小林恭二のレビュー一覧

  • 三鬼

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    30歳を過ぎてから「かっこいい」と思ったことで手を出した新興俳句。その自由な、理解し難い文体により特高に目をつけられる三鬼。いつしか、彼のシンガポール人脈を有用と見た陸軍の誘いを受けるか、出頭するかの決断を迫られることに。
    昭和15年夏という、自由人が自由人として生きられた最期の時間を鮮やかに描いた本作。三鬼の軽妙な振る舞いにシンガポールの苦難の歴史が折り重なり、まさに読み応え十分だった。
    ストーリーもさることながら、三鬼と他の登場人物との粋なやり取りがまた心地よい。波郷との信頼関係に基づく罵り合い、山下中将・安倍警視総監・高浜虚子との会話劇、ホテルのカフェで綴った数々の手紙の語りかけるような

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    2026年08月28日
  • 三鬼

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    めちゃくちゃ面白かった。関心があってたまたま、今年に入ってから俳句や特高について触れる機会が多かったものだから、余計にいい機会だった。ひと息に読んでしまった、何処がフィクション部分なのか判然としないところ以外は久しぶり好きな小説を読んだ満足感がすごい。

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    2026年07月19日
  • 三鬼

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     新興俳句の旗手として活躍した西東三鬼を視点人物に、「京大俳句事件」からアジア太平洋戦争開戦直前の時期までを描く。西東が1925年から3年間シンガポールで歯科医院を開業していたという伝記的事実を出発点に、イギリス領シンガポールの中国系住民・インド系住民との対立を軍事侵攻の「弱い環」として利用しようとした陸軍と、「京大俳句事件」以降の俳句統制を貫徹せんとする内務省・特高警察を巻き込んだインテリジェンスの物語として仕立て上げていく手腕はさすがの一言。「京大俳句事件」というのは確かによくわからない事件で、これは改めて調べ直さなければならないのだけれど、石田波郷や三橋敏雄、小野蕪子、高浜虚子ら文学史上

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    2026年07月15日
  • ゼウスガーデン衰亡史

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     20数年ぶりに再読した本。


     ロス五輪が開催された年、華やぎとは縁のない下高井戸の地にうらぶれた遊技場がオープンした。メインアトラクションはペンキの剥げた錆だらけの回転木馬。他の施設も倒産した地方の遊園地の不要品ばかり。客は全く入らない。好景気に湧き、バブルへと世の中が絶頂へ向かおうとしているときに、ひっそりと産声をあげたこの廃墟のような遊技場。しかし、この遊技場こそ、後に日本中を狂乱の渦に巻き込み、内乱へと導いたゼウスガーデンの前身だった。


     子供の夢を形にした遊園地は数あれど、大人の欲望を実現させる遊園地はかつてなかった。プリンセスになりたいとか、ヒーローになりたい、なんて夢は長

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    2017年08月15日
  • ゼウスガーデン衰亡史

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    これは、是非みなさんに読んで欲しい本です。 小林恭二氏は小説の人ではないのですが、この一発だけでもう充分に小説のお仕事を果たしました。はい

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    2009年10月04日
  • 悪への招待状

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    歌舞伎の堅苦しいイメージが簡単に崩れます。
    江戸時代にタイムスリップしたみたいだ!!
    とっても読みやすい新書です。

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    2009年10月04日
  • 電話男

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    「電車男」ではなく「電話男」。

    実は、この小説は15年以上も前に書かれたもので、これは2000年に角川ハルキ文庫から再び出版されたもの。
    <電話男>それは電話相手の話をただただ聞くだけの存在、報酬も求めず、相手に自分の話をすることもない。顔はわからず、素性も一切わからない。
    しかし、全国に数多くの電話男が存在し、人々は彼らに電話することで心の孤独を埋めようとする。
    それは次第にエスカレートし、社会全体の問題となっていく。
    この小説のすごいところは、現代においてもそれが当てはまるところだろう。
    インターネット時代が到来し、人々はメールや、サイトによってコミュニケーションをとるようになった。
    そ

