稲泉連のレビュー一覧
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社会に出て就職することに対して多かれ少なかれ疑問をいだく8人の若者たちを取材し、彼らの内面にくすぶっている思いを明らかにした本です。
共感をおぼえることもけっしてすくなくはなかったのですが、このような「働くこと」を取り巻く問題について、それではどのように考えればよいのか、という問いに対して、本書はなにも答えてくれません。「働くこと」について著者自身がいだいている一定の主張を示すことが目的ではなく、むしろ「働くこと」についてのさまざまな人びとの意見を紹介するルポというべき内容なので、こうした不満は筋違いではあるのですが、こうした状況を個々人の内面へと還元してしまうことに対する違和感を拭うことが -
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お金には、稼ぐ時より使う時にこそ、その人らしい個性が強く出る傾向がある。それを教えてくれる本である。人は教育や世間の影響を受けながらお金を使うが、この本は、自らの内なる声に従った使い方の達人を紹介している。
本書は、現代の富裕層だけでなく、実際の財産の大小に限らず、「お金の使い方に生き方が現れる」という考えに共感できる人であれば、誰にとってもおすすめだ。まわりに惑わされない生き方に興味ある人に向けた本である。
戦前の6名、梅屋庄吉、薩摩治郎八、大倉喜八郎、土倉庄三郎、山崎種二、御木本幸吉と戦後派の足立全康を足した7名のミニ評伝と出口氏の解説で各章にまとめてある。新書のページ数なので、簡易な -
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第1、2章はH23年和歌山での土砂災害のルポタージュが中心。「まえがき」こそ命からがら助かった住民の方の話だったが、そのあとの本編は住民目線の話はあまりなく、むしろ行政側(首長、防衛省、国交省)や建設業者による対応こそ、中心的に描かれている。行政の対応等に光をあてられていること自体は有意義。
惜しむらくは、そのように目線ごと(プレーヤーごと)にわけて描かれていればそれぞれの活躍ぶりがよく伝わっただろうということ。
様々な話を一緒くたにして書いたり、途中に学識者(静岡大・牛山教授)の話をまぜこぜにして書いたりしているため、情報が頭に入ってこない。
その点、『ドキュメント 御嶽山大噴火』や『前へ -
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本に関わる人たちによる、被災地で書店が、本がどのような役割を担っていたかや、書店経営再開や被災地で書店を始めた人たちにスポットをあてたドキュメンタリー。
正直、美談のような話が多く感じられてバイアスかかってるように思われましたが、私も本が好きなのでそこは目を瞑りながら(汗)…
被災地で本が求められたエピソードについては、人間はどのような境遇にあっても、あるいは被災地のような極限的な状況だからこそ(本のような)心の安らぎを感じられる存在を求めるのかなぁ、と思いました。また「本」という存在が我々にどのように関わっているのか、今後どのように関わっていくのかについて考えさせられました。
個人的に -
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学校に馴染めず、高校中退した人々を取材し、内面を描く。
アトピーの話や、「勉強は楽しくなかったが、友達も少く休み時間に話をすることもないので、むしろ休み時間の方が手持ちぶさた」等、私の高校時代もそうだったよなあと思いながら読む。
引きこもりの項は興味深く読む。まあ想像していた通りがだ、色々な心の葛藤を読むと、私の回りの彼等もそういう気持ちで過ごしていたのかなぁと思う。
色々な価値観を知れることは楽しいが、一様に根底には「ゆとり」なのか、甘え、若いがゆえの軽率さが見てとれる。豊な日本で働かなくても何とかなる現状への甘え。
彼等の現状がどこに続くのか?と憤る。やりたくないことはやらず、嫌だと -
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2011年9月に発生した奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町の豪雨災害の詳細なレポート、そして、その事例を踏まえ今の東京の水害に対する脆弱さを指摘している。
被災地に共通していえることは、ここ何十年かは大丈夫だったという近視眼的な、根拠の無い安心感。
土地の古老といっても、記憶があるのはせいぜい70年から80年ぐらいのもの。しかし、たとえば那智谷の地形は、専門家からみれば典型的な谷底平野であり、長い年月をかけて川が谷底を暴れ、谷を削ることに寄って平野が形成されてきた地域であるらしい。
そこが危険な場所だという認識に、欠けていたのではないかという指摘。
そして、やはり被害が発生した地域では、本 -
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「選択肢が増えても成功の確率が低い時代、選択肢が少なくても成功の可能性が高かった時代」
「仕事漂流」とはこれだと言う仕事が見つからないということで、決して仕事にあぶれているということではない。ここに登場する人たちは、1990年後半から2000年前半の就職氷河期に就職できた勝ち組と言われる人々。 人としても魅力的で頭だっていい勝ち組であっても自分の生き方や選択に悩んでいる。(生活への不安は語られないし書かれていない)悩んでいるとはいえ、そこはやっぱ優秀で勝ち組になったのも納得。そしてそういう人はやはり大企業に入る。
30歳までの時期は大企業で働き、柔らかい頭に一流を詰め込み、それから中小