稲泉連のレビュー一覧
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映画は創る人たちが居て、
観る人たちが居るから、
成り立っている。
書籍も同じである。
書く人だけでなく、
編む人がいて、
本の形にする人がいて、
届ける人がいて、
手にとる人がいて、
読む人がいる。
本書の場合は、
届ける人と読む人に特化して
綴られたルポルタージュである。
いつもなら、読んでしまってから
面白かった だの
今ひとつだった だの
で終わるところであるが
こうして 本が手元に届くまでのことを
改めて 意識させてもらうと
「一冊」の値打ちがぐんと上がる気がする。
一冊の本が何気なく届いてしまう
当たり前さは かなり稀有なことであることに
改めて 気付かされました。
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そういえば昭和のある時期まで、サーカス団のような旅芸人集団というのが存在
したそうです。
彼らは家族のように生活を共にして、街から街へと渡り歩いていたのです。
当然、本当の家族も含まれていて、そこで成長していく子供もいたそうです。
わずか数週間だけ、その街の学校に通って、次の興行地の学校へと転校してまう。
著者はその子供の一人であり、1年間だけサーカス団と行動を共にした。その時の
記憶を辿り、当時のサーカス団と再会を果たします。
「あの時代」は何だったのか。
二度と戻ることはない「あの時代」が当事者目線で語られる貴重なノンフィクション
です。 -
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1964年。それは障害者にとってエポックメイキングな東京パラリンピック(ストーク・マンデル競技大会)があった年。当時、日本にはリハビリテーションもバリアフリーもボランティアもなかった。障害者といえば戦争の傷痍軍人のことで、それ以外の障害者は家や病院で隠れて生きていた。それが変化の兆しを見せてきたのが1964年のパラリンピック。寄せ集めの、病人として日陰にいたスポーツに素人の日本選手たちは、海外の明るく自立した選手に衝撃を受ける。その後、自立に向かう者や、障害者の権利を勝ち取ろうとするものが現れてくる。そんな歴史を「障害者は納税者になりなさい」と励まし先頭で引っ張っていく中村裕と、語学奉仕団の橋
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足立美術館内の販売コーナーで購入。
美術館創設者の足立全康氏の解説が数ページ載っているが、とても分かりやすい解説だった。
足立全康氏の基本を抑える事ができた。
その他、戦前の豪快な大金持ちを何人か紹介している。
モチベーションを高められる。
足立全康氏の自著を買うきっかけになった。
買って良かった。
戦前の大金持ち
面白かったところ3点
40ページ
働き方の改革の基本は、工場モデルの飯、風呂、寝るの生活から人、本、旅の生活の切り替えにある。
そのために重要なのが長時間労働を止めること。
早く家に帰り、空いた時間を活用して人、本、旅とたくさん触れ合うことがサービス業が重視になった現代に合っ -
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著者は幼時の一時期、母とともに実際にサーカスで生活していた経験から、大人になった今、当時の団員にインタビューをする。
サーカスの「中の人」の生の声が興味深い。
自分の意志でサーカスに入った人、生まれた時からサーカスで育った人、どちらもサーカスでの生活のいいところ、そうではないところを考えながら生きてきた人生なのだろう。
短期間での転校を繰り返さざるを得ない教育環境や、子どもの教育を考えてサーカスを出て行く決断をすることなど、家族ぐるみの仕事だからこその悩ましさなども、当事者たちの言葉がリアルに胸に響いた。
私も子どもの頃、何度か見に行ったことのあるサーカス。
子ども心にも、その「ハレ」と「ケ -
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ネタバレp.68
いまはまだ混乱し、様々な感情を咀嚼しきれずにいる…
…いま一人称で考えていること、感じていることを全て真っすぐに書いてほしい
p.139
がんばんなきゃいけない、つながらなきゃいけない、みんなのために、っていうことが当たり前みたいになって、自分のため、自分だけのための時間を作ることがとても難しかったから。
p.170
本屋の棚というのは、こうやって耕すんですよ
田んぼと同じで、棚は触れば触るほど生きてくる。
災害という非日常の中で本に求められるものとは。
書店員さんの奮闘、葛藤が語られます。読んでいるうちに胸が熱くなりました。
コロナ禍となった今はどんな様子になっているんでしょうか -
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少しながら原子力に関わった人間である私には、過去の負債を背負わせてしまい申し訳ない、という気持ちです。
廃炉技術は何かを生み出すことはないと思ってたけど、これが無いと未来が無い、すなわち未来を生み出しているとも言えるなと思った。
311後に東電に入った技術者の方の話を聞くに、人柄を尊く思いました。誰かがやらねば、で火中の栗を拾える勇気と滅私の精神。ありがたいです。
そして、技術者だけでなく、運転手さん、食堂の方なども登場し、社会が廃炉を支えてるんだなと改めて思いました。役に立たないかもしれないけど、いずれ何らかの形で手伝いができたらなと思いました。 -
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稲泉連『豊田章男が愛したテストドライバー』小学館文庫。
伝説のテストドライバー・成瀬弘と創業家社長・豊田章男の不思議な師弟関係に触れながら、巨大企業の経営に迫るノンフィクション。
トヨタについて語る書物は数多くあるが、こういうアプローチでトヨタの内面に迫るというのは非常に面白い。
豊田章男に運転を教え、クルマの魅力ともの作りや人財育成の大切さを教えた成瀬弘は2010年6月23日、67歳の時に不慮の事故により命を落とす。しかし、成瀬の思いは豊田章男により引き継がれていく。
様々な逸話や伝説を持つ今や世界的な巨大企業となったトヨタ。しかし、それまでの道程は決して平坦なものではなく、成瀬を始 -
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稲泉連『「本をつくる」という仕事』ちくま文庫。
本づくりのプロフェッショナルの舞台裏を描いたノンフィクション。稲泉連の作品を読むのは『命をつなげ 東日本大震災、大動脈復旧への戦い』『復興の書店』に次ぎ3作目。
まさか活字書体の開発から迫るとは全くの予想外だった。何で今の世に活字書体の開発なのだろう。読んでみると、紙の質の変化に対応し、インクのにじみ等を計算した上で書体に改良を加える必要があったという理由に驚いた。
1冊の本が出来るまでの長い道程。その道程に関わる多くの人びと。活字に加えて、製本や印刷、校閲、製紙、装丁。本をつくり出すプロセス全てを丹念に取材し、我々に本の持つ魅力を伝えてく