松本卓也のレビュー一覧
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治外法権という言葉がある位、「自治」の線引きはデリケートな問題だ。コスモポリタニズム(地球市民主義)のような大きな枠組みで自治を行う方が、世界平和になって良いのではとも思ったが、結局は、自治単位が大きくなってもそれを不満とした紛争は無くならない。だからといって、自治単位が小さくなればなるほど、対立を招く可能性が増えるし、効率性も下がる。本件を考えるには、当たり前のことだが「自治単位の適切な設定」と「適切な運営」が重要である。
資本主義には資本が資本を呼ぶように富を集中させる機能があり、それをもっての強者の理論がまかり通るようになり、弱者における「自治」を蔑ろにする部分がある。本書は、万人がコ -
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とても素敵な本。「自治」の実際が語られていて,なんか,やる気が出るような来ます。著者によっては,少し難解な部分もあるのですが…。
最後の斎藤幸平さんの「「自治」の力を耕す〈コモン〉の現場」より,今の教育現場にも通じる話を引用します。
…労働問題に取り組むNPO法人POSSEの代表である今野晴貴さんは,次のように指摘します。
ブラック企業問題が解決しない原因は,労働法が存在しないからではない。むちゃくちゃな働かせ方を取りしまう法律自体は日本にもある。あるけれども,労働組合が弱体化した日本では,企業のほうが圧倒的に強く,労働者には力がない。そのせいで,法律の運用が形骸化し,「違法労働」がまか -
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「当事者意識を持つこと」の重要性を実感しました。
「自治」というテーマのもと、様々な分野における「自治」のあり方について論じられていました。
特に、現代社会における「上から」の改革の限界を指摘し、真の社会変革は、一人ひとりが「当事者」となることから始まることを強調していました。
この著書における「市民科学」の例は、この「当事者意識」の重要性を感じられます。専門家だけに任せるのではなく、市民自身が社会問題の解決に向けて積極的に行動を起こす「市民科学」の動きは、従来の「上からの」改革ではカバーしきれない問題に取り組む、新しい可能性を感じられました。
p125~武器としての市民科学を (木村あや) -
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みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいです -
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『心の病気ってなんだろう』
統合失調症、うつ、PTSDなどの精神医学の極めてやさしい概略本。
精神医学の治療で重要なことは、原状復帰ではなく、病気になる前とは異なる形になること。病気になる前と同じ状態に戻ってしまうと、また何かのきっかけで再発してしまう。再発しないような形に寛解していくことが重要。
転移という治療法も興味深かった。一般にトラウマとは、現在では操作不可能(記憶さえも抑圧されて、ない場合すらある)な心の傷である。そのままでは、治療できないが、治療しないと別のところで回帰してしまい、病状として現れる。その場合、精神医は心の傷が起こった当時の人間関係をそのまま精神医と患者の形にすり替 -
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非常にわかりやすい。研究者が観察して得た知見だけでなく、心の病の当事者が発した言葉も重視しているため、極めて共感的だ。思うに、発達障害やうつ病など、目に見えない心の状態を浮き彫りにした精神医学は、我々の認識を刷新しただろう。こういった心の状態は現実にその状態なのであって、受け入れたくなくても、現実なのだ。しかし、心の状態の認識を獲得したら、我々はこれに向かい合い、当事者を理解できる。当事者にしても、心理学や医学などの学問の恩恵もあって、自分の状態を言語化して表明でき、相互理解が可能な社会が準備されつつあると言ってよい。とはいえ、個人個人の状態は千差万別であり、学問の抽象概念で一括りに理解してし
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興味深く、ほぼ一気読みで読んでしまいました。
心の病気は本当に心だけの問題なのか、体の病気とどう違うか、どのように治療していくか、それぞれの病気の症状はどんなもので、患者さんはどう感じているのか。とても分かりやすい言葉で書かれていて一気に読み進めてしまいました。
私は過去にうつ病と診断され、現在は躁うつ病(双極性障害)と診断されているので、その辺についての知識はあったのですが、統合失調症や認知症、発達障害についてはまだまだ知識がなく、なるほど。と思いながら読み続けていきました。
病気だとその人すべてが病気と思ってしまいがちなところですが、人間らしいところが残っているからこそそれが症状とし -
Posted by ブクログ
「創造力が病にもかかわらず現れたのか、それとも病のためにこそ現れたのか」ー ヤスパースはかつて創造と狂気の関係についての問いをこのように立てた。本書は、およそこの問いに対する哲学者たちの解釈と理解を通して、狂気の歴史を辿るものである。それは、いわゆる「病跡学」と呼ばれるものの成果でもある。「病跡学」とは初耳だが、本書の中でも紹介されているヤスパースによる次の定義の通りだ。
「病跡学とは、精神病理学者に興味のある精神生活の側面を述べ、かような人間の創造の原因に対してこの精神生活の諸現象諸過程がどんな意義をもつかを明らかにする目標を追求する生活記録である」
病跡学の対象は芸術家や哲学者であり、 -