中路啓太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
良いフィクションというものはジャンルに関係なく、今の人の生き方や世界の在り方を問うものもあるように思うけど、この『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語だったと思います。
上巻でロンドンでの軍縮会議を終え、話は国内へ。条約の内容を受け入れられない、日露戦争の英雄、東郷平八郎をはじめとした海軍関係者、政変を狙う野党、そして大きな影響力を持つ枢密院。
米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による財政健全化と不況脱却のための減税を実現したい浜口内閣は、各方面に粘り強い交渉を進めていくが……
歴史的な記述の詳細さは上巻でも健在。特に天皇の政治的な部分に関しての当時の人々の思考の再現 -
Posted by ブクログ
『人は上に昇れば昇るほど、濁ってゆかねばならんのだ――。』
『ロンドン狂瀾』の下巻の帯に書かれていたこの言葉にただならぬものを感じ、著者も作品の評判も満足に知らないまま購入しましたが、上巻を読み終えた段階では、その選択は大当たりでした。とにかく抜群の読み応え!
1930年、日米英など五大海軍国によるロンドンでの軍縮会議が間近に迫り、外務省の雑賀は軍縮会議への随員を命じられる。しかし会議の首席全権候補の筆頭である若槻は、困難が予想される会議で責任を負うことを拒否。雑賀は若槻の説得を始めるが……
米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による軍事費の削減は、不景気に沈む日本にとっては何よりも必要 -
Posted by ブクログ
中路啓太!
なんとも興味の募る作家に出会ってしまいましたよ!
この作品、すでに日本史でご存知のとおり、改革に失敗、老中の座を陥落した人。水野忠邦の改革の頃、その家臣でもある物集女蔵人が主人公。
主君の志を叶えるべく奔走、しかし途中でその甥、水野主馬の陰謀で島送りになる。
そこで出会ったヤクザ、源九郎と共に島抜けする。
改革に至るまで、そして頓挫し勢力闘争。
そんな中に再び身を投じる蔵人。
だが蔵人も源九郎も主君、水野忠邦側、その政敵側双方から追われる。
信じられるのは己の忠義の志。それは正しいと自惚れる武士の本懐。それを応援する妻。男、蔵人に惚れ込む商家の主人。
不器用な生き様を己 -
Posted by ブクログ
ここにも日本の恩人がいました。
吉川広家。
歴史好きといいながら、適当な時代や人物をつまみ食いにしてきたので、知らないことがたくさんあります。
吉川広家の父の吉川元春はよく知っていましたが、広家のことは名前くらいしか知らず(^_^;)
関ヶ原で動かなかった毛利勢という薄い認識しか。
毛利元就の孫同士、従兄の輝元が器をわきまえずに西軍の総大将に担がれ、毛利家は滅亡寸前。
そこを広家の執念で毛利の家名を守り通す。
領地は三分の一になるものの、関門海峡に沿う位置に毛利家を存続させたことは、260年後の明治維新につながる。
大河ドラマ「花燃ゆ」とつながるんですよ。
長州藩の城地を日本海側の萩に -
Posted by ブクログ
日本の自虐史観に一石を投じていた。
西欧列強の植民地から解放してくれたと感謝するパラオ人との友情を軸に物語は構成されている。
これまで残忍な日本軍の本ばかり読んでいたので、新しい戦争への視点で興味深かった。(いばり散らす嫌な人物や、全体主義の空気も描かれながら、一般の日本の兵隊の善良さも描かれている。)
白人の奴隷であった有色人種の中で唯一一矢報いた日本。ということが強調されており、戦争しなければ支配されていたじゃないかと語られる。
植民地支配についても現地の発展に尽くしたと好意的で、パラオの日本人への感謝と憧れがベースとなっている話。
戦争の悲惨さもしっかり描かれており、戦前の日本人の美徳を