田中道昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書にある既存金融機関で仕事をしている身にとってみると、たいへん難しい課題を次から次へと投げつけられているような、そんな読み方になってくる。このような状況下、変われ変われと言われ続けて、定点にあるものはほぼ否定されて、動き続けることが正解だということなのだろう。ある一点からの変革によってたどりついた場所は即座に否定されるのである。
そういう状況を鑑みると、本書に書かれていることもまた一寸先は闇とも言えるだろう。それぐらいの勢いで変われ変われの課題を投げつけられる。
やはり本書を振り返ってみても思うことは、金融は手段なのだということなのである。手段が目的化した既存の金融機関にとって、その意識を変えることは非常に負荷が大きいことなのだが、そこをなんとかして金融の本筋に戻るしかない。
顧客が経験価値として心から欲するところへ向かうしかあるまい。 -
Posted by ブクログ
自動車産業の未来予想図がここにある!
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えていると、言ってきましたが、どのよう
に変革しそうなのか、
多面的に解説された本です。
好みの自動車を購入し、ガソリンを燃料に人間がクルマを動かす。
今では当たり前の自動車を取り巻く環境が大きく変化しようとしています。
ガソリンが電気に。
人間の運転から、AIが運転する(自動運転)。
自分の都合に見合った乗り方を提供してくれるサービスを選択し、必要な時に必要
なだけ車に乗る(ライドシェア)。
そんな世界が遠く無い未来に訪れようとしています。
飛行機で考えてみれば、一般の人は、乗る飛行機がボーイングやエアバスだとか航
空機メーカーで選ぶことはありません。
行き先や予算、スケジュールの都合に合わせ最適な航空会社を選択します。
自動車の世界も、お客さまの都合に見合った「ライドシェア」会社を選択するよう
になる、との本書の予測は衝撃でした。 -
Posted by ブクログ
『フィジカルAIの衝撃』は、現在注目を集めているフィジカルAI業界について、主要企業や技術構造、今後の成長可能性を理解するうえで勉強になる本だった。特に、投資先を考える際に、単に有望な企業名を知るだけでなく、その企業が業界の中でどのような位置を占め、何を強みにしているのかを把握できた点が大きかった。
本書を通して印象に残ったのは、フィジカルAIが一つの技術だけで成立するものではなく、複数のレイヤーによって構成されているという点である。AIの計算基盤やロボットを動かすための共通基盤、センサー、制御技術、アクチュエーター、精密なものづくりなど、それぞれ異なる技術領域が組み合わさることで、現実世界で動くAIが成立する。
その中でも、NVIDIAの存在感は非常に大きいと感じた。日本企業の強みを重視する視点から見ても、NVIDIAはAIの計算基盤や開発環境など、フィジカルAI産業の中核に近い部分を握っている。市場から高く評価されているのも、単なる期待だけではなく、技術とエコシステムによる裏付けがあるからだと改めて理解できた。
また、テスラにも大きな可能性を感じた。自動運転やロボット開発を通じて蓄積しているAI、データ、ハードウェア、量産技術がうまく結びつけば、フィジカルAI分野の主要プレイヤーとして一段と存在感を高める可能性がある。現時点では不確実性も大きいものの、技術が本格的に開花した場合の成長余地は非常に大きいと感じた。
一方で、日本企業については、AIの計算基盤では米国企業に後れを取っているものの、ロボットを正確に動かすための制御技術やセンサー、部品、精密加工など、現実の機械を動かす領域に強みがあることが整理されていた。フィジカルAI業界を考える際には、NVIDIAのような基盤企業だけでなく、ロボットの身体部分を支える日本企業にも目を向ける必要があると感じた。
投資の観点でも、銘柄名だけを追うのではなく、業界全体の構造を理解したうえで、各企業がどのレイヤーを担っているのかを見ることが重要だと学んだ。同じフィジカルAI関連企業でも、計算基盤を提供する企業、制御技術を持つ企業、センサーや部品を供給する企業では、競争優位性や成長要因が異なる。本書は、そうした違いを整理するための視点を与えてくれた。
ただし、不足を感じた部分もある。特に、中国のフィジカルAI産業についての記述が少なかった点は気になった。Unitreeをはじめ、中国では有力なロボット企業が台頭しており、製造能力、部品供給網、コスト競争力の面でも無視できない存在になっている。日本がこの分野で優位に立つための条件を考えるのであれば、中国企業の成長や中国政府の産業政策についても、より踏み込んで扱う必要があったように思う。
さらに、米中対立が続く中で、日本がどのような立ち位置を取るのかという地政学的な視点も、もう少し欲しかった。技術力だけではなく、半導体や重要部品の供給網、輸出規制、国家間の連携といった要素も、今後のフィジカルAI産業を左右するはずである。本書ではその部分が十分に描かれていなかったため、別の書籍や日々のニュースで補う必要があると感じた。
また、文章については、ChatGPTが生成した文章のような表現が多く、どこか見覚えのある文体に感じられた点も少し気になった。ただし、本書を読む目的はフィジカルAI業界についての知識を得ることだったため、内容の有用性を大きく損なうものではなかった。
総じて、本書はフィジカルAI業界を理解するための入門書として有用だった。特定の銘柄を推奨するというよりも、産業全体を俯瞰し、各企業の役割や強みを整理するための枠組みを得られた点に価値がある。中国や地政学の視点は不足していたものの、今後さらに情報を集め、フィジカルAI関連の投資先を考えていくための取っ掛かりとしては、十分に参考になる一冊だった。