瀬川拓郎のレビュー一覧
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知らなかった日本史
縄文文化の流れ、北海道からサハリン、アムール川流域、カムチャッカ半島までの広い文化圏と民族の動き、殯の風習など一冊で知ることが多く、日本史の見方が変わりました。素晴らしい力作だと思います。
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購入済み
縄文びとが残したもの
過去の民俗学や文化人類学の遺産である民話や伝承と、最新の考古学が合わさって、雄大な物語を読むように感じました。日本人の起源がアイヌと不可分であること。海民の旅のスケールが昔から非常に大きかったことなど有史以前の世界が目の前に蘇るようです。
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貧富の差のない縄文時代に、農業がもたらされて弥生時代が始まった。こんな直線的な理解を打ち砕く名著。
南方から渡来した原日本列島人=縄文人のもとに農業がもたらされる。縄文人は農業を部分的に受け入れ、渡来人と混血しつつも沿岸部を拠点とする「海民」として幅広い交易で繁栄する。縄文と弥生は長く併存するのだ。
沖縄とアイヌの共通の文化的属性、DNAの解析、山陰と東北の言語的共通性などから「日本人の源流」が浮かび上がる(ここで、奥出雲弁と東北弁が非常に似ている、ということが推理のカギとなる松本清張「砂の器」を思い出す人はするどい)。
日本各地の神話で、海にある洞窟はなぜ山の頂上につながっているのか。 -
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ネタバレ漂海民は魚などが銭で変われることを好まず、陸上の知人に贈り物として与え、その返礼として催事に招待をしてくれることを良しとし、そうした関係を親戚とよんでいました。この親戚は、漂海民にとっての疑似親族、中立地帯であり、彼らはこの親戚を通して外部の商品経済との関係を保とうとしていた。アイヌが守り通そうとした縄文思想とは人々を親戚として結びつける連帯の原理であり、商品交換を忌避したのは、それが人々を不平等化し差別化していく原理だったから。縄文の思想を知る意味とは、非対称化していく歴史のなかで原郷の思想である連帯と平等をかたくなに守り通そうとしてきた人々が今なお私たちの目の前にいること、さらには漂海民の
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アイヌとは北海道に孤立した民族だと思っていた自分には衝撃的な本。
古代から和人・渡来人・大陸とグローバルに交流し、交じり合い、影響しあう人々の生き生きとした姿が描かれます。
アイヌの風俗に和人が及ぼした影響、義経伝説の影響、日本語起原のアイヌ語、驚くべきアイヌの躍動する姿。いやあ、知らなかったことばかり!
それにしても、現代でもアイヌがおかれた厳しい状況、貧困、学歴といった問題にも驚き。こういったことはある意味隠されているんだなぁ。
ただ、内容は筆者の仮説にとどまるものも多く注意が必要です。
アイヌとはどのような人びとか
縄文―一万年の伝統を継ぐ
交易―沈黙交易とエスニシティ
伝説―古代ロー -
Posted by ブクログ
考古学者が、縄文人の生き方を律した思想、あるいはかれらの他界観や世界観といった、生々しい観念の世界に新たな発想・アプローチの仕方で、われわれ日本人の鬱なる「縄文性」に迫った著作です。
その方法ですが、芸術的な感性などではなく、考古学と神話から具体的な資料にもとづいて縄文の思想を明らかにしたのです。
内容
はじめに
生き残る縄文/なぜ共通する神話/伝説があるのか
周縁・まれびと・修験者/アクチュアルな生の思想
なぜいま縄文なのか
序章 縄文はなぜ・どのように生き残ったのか
第1章 海民と縄文――弥生化のなかの縄文
1 残存する縄文伝統
2 海民の誕生
第2章 海民とアイヌ――日本列島の -
Posted by ブクログ
おもしろい!
サブタイトルの通り、「もうひとつの日本の歴史」が鮮やかに描かれている。
ひとつひとつ実例を混じえ論理を積み重ねていきつつ、
全体としてとてもダイナミックな構成となっている。
古代から中世にかけて日本にに数々の民族が存在したことを、
恥ずかしながらよく知らなかった。
彼らの文化、言語、DNAが今の日本人とどうつながっているのかなどは、
非常にわかりやすく興味深い。
また、交易や埋葬についてはかなりページが割かれており、
その民族の文化の中で相当重要な位置を占めていたこともわかった。
複雑な話をここまでわかりやすく描ける筆力もあるのだろう。
アイヌや縄文というキーワードだけでなく、民 -
Posted by ブクログ
アイヌと縄文 瀬川拓郎 ちくま
同じ縄文人を祖先に持つからと言って
2千年以上も異なる歴史を歩んできた私たちは
互いに補い合う精神的な文化を選んだアイヌと
権利を主張し合い知識による文明を目指す弥生文化を選んだ本土人を
同一視することはできない
しかし現代の日本人として縄文的精神文化を振り返り
彼らが大事にしてきたお互いの関係に自主的な参加をする全体感という
総合的な生き方を取り戻すことが可能なのだとつくづく思わされた
それにしてもアイヌと一口に呼べないほどこの二千年は多様であり
意思を貫きながらも生き延びるために
互いを補い合う譲渡の文化と駆け引きによる交易の二刀流を使い分けた
し -
Posted by ブクログ
“アイヌ”というのは、壮大な交易を行っていた人達で、アイヌが伝えてきた様々な文物には、古来からアイヌが自身で産み出しただけではない、日本等の隣接する他文化の顕著な影響を認めざるを得ない部分も在る。また日本で古来から珍重された様々なモノの中には、アイヌがもたらしたと考えられるモノも実は色々と在るという。そんな物語を考古学や近年の歴史研究の成果を踏まえて綴ったのが本作である。アイヌは文字を持っておらず、文書記録が「間接的なモノ」になってしまって限定的なので、「北海道辺りの歴史」にはマダマダ“不詳”、“不明”が多いことが否めないのだが、そういう部分を埋める様々な物語が本作の中には在る。
アイヌが壮大