稲泉連のレビュー一覧

  • 「本をつくる」という仕事

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     本を読むときに、いい文章に出会ったら付箋を貼るようにしているが、この本で貼った付箋は0枚だった。だが、この本はいい本だ。一文がいいのではなく、全体を通して迫ってくる力を感じる。戦地のドキュメンタリーでもない、本をつくる人たちのインタビューを基にしたノンフィクションなのに。

     本を読むのが好きでも、ここに出てくる職業の仕事を意識して本を読むことはあまりないかもしれない。だからこそ、いろんな本好きに勧められる。どのジャンルが好きな人でも、〈本〉を避けては通れない。自分の好きな本の箸休めとして読んでみてはいかがでしょうか。

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    2025年07月29日
  • 宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言

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    宇宙飛行士は宇宙に行く際出張届を出すらしい。
    そして山崎直子さんは交通安全のお守りを持って行ったそうだ。
    立花隆の『宇宙からの帰還』に比べると特定の宗教を持たないと公言する日本人飛行士たちの感想はアメリカ人飛行士たちのそれとは微妙に違う次元の話をしている感じがする。一番最初にでてきた秋山さんと立花さんの対談が読みたくなった。

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    2024年09月07日
  • サーカスの子

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    面白かったです!お母さんのことは知っていたけど、息子さんから見るとこんな感じだったのね。知り合いの知り合いが出てきてびっくり!

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    2024年04月27日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

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    島根県安来市にある「庭園日本一」の足立美術館を訪れ、その庭園の美しさと、美術館の広さ、そして魯山人や横山大観といった収集品の見事さに感動し、同時に大いに疑問を抱いた。いったい、この美術館を作り上げた足立何某とは、何者なのか。

    ミュージアムショップに平積みされていたこの新書を購入。彼以外にも項があるが、真っ先に足立氏の項をめくると、筆者も同様の疑問を持っていたそう。興味深く拝読。

    年末の休みの都合を付けて島根へと旅に来ている私は、梅屋庄吉の項で思わず本の端を折った。
    40ページ 筆者の解説より 以下引用
    ……僕は「働き方改革」の基本は、「工場モデル」の「飯、風呂、寝る」の生活から「人、本、旅

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    2023年12月30日
  • 宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言

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    『宇宙からの帰還』を読んでいた人として、日本の宇宙飛行士がどう感じたのかを取材してくれたことがありがたい本だった。土井さんの捉え方が一番腑に落ちた。

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    2023年12月16日
  • 「本をつくる」という仕事

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    「本を作る」と聞いて、著者や編集者、出版社ぐらいはすぐに思い浮かびますが、実際に”紙の本”が一つの商品として完成するには、多くのプロセスと、その作業に長じた専門家の存在があります。本書はそういう本づくりの裏方さんにスポットを当てたノンフィクションです。
    本書は各章1工程ずつ、活字、製本、活版印刷、校閲、製紙、装幀、翻訳、最後に絵本、という内容に分かれています。いくつか、印象的だった部分を抜粋します。

    活版印刷
    鉛の活字を組んで活版を作って印刷していた時代、活字を拾う作業ではベテラン職人は原稿を「読まずに拾う」→詳しくは本書を読んでみてください。

    校閲
    校正と校閲の違い(本書によると、校正=

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    2023年12月08日
  • こんな家に住んできた 17人の越境者たち

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    NHK「猫のしっぽ カエルの手」のベニシア・スタンリー・スミスさんや中村哲さんのインタビューに惹かれて手に取りました。全く知らない分野(レーシングドライバー)などの人たちの生活も知れて、とても面白かった。
    読み進めていくと、まるで彼らの近所に自分も住んでいて、当時の様子を本人たちから聞いているような気分になる。家や生活を振り返ることで、今の自分がなぜ生業としていることに興味を持つのか、思考の原点を知る機会にもなると思った。
    また、著者はインタビューする対象を“越境”というキーワードで選定している。困難な状況にもチャレンジしていく逞しさの精神がどのような環境で養われてきたのかも知ることが出来る一

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    2023年11月28日
  • サーカスの子

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    いい読書でした。
    シングルマザーと小学生手前の「筆者」が
    たった1年、寝食を共にしただけのキグレサーカス。
    既に廃業して、その場所はない。
    35年後に当時の芸人たちを訪ねていく。「れんれん」「懐かしいね」と当時のままの呼びかけで覚えてくれている当時の大人たち。サーカスの結びつき、なんかすごい。

