作品一覧

  • 鯨鯢の鰓にかく ~商業捕鯨 再起への航跡~
    -
    絶体絶命でも捕鯨を続ける男たちの群像。  反捕鯨団体の過激な妨害活動、国際社会からの批判――日本の捕鯨は、幾度も障壁にぶつかってきた。  シー・シェパードが妨害を過激化させた2000年代後半。著者は調査捕鯨船に同行取材し、若手船員たちの情熱や葛藤を目の当たりにする。  しかし、日本が調査捕鯨で積み重ねたデータは、国際社会では認められなかった。2019年、日本はIWC(国際捕鯨委員会)を脱退し、200海里内での「商業捕鯨」に舵を切る。それは同時に、かつて船員が奮闘した「南極海」「北西太平洋」での捕鯨が終焉することを意味していた。  奇しくも2019年に亡くなった「クジラ博士」は、南極海捕鯨の終焉を誰よりも惜しみ、こう言った。 「まさに“けいげいのあぎとにかく”ですね」  けいげいとは雄クジラと雌クジラ、あぎとは鰓(エラ、アゴ)のこと。クジラに飲み込まれそうになったが、アゴに引っかかって助かった――。そんな絶体絶命な状況のなか、いかにして日本の捕鯨は続いてきたのか?  およそ15年の時を経て、著者は再び捕鯨船に乗船取材。若手から中堅になった捕鯨船員たちと、「クジラ博士」の歩みを通して、捕鯨業界の「再起への航跡」を辿る。 (底本 2024年9月発行作品)
  • 国境を越えたスクラム ラグビー日本代表になった外国人選手たち
    3.5
    「何があっても日本以外の国の代表になるわけにはいかないと思った」。かつてリーチマイケルはそう語った。ラグビーは、代表選手の国籍を問わない。居住年数など一定の条件を満たせば、国籍と異なる国の代表としてプレーできる。多様なルーツを持つ選手たちは、なぜ「日本代表」となることを選んだのか。 最初期の留学生として来日したノフォムリ・タウモエフォラウやラトゥ志南利、ニールソン武蓮傳。外国人初の代表キャプテンとなったアンドリュー・マコーミック。日本の生活・文化に魅せられたというトンプソンルーク。成績優秀ゆえに留学生に選ばれ、ラグビーに関してはほぼ素人で来日したホラニ龍コリニアシ。韓国代表を断って日本代表を目指した金喆元。日本代表が憧れだったという具智元。そして、日本の高校・大学で受けた恩をラグビーで返したいと言ったリーチマイケル……。さまざまな選手がさまざまな背景を背負って、日本代表チームに集ってきた。 異文化の地で道を拓いた外国人選手たち、そして彼らを受け入れたチームメイトと関係者の奮闘があってこそ、今の日本代表がある。その歴史は、多様な人々との共生をさぐる日本社会とも重なってみえる。それぞれのライフヒストリーと、秘められた熱い思いをたどる
  • 最期の声 ドキュメント災害関連死
    3.7
    1巻1,870円 (税込)
    「どうしたら娘は助かったのか?」  4歳の少女は、熊本地震により倒壊の恐れがある病院から 緊急転院した末に亡くなった。本震から5日後のことだった――。 東日本大震災、熊本地震、新潟県中越地震など 阪神・淡路大震災以降の国内の災害で 「災害関連死」とされた人の数、5000人以上。 死者たちの残した声なき声をきく。 10年にわたる取材で災害支援の道を照らすノンフィクション 災害の多い日本に暮らす私たちは、誰もが被災者になり、 命を落とす可能性がある。 避難中のエコノミークラス症候群、転院移動後の死、 鬱を患い自死、復旧に奔走した末の急性くも膜下出血…… どんな支援があれば命を救うことができるのか? 遺族、弁護士、医師、行政関係者、研究者ほか、 災害関連死を亡くなった人たちの「最期の声」ととらえ、 次に来る災害の教訓にしようとしている人たちがいる。
  • カルピスをつくった男 三島海雲
    4.4
    「初恋の味」はどこからきたのか? カルピスは、「初恋の味」として知られる国民飲料だ。ルーツは、モンゴル高原で遊牧民に食されていた乳製品。約100年前に三島海雲によって発見された。 三島は僧侶にして日本語教師、さらには清朝滅亡で混乱下の大陸を駆け抜けた行商人だ。日本初の乳酸菌飲料を生み出し、健康ブームを起こした。 没後、半世紀近く経ち、三島の名は忘れ去られた。会社も変わった。だが、カルピスは今も飲まれ続ける。三島からすれば本望かもしれない。「国利民福」を唱え、会社の利益よりも国民の健康と幸せをひたすら願った。 カルピスの聖地・モンゴル高原まで訪ね、規格外の経営者の生涯に迫った傑作人物評伝。 <近代文明の危機は、一九七三年よりも恐らく遥かに深まっているのだろう。救いの大きな鍵はきっとモンゴル的なるものにある。三島海雲の伝記と思想は今こそ学ばれねばなるまい>――解説・片山杜秀氏 ※この作品は単行本版として配信されていた『カルピスをつくった男 三島海雲』の文庫本版です。
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)
    4.2
    1巻990円 (税込)
    昔の日本にはジョブズ並みがゴロゴロいた! これまで日本の経営者といえば、「メザシの土光」に代表される質素倹約型が理想像とされてきたはずだ。しかし、それは果たして本当に伝統的な「日本の大金持ち」の姿なのだろうか。歴史を紐解けば、戦前の日本には、個性的でスケール感溢れる起業家たちがゴロゴロいた。戦前の日本は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ並みの人材が揃ったシリコンバレーのような場所だったのだ。武器商人から一大財閥を築いた大倉喜八郎、孫文の辛亥革命をパトロンとして支えた梅屋庄吉、パリで「蕩尽王・バロン薩摩」として名を馳せた薩摩治郎八……彼らの豪快なカネの稼ぎ方・使い方を見ていると、今の日本のビジネス界がずいぶんとこじんまり見えてくるに違いない。戦後のサラリーマン型経営が終わりを迎えた今こそ、彼らの型破りな発想力に学びたい。
  • それでも彼女は生きていく 3.11をきっかけにAV女優となった7人の女の子
    3.8
    東日本大震災をきっかけにAV女優となった女の子たちがいる。彼女たちは震災後、何を感じ、何を求め、AVの世界に足を踏み入れたのか――。震災に翻弄された7人の東北女性の心の内を活写した著者渾身のルポルタージュ。彼女たちにとって3.11とは何だったのだろうか。

