あらすじ
「初恋の味」はどこからきたのか?
カルピスは、「初恋の味」として知られる国民飲料だ。ルーツは、モンゴル高原で遊牧民に食されていた乳製品。約100年前に三島海雲によって発見された。
三島は僧侶にして日本語教師、さらには清朝滅亡で混乱下の大陸を駆け抜けた行商人だ。日本初の乳酸菌飲料を生み出し、健康ブームを起こした。
没後、半世紀近く経ち、三島の名は忘れ去られた。会社も変わった。だが、カルピスは今も飲まれ続ける。三島からすれば本望かもしれない。「国利民福」を唱え、会社の利益よりも国民の健康と幸せをひたすら願った。
カルピスの聖地・モンゴル高原まで訪ね、規格外の経営者の生涯に迫った傑作人物評伝。
<近代文明の危機は、一九七三年よりも恐らく遥かに深まっているのだろう。救いの大きな鍵はきっとモンゴル的なるものにある。三島海雲の伝記と思想は今こそ学ばれねばなるまい>――解説・片山杜秀氏
※この作品は単行本版として配信されていた『カルピスをつくった男 三島海雲』の文庫本版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
初恋の味「カルピス」をモンゴルから持ち帰った三島海雲の評伝。野心的な大陸への進出と好奇心がカルピスの源流を見つけ、戦時中の栄養補給の手段として地位を確立していく。
寺の倅である三島海雲は、圧倒的な行動力に知的好奇心と外の文化への憧憬を加えて旅をし、様々なビジネスを興すが、その軸には仏教の教えがあって、複雑な彼の人生を形作っている。
体に良いこと、美味しいことといった極めてシンプルに国民を豊かで健康にしたいという想いや微生物研究に私財を投げうって投資する長期的視野は今のビジネスに失われたもののように思う。
Posted by ブクログ
健康飲料として評判の高いカルピスをつくってくれた日本人の先人の短い伝記としても、当時の時代や多くの日本人達が大陸に夢を持って渡っていったこと(結果的に支那人、朝鮮半島の人達からは大変な反感を持たれることになりましたが)、関東大震災と同時代のこと、本書に登場する周辺の人物たちのこと、そしてモンゴル、内モンゴルのこと、ユーラシア大陸のこと、イタリアの詩人ダヌンツィオとのこととか、どれもこれも大変興味深かったです。
仏教とのかかわり、聖書のことばの一粒の麦のこと、わたし自身では仏教自体には興味も希望もあまり持つことが出来ないのですが。
カルピス自体は、山川さんも書かれていますように、カルピス以外の有望な商品を作り出すことが出来なかった等の事情により、今では会社が変わってはいますが。
カルピスは上手くて身体に良いのだからたくさんの人に飲んでもらいたい。
日本人の先人たちのの優れた業績を知ることが出来て、とてもありがたかったです。
Posted by ブクログ
偉大なカルピス創業者の物語ではあるが、ややこしい人だなぁと思いつつ読んだ。カルピスの起源がモンゴルにあり、三島の波乱の人生と巡り合った。でも、なぜ馬乳じゃなく牛乳だったのかなあと素朴な疑問が最後まで残った。
Posted by ブクログ
カルピスの聖地・モンゴル高原まで訪ね、規格外の経営者の生涯に迫った評伝になります。
カルピスは好きな飲み物ですが、この本を読んでからカルピスを見ると感慨深いです。