    「いてもいい場所」、村のような共同体。
    今は探してもない。現存するサーカスは
    エンターテイメント、ショービジネスだ。

    おじさんになった筆者れんれんが、
    あのウキウキした村、なんだったんだろうと
    気になって確認したくて関係者に会いにいく
    自分の歴史再訪のノンフィクション、かな。
    郷愁を感じる作品。

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    2023年11月19日
  • サーカスの子

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    とても良かった。
    奇をてらうものがなく、淡々とわかりやすい言葉で見事に胸に迫ってくる。
    著者の並々ならぬ筆力に感心した。

    新聞記事で著者へのインタビューを読み、興味を持った本だった。
    79年生の著者が80年代のはじめ、ほんの一年だけ、サーカスの下働きをした母とともにサーカスで暮らした体験をもとに、大人になってから当時のサーカスの関係者たちに会いに行く話。
    見世物小屋時代からあるサーカスが、高度成長期を経てそのありかた、魅せ方が大きく変わる時代に実際にたちあった人たちの人生。
    一言でいえば、過渡期にあったサーカス関係者のドキュメンタリー。
    誇張もなく、さらりと語られているのに、私のこころをギュ

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    2023年10月13日
  • 廃炉―「敗北の現場」で働く誇り―

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    ネタバレ

     福島第一原子力発電所、「イチエフ」の現場。ピーク時には7000人もの人たちが働いていた。現在は約4000人が廃炉作業に当たっている。1979年生まれ、稲泉連、ノンフィクション作家「廃炉」、敗北の現場で働く誇り、2021.2発行、253頁。人間が慣れによってリスクを感じなくなっていくのが怖い。目に見えない放射線への意識はどうしても低くなりがち。30ミリSv/hは低線量ではない。常に「注意喚起」を。現場を見ないと何も語れないことだとは思いますが、もっと「廃炉広報」が為されるべきだと感じました。

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    2023年09月19日
  • サーカスの子

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    日本全国を興行して回っていたサーカス団。幼い頃母子家庭で一時期サーカスに同行していた作家が、サーカス団の知人を訪ね過去を再現した作品。出会いと別れ、人生の一幕に触れた感動作。

    漂泊民にも似たサーカス団の家族。来る者拒まず、去るもの追わず。出入りの激しい中で独自の疑似家族的な文化。

    今では絶滅した独自な文化に触れた作品。後味良し。

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    2023年08月17日
  • サーカスの子

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    雑多な経歴や過去をもつ人達が体験した貴重で煌びやかなサーカスでの生活の記録。その合間に挟まれた、「記憶の断片から」の作者の幼少期の一年間のサーカスで日々の物語がとても面白かった。
    サーカスという言葉が連想させる、じめっとしてわい雑で退廃的で妖しげな空気感。「最後のサーカスの子」というパワーワード。。サーカスという前時代的な興行世界を作者がシビアに客観的に語っていてもなんだか郷愁を感じさせて、おセンチで切ない心持ちになった。

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    2023年07月28日
  • 復興の書店

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    これは「本屋の話であるけれど、本屋だけの話ではない」「被災地の話であるけれど、被災地だけの話ではない」と感じます。
    「自分が、何故そこに居るのか?」を本屋や被災地を通して問いかけてくれるお話し。
    未曾有の災害を被ったとき、最初に必要なのは確かに衣食住のインフラを再構築することでしょう。 でも、人はそれで生きていける訳ではない。
    本書で印象的だった言葉は「親たちは、子供達の笑顔を必要としている」
    そう、人が生きる勇気を、前を向く希望を感じるのは、そんな「心を満たされる瞬間を得るため」だと、本書は語り掛けてくれます。
    そして自分と重ね合わせ、自分が満たされるモノは何だろう。自分が必要としている事は

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    2023年06月22日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

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    島根にある世界的に有名な足立美術館。先日思い立って行きました。その美術館の中にあるショップで見かけて購入しました。出口先生の本は今まで数冊読んできましたがこの本は知りませんでした。はしがきに記載ありますが、出口先生が大学に学長になられて後に島根を訪問されて、神社訪問のあとふとこの足立美術館まで足を運んで、この美術館の創立者足立全康氏の事を知り、より多くの人にその足跡を知って欲しいという動機で、この本の最終章をお書きになったそうです。生き方そのものがMBAの教科書になるというご指摘もあり、併せて「庭園日本一足立美術館をつくった男」という自伝も読みました。