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ユーザーレビュー

  • 最期の声 ドキュメント災害関連死

    Posted by ブクログ

     災害関連死を調べることは未来の災害関連死をなくしていくための貴重な財産になるという信念のもと、阪神・淡路大震災、中越地震、熊本地震の災害が発生した地域を歩き回り、遺族、関係者、支援する医者、弁護士など一人ひとりの話を聞きながらまとめた本だった。とにかく丁寧な取材が際立っている。そして取材相手のこころの傷に寄り添って深い共感を示す。彼らと共に涙し、怒り、何をすべきなのかを考える。世界をより思いやりのある、誰も置き去りにしない場所にしたいという、とてもまっすぐな理念のもとで執筆しているのが分かる。そもそも日本の災害被害者に対する弔慰金という制度は、自ら被災して大切な肉親を失った政治家が信念を持っ

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    2025年09月18日
  • カルピスをつくった男 三島海雲

    Posted by ブクログ

    初恋の味「カルピス」をモンゴルから持ち帰った三島海雲の評伝。野心的な大陸への進出と好奇心がカルピスの源流を見つけ、戦時中の栄養補給の手段として地位を確立していく。

    寺の倅である三島海雲は、圧倒的な行動力に知的好奇心と外の文化への憧憬を加えて旅をし、様々なビジネスを興すが、その軸には仏教の教えがあって、複雑な彼の人生を形作っている。

    体に良いこと、美味しいことといった極めてシンプルに国民を豊かで健康にしたいという想いや微生物研究に私財を投げうって投資する長期的視野は今のビジネスに失われたもののように思う。

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    2025年04月06日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

    Posted by ブクログ

    足立美術館内の販売コーナーで購入。
    美術館創設者の足立全康氏の解説が数ページ載っているが、とても分かりやすい解説だった。
    足立全康氏の基本を抑える事ができた。
    その他、戦前の豪快な大金持ちを何人か紹介している。
    モチベーションを高められる。
    足立全康氏の自著を買うきっかけになった。
    買って良かった。

    戦前の大金持ち

    面白かったところ3点

    40ページ
    働き方の改革の基本は、工場モデルの飯、風呂、寝るの生活から人、本、旅の生活の切り替えにある。
    そのために重要なのが長時間労働を止めること。
    早く家に帰り、空いた時間を活用して人、本、旅とたくさん触れ合うことがサービス業が重視になった現代に合っ

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    2024年08月11日
  • 戦前の大金持ち(小学館新書)

    Posted by ブクログ

    島根県の足立美術館を訪れた際に、なぜ20年間連続で日本一をとる庭園の創設者の名前があまり世に知られていないのだろうと疑問に感じた。
    そこで、創設者足立全康がどう財産を築いたのかを知るためにこの本を手に取った。

    「自分以外は全員師匠である」と言う足立全康の姿勢を見習おうと思った。

    お金持ちたちの軸を持った姿勢に惹かれた。

    それぞれの偉人たちの成功の背景には一概にいい面だけではなく、悪い面(社会的に?周りに反対されるみたいな)もあった。

    反対されても突き通す強さ、柔軟に意見を取り入れる優柔さ、各偉人たちにはそれぞれの特徴があった。

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    2023年09月14日
  • カルピスをつくった男 三島海雲

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    健康飲料として評判の高いカルピスをつくってくれた日本人の先人の短い伝記としても、当時の時代や多くの日本人達が大陸に夢を持って渡っていったこと(結果的に支那人、朝鮮半島の人達からは大変な反感を持たれることになりましたが)、関東大震災と同時代のこと、本書に登場する周辺の人物たちのこと、そしてモンゴル、内モンゴルのこと、ユーラシア大陸のこと、イタリアの詩人ダヌンツィオとのこととか、どれもこれも大変興味深かったです。

    仏教とのかかわり、聖書のことばの一粒の麦のこと、わたし自身では仏教自体には興味も希望もあまり持つことが出来ないのですが。

    カルピス自体は、山川さんも書かれていますように、カルピス以外

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    2023年05月06日

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