馬伯庸のレビュー一覧
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唐の時代、生のライチを遠方から都まで届けなくてはならなくなった役人の話。
数学が得意な役人である主人公が、プロジェクトXばりに試行錯誤を繰り返し、遥か長安までライチを届けようとする過程が面白かった。無理なプロジェクトを任されたときの感覚がフラッシュバックする人は多いかも。。
また、一見頼りなさそうな主人公が義を重んじるところも良かったし、彼が自分ではどうしようもない力によって不義理を欠かされる描写は、その分つらいものがあった。大円団とまではいかずとも、最後は救いのある終わり方で良かった。
基本的にコミカルな筆致で書かれているが、それでも中国文化の奥深さを感じられた。史記からの引用も分からなかったし、楊国忠が実在の人物であることも後で調べて知った。。十分面白かったが、この辺りの教養がもっとあればより楽しめたのかもしれない。 -
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池澤春菜さんが出版区でおすすめされていた本。
中国の翻訳本を読むことがあまりないけれど、文字が大きくて安心。
人物や地名、名称が中国なので、翻訳文学としてのとっつきにくさはやはりあるものの、かなりリーダビリティがあり読みやすい。
中国の社畜の話、という前評判の通り。
社畜ではないけど、会社員というか組織で働いたことのある人には刺さりそう。
あらすじとしては、唐の時代の話。楊貴妃がライチを好きだったという逸話があるが、作中でも生のライチを食べたいという。しかも産地指定。
ライチは取ってから3日しか持たない。でも長安までは2500km、どう頑張っても間に合わない。
試行錯誤しながら、どうにか生のライチを届けることはできるのか!?
すごい分かる〜!の箇所が多かった。
・どこもやりたくない仕事の押し付けあいでどんどん下に降りてくる
・大事な決め事が自分不在の会議で決まっていた
・結局、上の人が言ったことが全て。規則は弱者しか守る必要がない……。
・バッファを持たせるあまりに情報が下におりて来るときには数が膨大になっている
最後、どうなるのか。ライチを届けることができるのか。
私は、主人公が最後に楊国忠に訴えた内容で辛くなってしまった……。そういうことの積み重なりでエピローグに繋がるのかもしれない。
主人公自体もずっと辛そうだった。最初はどうにもならないことへの辛さだったけど、後半から上司を優先するあまり仲間や友達と思っていた人を蔑ろにせざるを得なくなっていくところが……。
西遊記事変なども読んでみる予定。 -
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三国志を舞台に、蜀と魏のスパイ戦を描いた「風起隴西」。
「三国志」の中で、どのタイミングの出来事かについて言及すると、結構なネタバレになってしまう気がするなぁ。よみ進めていくうちに、この登場人物がやらかしていて、その周囲にスパイの手が伸びているのか、という予想はついてしまった。
一応、蜀の北伐のタイミングでの物語です。何次かは言わない。
魏国に潜入しているスパイの視点から始まり、蜀への潜入員と防諜の物語へと移っていきます。視点が基本的に蜀の立場からなのは、魏の攻勢を防ぐことが物語の骨子になっているからか。魏に潜入しているスパイの活躍も見たかったな、という思いはあります。だとすれば、蜀の攻勢の物語になってしまうのか。
防諜なので、綱渡りのヒヤヒヤ感はある。物語前半の方が楽しめたように思います。互いに隠密作戦を仕掛けあう展開なので、どう切り抜けるのか、どう嵌めるのか、が楽しい。後半は炙り出しがメインになるので、静かな戦いといった趣。タイムリミット迫る中で、追い詰めてゆくのは好きですけどね。
魏延と楊儀の派閥争いに巻き込まれる形になって、スパイ活動がうまくいかずにこいつら二人とも厄介者だ、みたいなところも好きでした。将来の二人を知っているだけに。
三国志アナザーストーリー、のような立ち位置のスパイ小説としては楽しめたと思います。 -
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馬先生の本、2作目です。余談ですが「マー・ポー・ヨン」先生と読むんですね。なんか可愛い。
個人的には前に読んだ「両京十五日」の方が読みやすかったです。三国志は知ってるはずなのに、やはりこれまで読んでたのは日本人向けだったのか…。地理がどうにも掴めず本作は魏と蜀の争いの話なので、ある程度は分かったほうがきっともっと面白かったろうにと思う。ちょっと残念。
でも、概ね話は面白かったです。諜報戦の話なので、アクション要素は少なく、狐と狸の化かし合い的な感じで話が進みます。三国志で有名なキャラと言うと孔明先生ですが、本作ではかなりのご高齢のようですが流石の冴え渡りです。最後がもっと悲劇的なことにならないかドキドキしてましがそこまでではなくてホッとしました。 -
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著者の言では「歴史可能性小説」。史実を曲げず、実在の人物と事件の合間に、架空の人物と架空の事件を配置する。矛盾は全くなく、読ませる。
舞台はほぼ蜀の漢中、時は229年初め、北伐第3次から231年春北伐第4次までの出来事、魏のスパイと蜀のの反スパイ組織との戦いを描く。主人公は蜀の反スパイ組織の現場トップ。上司の上司が諸葛亮になる。細部の描写が凄まじいが、基本的に創作らしい。しかしこれだけの組織とその運営がさもありなんとおもわせる。ただ、半分以上頭脳戦で、変化に乏しく、滅茶苦茶に面白いというほどではない。
全500ページで200ページずつの2部構成。間に「間奏」100ページが入る。主人公が呉の武漢に左遷され、呉のスパイと直接戦う。この部分は変化が激しく面白い。前作(中国での出版順は違う)の『両京十五日』を思わせる。