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    2023年06月17日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

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    何となく聞いたことはある名前ですけど詳しく知らない人ばかりでした。皆さん、スケールご大きくてエネルギッシュ。他方、大金持ちになるけど、学校とか美術館とか「公」に惜しげもなく投資されてますよね。ノブレス・オブリージュ。そういう気風、今、日本に求められている気がします。

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    2023年05月25日
  • サーカスの子

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    常に気になっている存在の
    一つが「サーカス」である。

    あの「ぼくもいくさに征くのだけれどー竹内浩三の詩と死」を書かれた稲泉連さんが書かれている。もうそれだけで 読んでみよう! ではあるのだけれど、
     わずか一年とは言え、連少年が生い立ちの一時期に「サーカス」の場にいたからこそ、生まれた一冊。
     「ハレの空間」の象徴的な一つの場所が「サーカス」、なかなか部外者が取材を重ねたからとて、その「ケの部分」が引き出されることは先ずありえない。
     そして、その部分を 昔の仲間の一人だからと
    訥々と語ってくださったからこそ、生まれた稀有なルポルタージュである。

     サーカスが成り立っている世界は健全な世の

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    2023年05月18日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

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    本と旅の人、出口さんならではの本。軽く読める一方で、「今の日本で生きてる私の価値観」が普遍ではないという当たり前のことに気付かされる。
    私は、別の時代、別の地域に生きてれば、確実に今とは違う価値観を正と思って生きてるはず。「自分が正しい」と思うことの視野の狭さを感じさせられた。
    国の違いは旅で、時代の違いは本で。狭くならないよう、閉じないに。

    ■革命のプロデューサー 梅屋庄吉
    ■パリの蕩尽(とうじん)王 薩摩治郎八
    ■初物狂い 大倉喜八郎
    創業と守成 短距離から長距離への切替え
    ■吉野の山林王 土倉庄三郎
    吉野の桜を守った人。
    年々戦勝論 日清戦争は多くの国費と若者の命を奪ったのに、得るもの

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    2023年04月09日
  • 「本をつくる」という仕事

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    製紙、印刷、装丁、活字…一冊の本を作るのに、こんなにも多くの人がかかわり、そしてそのひとりひとりの情熱やこだわりが交差しているのだと実感させられ、目の前にある本が今まで以上に尊いものだと感じられた。すべての章が興味深く、今すぐにでも本屋に行って一冊一冊本を手に取って眺めてみたいと思った。紙の本が永遠にこの世界にあり続けることを願う。

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    2022年05月19日
  • 宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言

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    ネタバレ

    宇宙へ行って人生観が変わった人も変わらなかった人もいる。
    自分の夢を叶えに行った人もいれば、地球からの"出張"として、普段の仕事の延長で宇宙へ行った人もいる。
    地球は大きかったと言う人と、小さかったと言う人がいる。
    未知の場所へ行くという同じ体験をしても、当たり前だが誰一人として同じ感じ方をしていなかった。
    いつの時代に、どんな背景をもち、社会状況がどうかによって宇宙体験の受け止め方がそれぞれ違っていて面白かった。

    宇宙から見た地球は、地球上には水も緑もたったのこれしか資源が残っていないのかと言っていた人がいた。
    それなのに大切にするどころか破壊し続けている私達は本当に愚

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    2022年05月01日
  • 「本をつくる」という仕事

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    生涯80年だとして、年間100冊読んでも8,000冊しか読めない。厳選された8,000冊、全てに書体・装丁・製本などの工程がある。

    この本を読むと1冊1冊の重みを感じる。読み心地、ページを捲る感覚、ジャケット。どれも拘り抜いたプロフェッショナルの塊。それを無意識的に感じ取り、本屋で手に取っているんだなと改めて思った。そう思うと、過去に読んだ本も全部見返したくなる。どんな気持ちで、どんな思いを込めて、この本が仕上がったんだろう。

    活字が好きだから電子書籍も読むけれど、やっぱり本が好き。そんな人にぜひ読んでほしい。

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    2021年12月15日