稲泉連のレビュー一覧
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島根県安来市にある「庭園日本一」の足立美術館を訪れ、その庭園の美しさと、美術館の広さ、そして魯山人や横山大観といった収集品の見事さに感動し、同時に大いに疑問を抱いた。いったい、この美術館を作り上げた足立何某とは、何者なのか。
ミュージアムショップに平積みされていたこの新書を購入。彼以外にも項があるが、真っ先に足立氏の項をめくると、筆者も同様の疑問を持っていたそう。興味深く拝読。
年末の休みの都合を付けて島根へと旅に来ている私は、梅屋庄吉の項で思わず本の端を折った。
40ページ 筆者の解説より 以下引用
……僕は「働き方改革」の基本は、「工場モデル」の「飯、風呂、寝る」の生活から「人、本、旅 -
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「本を作る」と聞いて、著者や編集者、出版社ぐらいはすぐに思い浮かびますが、実際に”紙の本”が一つの商品として完成するには、多くのプロセスと、その作業に長じた専門家の存在があります。本書はそういう本づくりの裏方さんにスポットを当てたノンフィクションです。
本書は各章1工程ずつ、活字、製本、活版印刷、校閲、製紙、装幀、翻訳、最後に絵本、という内容に分かれています。いくつか、印象的だった部分を抜粋します。
活版印刷
鉛の活字を組んで活版を作って印刷していた時代、活字を拾う作業ではベテラン職人は原稿を「読まずに拾う」→詳しくは本書を読んでみてください。
校閲
校正と校閲の違い(本書によると、校正= -
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NHK「猫のしっぽ カエルの手」のベニシア・スタンリー・スミスさんや中村哲さんのインタビューに惹かれて手に取りました。全く知らない分野(レーシングドライバー)などの人たちの生活も知れて、とても面白かった。
読み進めていくと、まるで彼らの近所に自分も住んでいて、当時の様子を本人たちから聞いているような気分になる。家や生活を振り返ることで、今の自分がなぜ生業としていることに興味を持つのか、思考の原点を知る機会にもなると思った。
また、著者はインタビューする対象を“越境”というキーワードで選定している。困難な状況にもチャレンジしていく逞しさの精神がどのような環境で養われてきたのかも知ることが出来る一 -
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いい読書でした。
シングルマザーと小学生手前の「筆者」が
たった1年、寝食を共にしただけのキグレサーカス。
既に廃業して、その場所はない。
35年後に当時の芸人たちを訪ねていく。「れんれん」「懐かしいね」と当時のままの呼びかけで覚えてくれている当時の大人たち。サーカスの結びつき、なんかすごい。
「いてもいい場所」、村のような共同体。
今は探してもない。現存するサーカスは
エンターテイメント、ショービジネスだ。
おじさんになった筆者れんれんが、
あのウキウキした村、なんだったんだろうと
気になって確認したくて関係者に会いにいく
自分の歴史再訪のノンフィクション、かな。
郷愁を感じる作品。 -
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とても良かった。
奇をてらうものがなく、淡々とわかりやすい言葉で見事に胸に迫ってくる。
著者の並々ならぬ筆力に感心した。
新聞記事で著者へのインタビューを読み、興味を持った本だった。
79年生の著者が80年代のはじめ、ほんの一年だけ、サーカスの下働きをした母とともにサーカスで暮らした体験をもとに、大人になってから当時のサーカスの関係者たちに会いに行く話。
見世物小屋時代からあるサーカスが、高度成長期を経てそのありかた、魅せ方が大きく変わる時代に実際にたちあった人たちの人生。
一言でいえば、過渡期にあったサーカス関係者のドキュメンタリー。
誇張もなく、さらりと語られているのに、私のこころをギュ -
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これは「本屋の話であるけれど、本屋だけの話ではない」「被災地の話であるけれど、被災地だけの話ではない」と感じます。
「自分が、何故そこに居るのか?」を本屋や被災地を通して問いかけてくれるお話し。
未曾有の災害を被ったとき、最初に必要なのは確かに衣食住のインフラを再構築することでしょう。 でも、人はそれで生きていける訳ではない。
本書で印象的だった言葉は「親たちは、子供達の笑顔を必要としている」
そう、人が生きる勇気を、前を向く希望を感じるのは、そんな「心を満たされる瞬間を得るため」だと、本書は語り掛けてくれます。
そして自分と重ね合わせ、自分が満たされるモノは何だろう。自分が必要としている事は -
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島根にある世界的に有名な足立美術館。先日思い立って行きました。その美術館の中にあるショップで見かけて購入しました。出口先生の本は今まで数冊読んできましたがこの本は知りませんでした。はしがきに記載ありますが、出口先生が大学に学長になられて後に島根を訪問されて、神社訪問のあとふとこの足立美術館まで足を運んで、この美術館の創立者足立全康氏の事を知り、より多くの人にその足跡を知って欲しいという動機で、この本の最終章をお書きになったそうです。生き方そのものがMBAの教科書になるというご指摘もあり、併せて「庭園日本一足立美術館をつくった男」という自伝も読みました。
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常に気になっている存在の
一つが「サーカス」である。
あの「ぼくもいくさに征くのだけれどー竹内浩三の詩と死」を書かれた稲泉連さんが書かれている。もうそれだけで 読んでみよう! ではあるのだけれど、
わずか一年とは言え、連少年が生い立ちの一時期に「サーカス」の場にいたからこそ、生まれた一冊。
「ハレの空間」の象徴的な一つの場所が「サーカス」、なかなか部外者が取材を重ねたからとて、その「ケの部分」が引き出されることは先ずありえない。
そして、その部分を 昔の仲間の一人だからと
訥々と語ってくださったからこそ、生まれた稀有なルポルタージュである。
サーカスが成り立っている世界は健全な世の -
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本と旅の人、出口さんならではの本。軽く読める一方で、「今の日本で生きてる私の価値観」が普遍ではないという当たり前のことに気付かされる。
私は、別の時代、別の地域に生きてれば、確実に今とは違う価値観を正と思って生きてるはず。「自分が正しい」と思うことの視野の狭さを感じさせられた。
国の違いは旅で、時代の違いは本で。狭くならないよう、閉じないに。
■革命のプロデューサー 梅屋庄吉
■パリの蕩尽(とうじん)王 薩摩治郎八
■初物狂い 大倉喜八郎
創業と守成 短距離から長距離への切替え
■吉野の山林王 土倉庄三郎
吉野の桜を守った人。
年々戦勝論 日清戦争は多くの国費と若者の命を奪ったのに、得るもの -
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ネタバレ宇宙へ行って人生観が変わった人も変わらなかった人もいる。
自分の夢を叶えに行った人もいれば、地球からの"出張"として、普段の仕事の延長で宇宙へ行った人もいる。
地球は大きかったと言う人と、小さかったと言う人がいる。
未知の場所へ行くという同じ体験をしても、当たり前だが誰一人として同じ感じ方をしていなかった。
いつの時代に、どんな背景をもち、社会状況がどうかによって宇宙体験の受け止め方がそれぞれ違っていて面白かった。
宇宙から見た地球は、地球上には水も緑もたったのこれしか資源が残っていないのかと言っていた人がいた。
それなのに大切にするどころか破壊し続けている私達は本当に愚