松本卓也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
垂直、水平、斜めという空間性から精神医学とその周辺を整理して考え、斜めに可能性を見出そうというのが本書です。
「現代は、ケア論の隆盛に代表されるように、人と人との水平的なつながりの重要性をいうことがスタンダードになった時代である。けれども、単に水平的であればよいわけではない。
水平方向は、しばしば人々を水平(よこならび)にし、平準化を導いてしまうからだ。けれども、水平方向には日常を捉え直し、そこからちょっとした垂直方向の突出を可能にする契機もまた伏在している。ゆえに、垂直方向の特権化を批判しつつ、しかし現代的な水平方向の重視に完全に乗るわけでもなく、「斜め」を目指すこと…。」
認識は経験 -
Posted by ブクログ
とてもすっきりとした記述で読みやすい。
中井久夫が統合失調症の寛解課程に着目する際、描画法という通常の言語による語りとは違う表現方法を媒介にして、統合失調症が慢性化したと見られる患者は日々動揺した状態にあることを解明したところが面白かった。統合失調症は安定状態ではなく、準安定状態として理解すべきである。安定状態に見えていたのは、動きを表現する媒体がなかったからで、媒体を変えることで動きが記述可能になることがある。
通奏低音として、ハイデガーの存在と時間に端を発するとされる、一種の垂直的決断主義への批判がある。というか本来性というものへの批判。
一度限りの決定的な決断ではなく、そのたびごとに -
-
-
-
Posted by ブクログ
とても素敵な本。「自治」の実際が語られていて,なんか,やる気が出るような来ます。著者によっては,少し難解な部分もあるのですが…。
最後の斎藤幸平さんの「「自治」の力を耕す〈コモン〉の現場」より,今の教育現場にも通じる話を引用します。
…労働問題に取り組むNPO法人POSSEの代表である今野晴貴さんは,次のように指摘します。
ブラック企業問題が解決しない原因は,労働法が存在しないからではない。むちゃくちゃな働かせ方を取りしまう法律自体は日本にもある。あるけれども,労働組合が弱体化した日本では,企業のほうが圧倒的に強く,労働者には力がない。そのせいで,法律の運用が形骸化し,「違法労働」がまか -
Posted by ブクログ
「当事者意識を持つこと」の重要性を実感しました。
「自治」というテーマのもと、様々な分野における「自治」のあり方について論じられていました。
特に、現代社会における「上から」の改革の限界を指摘し、真の社会変革は、一人ひとりが「当事者」となることから始まることを強調していました。
この著書における「市民科学」の例は、この「当事者意識」の重要性を感じられます。専門家だけに任せるのではなく、市民自身が社会問題の解決に向けて積極的に行動を起こす「市民科学」の動きは、従来の「上からの」改革ではカバーしきれない問題に取り組む、新しい可能性を感じられました。
p125~武器としての市民科学を (木村あや) -
-
-
-
Posted by ブクログ
みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいです -
-
Posted by ブクログ
『心の病気ってなんだろう』
統合失調症、うつ、PTSDなどの精神医学の極めてやさしい概略本。
精神医学の治療で重要なことは、原状復帰ではなく、病気になる前とは異なる形になること。病気になる前と同じ状態に戻ってしまうと、また何かのきっかけで再発してしまう。再発しないような形に寛解していくことが重要。
転移という治療法も興味深かった。一般にトラウマとは、現在では操作不可能(記憶さえも抑圧されて、ない場合すらある)な心の傷である。そのままでは、治療できないが、治療しないと別のところで回帰してしまい、病状として現れる。その場合、精神医は心の傷が起こった当時の人間関係をそのまま精神医と患者の形にすり替