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    2009年10月04日
  • 三鬼

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    昭和15年、この時代を描く小説は、たいてい陰鬱とした描写で軍靴の音が聞こえてくるようなものが多い。
    本作はそうではない。主人公は、自らも結核の持病を持ちながら、時代に翻弄されながら、それでも颯爽と、毅然と生を謳歌している。
    この5年後には終戦となるが、登場人物たちはそれを知らない。その5年は彼らにとって、弾圧と忍耐の長い時間となるだろう。それでも、物語はまるでハッピーエンドの映画を観るように清々しく終わる。
    浜辺で虚子が語ったように、彼らのうち終戦を生き延びた者たちには、その先の人生がある。本作は、暗い時代の前日までを、確かにいたであろうある男とそれを取り巻く人間たちの生の煌めきを切り取ったよ

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    2026年09月19日
  • 三鬼

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    物語と説明解説が合わさった構成が良かった。

    時代における俳句の存在や、俳句の流派の説明や、シンガポールの歴史を知ることができた。

    解説部分も興味深く読めるし、物語部分もエンターテイメントに長けていて、とても面白かった。

    事実と物語が混ざっているので、どれがフィクションなのか分からない。
    結核の少女との結婚やパイロットやエアガールなどは実在しないけど、エピローグで実在の人物と並んで実在しない人の生涯と没年も書かれているから全ての話が事実なのでは?と思ってしまう。

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    2026年09月18日
  • 三鬼

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    第二次世界大戦前夜の不穏な時代に登場した異能の俳人、西東三鬼。フィクションではあるけど、実在の人物で、伝記を読んでいるよう。
    三鬼は、女遊びはするし自分の夫だったら最悪だけど、義理堅くはあって離婚した後も母子の面倒はきちんと見る。友人も多い。人たらしってこんな感じなのかな、と思わせる。軽妙洒脱で飄々としていて、でも芯がブレない。なんとも魅力的なキャラクターに描かれている。
    言論統制をはじめ、贅沢を禁止するなどの日常生活の締め付けが進んでいく様子を読んでいると、平凡な毎日が本当に愛おしく思える。

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    2026年09月15日
  • 三鬼

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    戦前の不穏な空気が描かれていてそこが興味深かった。
    小林恭二さんが多くの文献にあたって当時の日本社会や海外での日本人社会を描写したところが特にリアルだ。

    一番忘れられないのは、シンガポールでの日本人社会の描写。

    温和で理性的だと評判で、一様に名誉を重んじるが、その名誉というのが他国人にはさっぱりわからない厄介な代物。公然と侮辱したとかではなく、往来ですれ違う時変な目つきをしたとか、そういった瑣末なことで躊躇なく斬りかかってくる。そしてそれが咎められるといつのまにかいなくなっている。訊くと自殺したと言う。名誉のための切腹。あるいは詰腹。

    神に変わって世間が日本人にとっての価値基準であった時

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    2026年09月14日
  • 三鬼

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    実在した俳人である西東三鬼とその周辺の人々を題材にした小説。第二次大戦以前の安倍源基ら特高が「単一の文化こそが国家の力の源泉だ」(p275)と考えていたことは史実であろうし、それに便乗していた「豚野郎」(p251)小野蕪子に逆に興味が湧いた。本来立場が違うはずの石田波郷や高浜虚子との交流は心温まる。この時代の忌まわしき病である結核に罹患しているヒロイン市子がけなげだ。三鬼はヒットラーに似てるともグレン・ミラーに似てるとも言われたようだが(p347)断然グレン・ミラーの方が表紙のイメージに近く、いい男だな。

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    2026年09月06日
  • 三鬼

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    ネタバレ

    昭和15年に発生した「京大俳句事件」。治安維持法違反で、同人が一斉検挙されるなか、新興俳句のカリスマ・西東三鬼は特高刑事に尾行される。しかし他にも彼を尾行する者の影が。シンガポールでの陰謀。

