高橋秀実のレビュー一覧
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季刊誌「考える人」連載中に前半だけ読み、今回文庫版で完読。
冒頭、名刺を交換しただけの中年の「縄文男」が、なれなれしく「お前、来週の水曜日、時間ある?」と囁きかけてくる。そこからファミリー・ヒストリーの旅が始まる。この中年男がだれかずっと気になっていたのだが、なんと、彼が文庫版の解説を書いていた!
現在の自分から見て、親が2人、その親の親が4人、そのまた親は8人というように、時間をさかのぼると、祖先はどんどん増えてゆく。逆に時間を下ると、ひとりの祖先から子孫が枝分かれし、これもどんどん増えてゆく。両者は相似の関係。著者がそれを実感するくだりがおもしろい。
キーワードは「佇む」。先祖がいた場所ま -
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これは面白かった!
「校正」という仕事をめぐるノンフィクション、と書かれていた通りに
校正の仕事の内容・知識と、その仕事をされている方の想いについて知ることができた。
ただ、これからもっとAIが進歩してきたときに、こういう仕事はどうなるんだろう、と思ったり。
以下メモ(豆知識も)
校正とは
・校正とは「照合」比べる・正す・元の原稿と照らし合わせる
・校正とは文を読むことではなく字を見つめる。
・校正者は「正確」ではなく「不正確」の許容範囲を定めている。
・本当にそれを指摘すべきか。赤字を出すセンスより出さないセンス。全体を考えて最終的に重大な間違いが出ないように努力する
・日本最古の書と言 -
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この本に登場する「父」(=著者の父親)は80歳代後半。一方で私の両親はともに80歳代前半。現在私は両親といっしょには生活していないが、両親の認知機能がなだらかな坂を下るかのように低下しているのは日常会話などからなんとなく感じられる。だから私がこの本を読んだきっかけは、自分の両親(さらには自分自身)の認知症がより進行した場合に備えた“予習”だ。
この本の副題-認知症の父と過ごした436日-とは、著者の母が亡くなった日から数えて父本人が亡くなるまでの日数を指している。つまり父にとって長年生活を共にしてきた妻がこの世からいなくなった時点がスタート。だが冒頭から「父は母の死を認知していないようだった -
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脳の研究は検証方法や、実験群の設計が難しく、世の中には非科学的、エビデンスに基づかない性差論など多く存在する、という話を研究者が語っていたのを聞いたことがある。性差はないとする人もいれば、面白おかしく何でも性差に結びつけて議論されることもあり、一様に語ることはできないことなのだろうなと感じる。一方、その点で、本書の面白みの一つが男女の小学生への友達とケンカした時のやりとりについてのインタビュー。全てではないとは思うけど、説明を聞かない、聞こうとしない、聞き出そうと努力したり、理解しようとしない姿勢はもしかしたら幼少期から根付いてしまうものかもしれないと感じた。
10年も前の本だけど、今読むべき -
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ことばの番人とは、校正者のことです。
校正とは、文章を読んで、誤字や脱字などを見つけて修正することです。
ことばに対する膨大な知識とこだわりを持つ、超ベテランの校正者に著者が話を聞きます。
へぇ〜と感心し、そこまでやるのか〜とため息が出るエピソードがいろいろ出てきます。
出版を陰で支えて、ことばを守る校正者。
初めて知ること満載の本です。
本のレビューを書いて、ことばで感想を発信しているわたしたちも読んでおくと良いと思います。ことばについての考えが変わるかもしれません。
超オススメの一冊です!
著者の語り口が滑らかで、ときおりクスっと笑えるユーモアもあります。読む前は堅 -
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現代の日本の道徳について考察したノンフィクション。
テレビの事件報道を見ていて「これは道徳的にどうなのか」と思ったのが、この本を読むきっかけ。(首相の息子のスキャンダルなど) 道徳は家庭内のしつけとして、親から教えられるものと思っていたが、現在は学校で学ぶものらしい。この本では、子供から大人まで 道徳観についてのインタビューを行い、教育以外にも様々な現場の道徳観を知ることができて大変面白かった。
以前、大学教授が書いた道徳本を読んだが、論理的なあるべき論が多かった。正論だし言いたいことはわかるが、現実世界ではどうなのと思うことが多かった。道徳は人が共生していくための最低限のルールで、頭の中だ -
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趣味はないという著者が、いろんな趣味を持つ人のところへ行って、その話を聞きながら、趣味とは何か?という核心に迫っていくような本。
蕎麦とヨガの章が爆笑で、著者のすっとぼけキャラがいい感じです。趣味にのめり込む人々がいる一方、冷めきった著者の態度と、それに乗っかる自分というような構図で、生あくびが出るなどの正直すぎる描写にはニヤニヤせざるを得ません。
しかし、誰になんと言われようと、本人が好きでやってるのが趣味なんだからいいじゃない、コスパ、タイパは不要。趣味とはそういうものだよねと思います。
あとは、人は何もしないことには耐えられないし、かと言って仕事で埋め尽くされるのも辛いから、余った時間 -