井上祐美子のレビュー一覧
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宋国第三代、趙恒の時代(1020年)。恒は偉大な伯父(太祖:匡胤)にも父にも似ず優柔不断で皇后にも争いが絶えない。そんな中、時代の富めるものは不老不死を探し、伝説の桃源郷を求める。その答えに近しい旅芸人の少女、宝春。そしてなにやら事情の在りそうな貴人、戴星。若くして科挙最終試験に到達し、どうやらわざと落ちた希人。この三人が出合い、物語がスタートするまでのお話がこの巻。
八大王(八王爺)とも呼ばれる現王の兄、偉丈夫(=趙元份)は三男の恒が王になったのを(兄も)帝位を狙わなかったのは太祖を弑逆したかもしれない父に対して異議を唱えるのを無謀と判断したから。寇萊公(寇準、平仲)という宰相と懇意。宋に帰 -
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同じ作者の「朱唇」を先に読んでいて、これで2冊目です。
今回は短編集ということで、全て中国モノの幻想怪奇譚。
たくさんレビューを書いてきたのに、
こんなにレビューが難しいご本も珍しいです。
面白い小説だったかと言われれば、文句なくどれも面白い。
漢詩のお好きな方や中島敦など好まれる方にもお勧めです。
多分、中国モノの良い読み手であるだけでなく、漢詩などにも
お詳しいのだろうなと想像できる著者の筆致は冴えていて。
品のよい、清雅な印象と、闊達・叙情が入り混じって
本当に楽しい時間を過ごしました。
でも、細かくあれこれ言おうと思うと、どれも饒舌な気がして。
それだけ惑溺して読んでいたの -
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ネタバレ歴史小説。時代は千百年代。中国。宋。
短編集。
表題は北に連れ去られたはずの帝の妹が帰ってくる話。ところが。
公主は実は真っ赤な偽物。本物は北の地で没する。詐欺をした女は死刑。
「潔癖」はひょうきんな話。「僭称」は帝に祭り上げられた男の気持ちがわかる気がする。
「芙蓉怨」は破れた国の王の后が自分の誇りを守り抜こうとする話。
一番の好みは最後の「涅(すみ)」。戦略、用兵ものだからかな。「贋作」のトリッキーさも好きだけれど。主人公の力強さがいい。最後に涅を顔に入れたままでいいといい、将軍として力強く慎重に生きていく。
歴史物。特に中国物はキャラの名前の漢字がなかなか引っ張り出せなくて苦 -
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中国史上屈指の名判官・包季仁の活躍を描いた連作短編集「青天」。包希仁という人物を知ったのは「桃花源奇譚」でした。同じ作家さんです。
なんというか、勝手に「遠山の金さん」的なイメージで覚えていたので、作中の活躍は予想外。「大岡越前」方面なのか。
いやいや、気軽に市井と交流をするというのは「遠山の金さん」で、公平な裁きという点では「大岡越前」ということなのかな。ちなみに自分的に名裁判といえば、「遠山の金さん」です。おじいちゃんと一緒に松方弘樹演じる金さんを見ていた記憶。懐かしい。
孫懐徳とのやりとりが微笑ましくて何より良い。助手というには役者不足な気がするので、世話役というところでしょうか。主人 -