大野舞のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ここにある思考地図はよくある分析アナリストの基本のようなものだ。トッド氏の重要視している点は、事実に基づく統計数値データを如何に先入観なくして分析・出力すること、さらに、史実に基づく歴史観比較が付加されることにある。歴史は繰り返すの如く事件事故、災害も過去の史実が参考になる場合も多く、特に政治家の政策などは「前例」を重視する人間が多いのはそこに理由がある。だが、悪い事に過去20〜30年の歴史でも政府の政策で最新技術を駆逐した対処にはなっていないのが残念だ。今回のコロナ対策で、多くの国々が「マスク・対処機器」がほとんど自国以外であったことの誤りが浮かび上がったことは今後の政策にも参考になったと思う。
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Posted by ブクログ
社会を把握するための数字の見方が参考になる。
著者のエマニュエル・トッドは、歴史人口学者であるが、ソ連崩壊やトランプ当選などの予言で知られる。
多くの社会学が、人の主義や価値観について仮説・推論を展開するのに対し、著者のアプローチは各国の人口動態、家族構成などの統計から、人々の感情を思い浮かべる、経験主義的なものなのが特徴的である。
特に興味深かったのは、統計データの信頼性について、死亡率は嘘がつけないというものだ。著者に言わせれば、物価、GDPなどはサービス経済になってからは何を表すのか分からない。訴訟が増え弁護士の手数料が膨大になることが生産なのだろうか?と言われると確かにその通りと思ってしまう。社会科学においては実験経済学のような、できるだけ科学的にあろうとするアプローチもあるが、そもそもの測るものが間違えていたら結果は意味をなさないことになる…
本人は、数学が得意で哲学が嫌いという道を進んだ結果のように言っていて、随所に現れるフランス哲学の批判、科学的でない社会学の批判は相変わらず面白い。
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Posted by ブクログ
人類学者の著者による、ウクライナ問題について。
全然世界情勢など知らないマンなので「ロシアによる一方的な侵略戦争」と思っていた節がありますが、その背景に「ウクライナのNATO加盟」、「NATOのロシアの意に反する東方勢力拡大」、「旧ソ連崩壊後の国境問題」などいろいろ複雑な問題があることを認識しました。
面白いと思った点は、人類学的視点からの見解でした。ロシアは「共同体家族」、ウクライナは「核家族」。この違いにより「共産主義的思想」、「民主主義的思想」の違いに繋がるのは興味深かったです。
日本のメディアを通して得られる情報とは別の視点でいろいろ語られていたので、新鮮でした。
こんな情報化社会でもわからないことだらけなんだなと改めて実感しました。
事実を見極めるために情報収集しつつ常に考えていこうと思いました。できることは少ないだろうけども。
早く戦争が終わりますように。
もう2カ国間で遊戯王とかで決着つけよ。 -
Posted by ブクログ
2022年に勃発したロシアによるウクライナ侵略戦争について、ロシア側の論理を説明した本。
著者はフランス人だが、反米・反EU。同意できない点もあるが、多面的な視点を提供してくれるという点で、読む価値はある。
著者が「第三次世界大戦」という言葉を使うのは、この戦争は、実際には米国とロシアの戦争―米国によるウクライナでの「代理戦争」―だからだ。
ウクライナの裏で米国(とNATO)が糸を引いている、ということはみんな知っている。著者曰く、米国や西欧の主張はまったくグローバルではなく(この点は完全に同意する)、むしろ世界の嫌われ者である。よって、今回の戦争でロシアを支持する国は多いだろう、という。
著者曰く、ウクライナは破綻国家であり、3つの地域に分断されている。
西部は「ほぼポーランド」であり、ロシアはこの地域に興味はない(ポーランドが併合するかもしれない)。キエフを含む中部はロシアが「小ロシア」とよぶ地域で、ここが狭義の「ウクライナ」である。そして南部・東部は、ロシアが「ノヴォロシア(新ロシア)」と呼ぶ、ロシア語話者の住むエリアだ。ウクライナは貧しい国だが、最も発展しているのは実は南部・東部地域である。
2014年、親露派のヤヌコビッチ政権が(プーチンのいうところの「ネオナチ」による)クーデターによって倒され、親EU派の政権ができた。その後、米国や英国はウクライナ軍に高性能の兵器を大量に送り、軍事支援を行った。そのためロシアは、米国によるウクライナの武装化がこれ以上進む前に、「手遅れにならないうちに」ウクライナ軍を叩き潰すことを決意した――。だから、今回の戦争の責任は米国と西欧(NATO)にある、という。
しかし、このロジックで行くと、あらゆる侵略戦争は正当化されることになってしまう。