    西東三鬼は名前を聞いたことがあるくらいでほぼ知らないけど、本屋で何故か惹かれて購入。暗い時代の弾圧事件。読んでいてちょっと不安になってしまったりもするけど、面白く読めた。

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    2026年07月12日
  • ゼウスガーデン衰亡史

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    SFと言ってもやっぱり描かれた時代のイメージが強く反映されるというか、ともかくバブル時代のまま2030年くらいまで進んでる感じ。ともかくデカい石像を作れとか、、まぁ今でもないわけでもないか。逆に多様性とか言ってもインバウンドは有名どころに集中して、見た目は違っても本質はそんなに変わってないのかな。
    などという大仰な感想はさておき、しかし物語はいちいち大袈裟に展開するのであって、なんかアホっぽく楽しめば良いんだけど、日本が総エンターテイメント空間と化した未来は今の日本と重なる部分もあり、しかし手が足りないという問題については全く解決策が出ていないのであった。バブル時代は人もモノも溢れていたのであ

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    2026年02月19日
  • したたるものにつけられて 自選恐怖小説集

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    「自選恐怖小説集」とあるように恐怖が根底にある文庫オリジナル短編集。収録作に共通しているのは、登場人物が何らかのある考えに捕らわれており、その固執した自意識によって状況が一転してしまう点。その執念に捕らわれたら最後、まさに恐怖である。こけおどしのスプラッターホラーなどはなく、人間の意識によって日常が歪んで狂っていく恐怖を味合わせてくれるという上質な一冊。

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    2023年09月11日
  • 日本国の逆襲

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    日本の姿を風刺的に描いたSFチックな短篇集。筒井康隆を彷彿とさせるパロディとユーモアとナンセンスが偽悪的に炸裂しており、素晴らしい想像力に脱帽。風刺めいた作品を編み出す技術と知力と鋭い分析力を持つ著者にはこういった短篇集を何冊も上梓して欲しい。その時期に決して遅すぎるということは無いのだから。

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    2022年11月23日
  • 日本国の逆襲

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    この著者の本を初めて読んだが、とてもとても面白かった。短編集なのだけど、どの作品も笑った笑った。

    ある種の日本人論も含め、どの作品も自虐的ギャグっぽい内容で、皮肉が利いている。

    ユーモア系のSFってもともと好きなのだけど、筒井康隆氏のブラックユーモアに通じるなあと思いました。

    特に気に入ったのは「大相撲の滅亡」と「酒乱クラブ」

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    2014年09月21日
  • この俳句がスゴい!

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    新聞で広告を見て買い求める。著書の俳句評論の本は久し振り。
    「実用 青春俳句講座」や「俳句という遊び」「俳句という愉しみ」の今に生きる俳人たちのへの評論や句会の実況は、ジュ―ジュー肉の焼ける音が聞こえるようで、取れたての生きの良さが素晴らしかった。
    虚子から兜太までの名句鑑賞の本書には、そんな面白さは望むべくもないかなと手にしたときは思ったのだが、ちゃんと読み始めると、この読書はもう快感としか言いようがない。

    例えばこんな一句を語る文章。
    寒卵 どの曲線も かえりくる
    (前略)そもそも生物というのは、多かれ少なかれ騒がしいもので、無機質の静かな落ち着きぶりとはまったく異世界にあります。しかし

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    2015年12月19日
  • この俳句がスゴい!

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    スゴい!シリーズにとうとう俳句が出た?切れ味鋭く、名句?の解説をしてくれるので、初心者にも読みやすい。まずは、何が凄いのか理解出来ないと始まらないからね。

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    2012年09月28日
  • 電話男

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    吉祥寺の古本屋さんで見つけ、最初は「『電車男』をもじったみたい」という印象で購入。

    奇妙な設定によって不思議な世界観に引き込まれました。

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    2012年05月29日