中路啓太の一覧
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ユーザーレビュー
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二・二六事件を中心に昭和天皇をテーマとした短編集。戦後世代の作家でこの時代をここまで描けるという想像力に大きなな感嘆。
最初は繋がりのないような短編が、鈴木貫太郎と昭和天皇の絆にじわじわと繋がってくる連作。
終戦記念日を前に読んで良かった。
Posted by ブクログ
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2022-2/8-15この時代には子供やった。なんか騒然とした時代で、高校の姉が学校封鎖で帰ってきたりしてたなあ。純粋で未熟な若者と熱い想いを持ち続けるロートルの友情もまた熱い。昭和の短い青春が凝縮してました。久々の星五つ
Posted by ブクログ
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良いフィクションというものはジャンルに関係なく、今の人の生き方や世界の在り方を問うものもあるように思うけど、この『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語だったと思います。
上巻でロンドンでの軍縮会議を終え、話は国内へ。条約の内容を受け入れられない、日露戦争の英雄、東郷平八郎をは
...続きを読むじめとした海軍関係者、政変を狙う野党、そして大きな影響力を持つ枢密院。
米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による財政健全化と不況脱却のための減税を実現したい浜口内閣は、各方面に粘り強い交渉を進めていくが……
歴史的な記述の詳細さは上巻でも健在。特に天皇の政治的な部分に関しての当時の人々の思考の再現であったり、憲法解釈をめぐる攻防であったり、そこをめぐっての展開が丁寧になされていたと思います。
要所要所で感じられるのは、国益であるとか、国民を置き去りにしていく政治家たちの様子。政権交代をもくろむ野党は、国全体のことを考えず自分たちの権力拡大のために内閣を攻撃し、内閣は内閣で不答弁の戦術を繰り返す。今も昔も政治は何も変わっていない。
そしてメンツやプライドから妥協点を見出せくなっていく、海軍司令部や東郷平八郎。浜口総理大臣に対し、嫌がらせのような質疑を繰り返し、条約批准を防ごうとする枢密院。国益や、日本の国際的な立ち位置などを度外視し、自身の立場からしか物事を考えられない権力者たち。思想が凝り固まった人間たちの厄介さというものを、いやが応にも感じさせられる。
下巻では浜口総理大臣の姿が印象的。自身の命に代えても、国のため、国民のため条約を絶対に批准させるという信念がすさまじかった。それは軍部との対立だけでなく絶対的な力を持った枢密院との対立も辞さない姿勢にも表れていると思います。
小説によると、国内は不景気にあえぎ、上記したように軍部の反対論も根強かったものの、内閣や浜口総理に対する支持率は高かったそう。それもこの信念の強さや、国を想っての行動というものが、伝わったからではないかと思います。
だからこそ物語のラストの展開、そしてその後の日本のたどった道筋を含め皮肉というほかない気がします。1930年の軍縮会議もむなしく、その後満州事変、515事件や226事件で軍部の力は強まり、そして太平洋戦争へ。
こうした日本の流れも、この『ロンドン狂瀾』を読んでいると、すでに予兆はあったのだなと感じます。国民の政治家への失望と、一方で勇ましい軍部への期待。軍縮会議で掲げられていた協調と和平は彼方へ遠ざかり、日本は戦争へとひた走っていく。
最初に『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語と書いたけど、政治不信と救世主への待望は、アメリカのトランプ大統領をはじめ世界中で起こっているし、日本の政治不信ももちろん深刻な状態で、それが今と重なったからこそ、こう書いたのだと思います。
人は歴史から学ぶのか、それとも歴史は繰り返されるのか。
1930年激動の時代を描いたこの『ロンドン狂瀾』は、単に歴史上の出来事を小説に落とし込んだだけでなく、今の時代に対し問いかける物語でもあった気がします。
Posted by ブクログ
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『人は上に昇れば昇るほど、濁ってゆかねばならんのだ――。』
『ロンドン狂瀾』の下巻の帯に書かれていたこの言葉にただならぬものを感じ、著者も作品の評判も満足に知らないまま購入しましたが、上巻を読み終えた段階では、その選択は大当たりでした。とにかく抜群の読み応え!
1930年、日米英など五大海軍国
...続きを読むによるロンドンでの軍縮会議が間近に迫り、外務省の雑賀は軍縮会議への随員を命じられる。しかし会議の首席全権候補の筆頭である若槻は、困難が予想される会議で責任を負うことを拒否。雑賀は若槻の説得を始めるが……
米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による軍事費の削減は、不景気に沈む日本にとっては何よりも必要なもの。一方で日露戦争の勝利後、発言力を増す海軍関係者は軍縮に対し、日本の主張が認められないならば、軍縮の条約を結ばないこともやむなし、と徹底的な反抗を示す。
一方で米英は日本の財政事情を知っていて、最終的には軍縮の条約を結ばざるを得ないと考えているため強気に交渉を進めてくる。
海軍の顔を立てつつ、いかに妥協点を見出すが軍縮会議の大きなポイントとなってきます。
歴史的な記述が多いので、最初は少しとっつきにくさは感じましたが、当時の国内外の政治や海軍の状況を詳細に小説に組み込み、話を展開していく手腕はとても巧く感じました。相当取材を重ね資料を読み込んでいることが伝わってくるし、それによってより読み応えが増している。
歴史的記述だけでなく人間模様も読ませる。国益、国民を第一に考え粘り強く交渉に臨む雑賀や若槻。二人に信頼を寄せる浜口総理の決意など、彼らの気概や、矜持もともても熱い。
当時は今以上に政治家の命が狙われることの多かった時代。それでも自身の命の危険すらも顧みず、国のため国民のため行動し、そして決断する。そうした彼らの心理も読みごたえの一つ。一方の海軍側の動きも詳細に描かれていて、内容はより濃くなっていきます。
発言一つで交渉が不利になり、共に会議にやってきた海軍側の人間は若槻や雑賀に再三圧力をかける。そして国内の軍関係者も不穏な動きを見せるなど、軍縮会議は波乱万丈の展開が続きます。
上巻でロンドンでの軍縮会議は終わるものの次に待つのは、様々な反対派が待ち受ける国内での条約の批准をめぐる攻防。
下巻も読みごたえのある展開が期待できそう。
Posted by ブクログ
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中路啓太!
なんとも興味の募る作家に出会ってしまいましたよ!
この作品、すでに日本史でご存知のとおり、改革に失敗、老中の座を陥落した人。水野忠邦の改革の頃、その家臣でもある物集女蔵人が主人公。
主君の志を叶えるべく奔走、しかし途中でその甥、水野主馬の陰謀で島送りになる。
そこで出会ったヤクザ、
...続きを読む源九郎と共に島抜けする。
改革に至るまで、そして頓挫し勢力闘争。
そんな中に再び身を投じる蔵人。
だが蔵人も源九郎も主君、水野忠邦側、その政敵側双方から追われる。
信じられるのは己の忠義の志。それは正しいと自惚れる武士の本懐。それを応援する妻。男、蔵人に惚れ込む商家の主人。
不器用な生き様を己の本懐のために命を削る男の物語は壮絶ですざまじい。
涙が何度も波のように繰り返し流れるのを我慢できない。
この作家、今まで時代小説作家が踏み入れない分野にも、名作が多いようで、これはたまらない!
Posted by ブクログ
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