2014年の段階で、ロシアはクリミアを併合し、ドンバス地方は親露派によって実効支配されていた。とすれば、ロシアの目的はすでに達成されていたようにも思える。
なぜロシアが侵攻に踏み切ったのか、やはり理解できない。 -
Posted by ブクログ
学者さんが書いたこの種の本を読むのに慣れていないせいか、少し読みづらい気はしたが、思考の流れはよく理解でき、主義思想でなく歴史やデータを重要視する研究姿勢や、ルーティンから脱却して視点を変えてみる必要性は共感できた。
目次とは別に冒頭のページにあった「思考の見取り図」がわかりやすかった。
インプット→着想→検証→分析・洞察→予測
・歴史とデータによる経験主義
・膨大なデータ収集し事実(ファクト)を蓄積
・ルーティンから脱却してのアウトサイダーの視点
自分自身に置き換えると、インプット→着想を数多くやってもその先が不十分だから考えが深まらないことを、痛感した。
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Posted by ブクログ
エマニエル・ドット氏にインタビューをした内容をまとめて、昨年(2020年)7月に発刊された本。自国であるフランスを中心に欧米と日本の政治と民主主義について述べられている。貧富の格差の拡大と教育に加え、保護貿易化、移民の反対等により、国家が分断されていると主張している。参考になった。
「今や高等教育は学ぶ場というよりも、支配階級が自らの再生産を守るためのものになっており、お金がある家庭は、子どもたちがある分野で成功するための保証として家庭教師を雇います」p26
「データを見る限り、中等、そして初等教育においても学力が低下していることが確認されていました。これはフランスだけではなく、もしかすると世界的な話かもしれないと思っています」p51
「(学力低下)私は、どちらかというと子供たちが読書をしなくなっているということに理由があると思っています」p52
「民主主義は3つの種類に分けられると考えています。それは「フランス・アメリカ・イギリス型」「ドイツ・日本型」「ロシア型」であり、家族構造に由来しています」p70
「しばしば非難されるのは「日本人には自分たちが特別だという意識があり、自民族中心主義思想を持っている」という点です。今、日本の文化は文学や料理、サブカルチャーを筆頭に、世界で敬意を払われるものになりました。日本は平和的でエレガントだと言われます。しかし、昔は人種差別的だと言われたこともありました。そうした印象を与える自民族中心主義思想から、日本には移民はいらない、という考え方も生まれます。これが西洋の考え方と違う点で、日本が非難される理由です」p74
「これからの日本に必要なのは「少しばかりの無秩序」であると私は謹言したい。男女間での無秩序、家族内での無秩序、そして移民を受け入れることで発生する無秩序。日本社会のように完璧を求めることは、ある程度発展した社会では逆に障害になってしまうからです」p106
「自由貿易は、先進諸国において残忍な形で不平等を拡大し続けています。自由貿易が優遇するのは資本家と高齢者です」p113
「民主主義の考え方、つまり「人はみな平等で自由」という理想は素晴らしいですが、それがうまくいくためには人々の教育レベルが均一でなければならず、お互いに理解し合えて、そして時には衝突し合うことも可能でなければいけません。今のEUではそれは不可能なのです」p132
「もし私が「ヨーロッパの終わりはどう訪れるか」と尋ねられたならば、おそらく「支配国であるドイツがなにがしか不条理なことをしでかすことで訪れる」と答えるでしょう」p135
「日本は移民の大規模な活用を拒否し、国力の低下を食い止める闘いをあきらめてしまいました。ところが、ドイツでは世界で最も年老いた2つの国のうちの1つでありながら、経済力については全くあきらめていません(移民による労働力若返り政策)」p138
「様々な理由から、サウジアラビアは近々崩壊すると思います」p175 -
Posted by ブクログ
ちょうど社会に出るころ、日本では小泉、アメリカではブッシュが政権を取っていたということもあり、深く考えもせずに自由貿易に対する肯定的な思いを持ってきていた。
しかし、現実にはニュースで日々報道されるような状況となっていて、そのねじれについてイマイチ理解できずにいた。
トッドは一貫して自由貿易には反対の立場をとってきているが、それはあくまで自国での民主主義を守ることを一義に考えていたからだと理解した。
民主主義にしても自由貿易にしても、すべてが同じ条件で、プレイヤーは合理的な判断を行うという、非現実的な前提のうえになりたっている以上、現実に落とし込むにはどこかでカスタマイズが必要ということなのだろう。
自由・平等が絶対善であるところに固執しすぎると、かえって思考停止に陥ってしまい、絶対に到達できなくなるということがよくわかった。