである。
内容とは関係ないが、「足らない」という記述がどうも古くさい言い回しに感じてしょうがない。(「足りない」も「足らない」も意味は同じなんですが個人的な好き嫌いなもので) -
Posted by ブクログ
私はBLUEBACKSが好きだ。以前は科学理論こそ百学の王だと思っていたが、最近はもっぱら工学・技術の方に趣味が傾倒している。技術を知ると以前は気が付かなかった日常が日常ではなくなるときがある。
毎日、地下鉄に乗りながら考えていた地下鉄像と本当の地下鉄は違う。
トンネルや駅や路線の立体構造についての関心もあるのだが、それよりも、地下鉄の問題が以前は熱問題であり、それを解消するために、ブレーキでモータを回し、その回転で発電し、他の車両に電線を通して送るというエコと発熱問題を同時に解決する発想力には感服する。
地下鉄に限らないが、暖房は椅子の下に、冷房は天井にという位置関係に感嘆する。
騒音解除のための車軸への細かなゴムの配置やカーブ路線に塗る潤滑油やレールの角度の微調整など、たゆまぬ努力と注意力で少しずつ少しずつよいものを作っていくことに感銘を受ける。
地下鉄列車は先頭車両の正面にドアが付いている。この当たり前の気遣いに気づいている人はいるだろうか。
普段何気なく利用している単純そうに見えるものもそれは確かな技術の賜物なのである。 -
Posted by ブクログ
燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド車の仕組みと歴史がコンパクトにまとめられた一冊。
デジタル化されたカメラにも同じことを感じるのだが、そもそも動く(写る)仕組みが全く違うのなら、配置や形状ももっと変わってもよいんじゃないかと思う。つい、前の時代に固定化したデザインにとらわれがちだ。
おそらくデザイナーが提案しても、マーケティングサイドの判断で、なじみのデザインになってしまうのだろう。
しかし、個人的には、インフラ整備のコストなどを考えると、燃料電池自動車が世界で主流になるとは思えないなあ。やっぱ本命は電気自動車かな。当面はハイブリッドでも十分というかバランスがよい(欧州の規制次第の部分もあるが…)。鉄道システムなら、燃料電池車は大いにあり得るんだけど。。。 -
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交通量が多くて、狭いところに作らなければならなくて、すぐ近くに民家が迫る。土木技術のショーケース的な首都高の複雑さよ。運転する身にも複雑だ。お出かけ意欲を刺激するとともに夏休み研究的図書として読んでみた。
ある方向にしか行けないJCTがこんなに多いとは。土地と予算の制約で、需要量を考えながら設計している。小松川でのC2と7号線の交叉は、当初はニーズがなかろうということで素通りさせたが、C2貫通を受けてJCTを作ると。2019年完成予定。最初から作っておいてよ。。。
C1など出口と入口の片方しかないところがほとんど。確かに言われてみれば。ナビがなけりゃ知らないと使えないよな首都高。
用地買収を避けるため川沿いや幹線道路の上を利用。8割が高架橋で、1割トンネル、0.5割半地下。作るのも大変、保守も大変。
東京オリンピックが決まる前から計画されていた。道路渋滞がひどかったため。オリンピックで建設が加速されたのは確か。都市間高速より先に整備されたのは欧州とは違うパターン。
対向車線が、上下になってみたり、左右逆になってみたり(C2の大井付近)。立体的な作りを意識しながら走っても面白いか。
八重洲降り口から東京駅へはアクセスできるが、逆は不可な設計。知らなかった。
空港による高さ規制のため多摩川などはトンネルで、横浜まで行くと鶴見つばさ橋やベイブリッジができる。橋げた高さや工期に船の航行への配慮も。
防音壁の上のパンの耳は回折音を吸収するため!
左右からの車線変更が交錯する「織り込み交通」。渋滞の原因になる。江戸橋・箱崎間の4車線を中と外で振り分けるのはそれを防ぐアイデアだったのか。1998年の改良。
ボトルネックの熊野町・板橋間の拡幅工事。ラケット型橋脚のため普通には工事できない。新しい橋脚を古いのをサンドイッチするように作ってから古いのを撤去するサンドイッチ工法で工事中。2017年完成予定。
大江戸線の中野坂上駅ホームと改札階のあいだ、エスカレーターの脇を通り抜ける山手トンネル。気づかないよなあ。地下鉄とセットで整備された例はいくつか。
山手トンネルは構造といい、安全対策といい、換気といい、周辺環境への配慮といい技術の塊。けれどあまり精巧だとfragileじゃないかと維持がちょっと心配にもなる。
補修や耐震補強やパトロールや渋滞情報やオペレーションも大変。普通に考えて無料化無理じゃね? -
Posted by ブクログ
○巨大鉄道企業・JR東日本の秘密が詰まっている
実際にJR東日本の「東京総合指令室」へ訪問し、関係者へインタビューしたルポである。
関東地区でATOSという管理システムが導入されてから、通常時もさることながら遅れが発生したりしたときに情報の発信が頻繁になったり遅れを解消するスピードが速くなったのではないか。JRのユーザーエクスペリエンスは格段に向上したはずである。
それを支える舞台が東京総合指令室。本書では、豊富なインタビューと取材で、いまのJRのあり様と発展してきた経過、ATOSの前のCTCなどの時代から掘り下げて解説している。
この中で一番驚いたのは「お客様目線で運輸指令も動くようになった」というような記述である。
確かに、ある一定の時期から全社的にお客様目線を大事にするような風潮が見て取れるような気がしていたが、お客様と直接接しない指令の人たちでも、そういう意識で仕事をしているのだ、と思わず感心させられる。
少し物足りない面があるとすれば、東京総合指令室以外の指令室、例えば新幹線や大阪などのことも取り上げて比較しても面白かったかもしれない。 -
Posted by ブクログ
もしも現代に地下鉄がなかったとして、「地下に電車走らせればいいじゃん」と思いつくことが出来る人はどれだけいるだろうか。初めて乗る人ですら改めて驚くこともないぐらいに世界中の日常に溶け込んでいるが、何100kmもの区間、地下を掘り進めるという、人類が物理学と土木技術と経済力をもって地球と戦かった成果の一つが地下鉄だ。
そのための技術は、読めば読むほど意外なものではない。初期の地下鉄は穴をほって線路を敷いてフタをするだけだし、シールド工法も今でこそ超大な重機を用いているが、かつてはミミズやモグラがやるように掘った分を押し固めながら進めば可能だ。とするとやはり、考えるべきはその安全精度と経済計画だろう。その詳細は残念ながら本書からは読み取れないが、前段階としての必要な知識を簡単に学ぶことは出来る。安全性から見る各国の規格の違い、土・岩盤と工法の関係、発生した事故と対策、資金の調達方法、都市計画などなど興味は尽きない。