小林恭二のレビュー一覧
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20数年ぶりに再読した本。
ロス五輪が開催された年、華やぎとは縁のない下高井戸の地にうらぶれた遊技場がオープンした。メインアトラクションはペンキの剥げた錆だらけの回転木馬。他の施設も倒産した地方の遊園地の不要品ばかり。客は全く入らない。好景気に湧き、バブルへと世の中が絶頂へ向かおうとしているときに、ひっそりと産声をあげたこの廃墟のような遊技場。しかし、この遊技場こそ、後に日本中を狂乱の渦に巻き込み、内乱へと導いたゼウスガーデンの前身だった。
子供の夢を形にした遊園地は数あれど、大人の欲望を実現させる遊園地はかつてなかった。プリンセスになりたいとか、ヒーローになりたい、なんて夢は長 -
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「電車男」ではなく「電話男」。
実は、この小説は15年以上も前に書かれたもので、これは2000年に角川ハルキ文庫から再び出版されたもの。
<電話男>それは電話相手の話をただただ聞くだけの存在、報酬も求めず、相手に自分の話をすることもない。顔はわからず、素性も一切わからない。
しかし、全国に数多くの電話男が存在し、人々は彼らに電話することで心の孤独を埋めようとする。
それは次第にエスカレートし、社会全体の問題となっていく。
この小説のすごいところは、現代においてもそれが当てはまるところだろう。
インターネット時代が到来し、人々はメールや、サイトによってコミュニケーションをとるようになった。
そ -
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新聞で広告を見て買い求める。著書の俳句評論の本は久し振り。
「実用 青春俳句講座」や「俳句という遊び」「俳句という愉しみ」の今に生きる俳人たちのへの評論や句会の実況は、ジュ―ジュー肉の焼ける音が聞こえるようで、取れたての生きの良さが素晴らしかった。
虚子から兜太までの名句鑑賞の本書には、そんな面白さは望むべくもないかなと手にしたときは思ったのだが、ちゃんと読み始めると、この読書はもう快感としか言いようがない。
例えばこんな一句を語る文章。
寒卵 どの曲線も かえりくる
(前略)そもそも生物というのは、多かれ少なかれ騒がしいもので、無機質の静かな落ち着きぶりとはまったく異世界にあります。しかし -
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[ 内容 ]
頽廃の香り漂う江戸・幕末。
現代の渋谷に遊ぶ若者ふたりをしたがえ作者ともどもその時代へタイムスリップ。
「運命悲劇」の傑作・河竹黙阿弥の「三人吉三」をテキストにして、歌舞伎の愉しさをたっぷり味わってもらう趣向。
「月も朧に白魚の…」などの名セリフを織りまぜながら、幕末の風俗、時代背景、歌舞伎をめぐる諸事情、そして江戸庶民の哀しみまでをも活写する。
悪の魅力に酔いしれながら、歌舞伎が持つ力を現代に甦らせた、著者入魂の新しい歌舞伎論。
[ 目次 ]
第1章 いざ、幕末江戸の芝居小屋へご招待(まずは形から;いざ出発 ほか)
第2章 「稲瀬川庚申塚の場」(稲瀬川庚申塚の場;真女形・岩井 -
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読売新聞夕刊で連載されていた小説だそうです。
とにかくダダダッと読み進められたのでビックリ!
舞台を見ているようなリズム感があって
ドンドン読みたい、と思わせてくれる。
宮部みゆきさんなんかもそうなのですが、
彼女の場合、読み終わった後に、充実感はあれど
なにかその小説から得られるものが少ない気がします。
この小説は印象的な台詞も多くていろいろと考えさせられました。
ただ、この小説に関しては、読む人の環境や状態によって
印象にも随分とブレがあるように思います。
僕も来年読んだらどうかわからないし、
もちろん去年読んでいたら、感想もだいぶ違ったのでは
ないかな、と思います