【感想・ネタバレ】斜め論 ――空間の病理学のレビュー

あらすじ

ケアは、どうひらかれたのか? 「生き延び」と「当事者」の時代へと至る「心」の議論の変遷を跡付ける。垂直から水平、そして斜めへ。時代を画する、著者の新たな代表作! 自己実現や乗り越えること、あるいは精神分析による自己の掘り下げを特徴とする「垂直」方向と、自助グループや居場所型デイケアなど、隣人とかかわっていくことを重視する「水平」方向。 20世紀が「垂直」の世紀だとすれば、今世紀は「水平」、そしてそこに「ちょっとした垂直性」を加えた「斜め」へと、パラダイムがシフトしていく時代と言える。本書は、ビンスワンガー、中井久夫、上野千鶴子、信田さよ子、当事者研究、ガタリ、ウリ、ラカン、ハイデガーらの議論をもとに、精神病理学とそれにかかわる人間観の変遷を跡付け、「斜め」の理論をひらいていこうとする試みである。著者は、2015年のデビュー作『人はみな妄想する』でラカン像を刷新し、國分功一郎、千葉雅也の両氏に絶賛された気鋭の精神医学者。デビューから10年、新たな代表作がここに誕生する。

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Posted by ブクログ

現在ケア論が隆盛している中、水平性(横並び)が善のようにいわれ垂直性(権力)が否定される時代にあり、どちらかというわけではなく、ガタリの「斜め横断性」よりヒントを得て、斜めの重要性を、ビンスワンガー、中井久夫、上野千鶴子、信田さよ子、当事者研究より紐解いている。理論的にはガタリ、ウリ、ラカンを参照しているので、その部分は難解だが、依存症分野での説明は理解しやすかった。水平性の問題点も別の意味(新自由主義的管理)での視点で見ることも重要と考える。

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2025年09月12日

Posted by ブクログ

会社の同僚による面白かったとの感想で読んだが、確かにこれは興味深い。
主要なテーマとして、時間軸と空間軸の話がなされている。また、こういう本だから中井久夫や斎藤環が登場するのは当然だが、上野千鶴子やハイデガー、國分功一郎が並列に参照されるのはとても新鮮であったが、そこが本書の真骨頂かもしれない。
らに全く無知だった当事者研究とは何かについて、1ミリくらいは理解が進んだように思う。

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2025年11月29日

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