馬伯庸のレビュー一覧
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映画版をとても面白く観させてもらったので、原作はどんな感じなんだろうと読んでみれば、こちらもサクサクとリズム感良く楽しく読めた、エンタメ社畜ドラマ(!?)でした。
映画でおおよその筋が頭に入っているという前提はあるにせよ、真摯でまっすぐな主人公の善徳の辿っていく悲喜こもごものライチを長安に届ける道程を、時に笑い時に泣き、そして終盤は悔しさと切なさを帯びつつも並走できました。無駄のないさっくりした文体と、漢詩や格言も練り込んだ言い回しの軽やかさもとても良かったです。作者の別作品も読んでみたくなりました。
映画とは筋書きは細かくは違いますし、蘇諒との顛末はちょっと切なさが残りましたが、それだけ映画のアレンジもまた巧かったということです。
何より映画を楽しめたのは、小説そのものがともかく面白かったからなんだと実感できたので、読んで良かったです。 -
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【第4巻】ううーん、史実は曲げられない。ここまで怒涛の勢いで読んできたのに、急に教科書みたいになってしまって残念。
いえ、面白いのです。めちゃくちゃ。なので、余計にこのラストはがっかり。
巻末に作者による長い長い「物語の周辺について」という解説がある。私には「え?やっぱりそっちなの?」と思うところがあった。全巻読見終わってモヤモヤした人は是非この解説文を読まれるといい。
その中の引用文には現代語訳がついているので、何を言っているのか分かって助かる。出来れば本文中のにもつけてくれると良かった。
展開の先が知りたくて、何だかよく分からないことをすっ飛ばして読んだ。本来なら再読すべきなのだけど、この漢字攻撃に耐える力が次に出て来るはいつになることやら。どこかで映像化してくれたらそれで答え合わせしたい。
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ネタバレ「両京十五日 2 淮河の戦い」は、前巻以上に勢いを増した逃亡劇と、壮大な歴史ロマンに圧倒される一冊だった。次から次へと危機が押し寄せ、一行が休む暇もなく運命に翻弄されていく展開は、とにかくスリリングでページをめくる手が止まらない。特に淮河を舞台にした攻防は迫力満点で、映像が浮かぶような臨場感があった。
ただ派手なだけではなく、それぞれの人物が自分の信念や立場を背負って動いているため、敵味方を問わず魅力的なのも本作の大きな魅力。呉定縁の泥臭くも真っ直ぐな強さには思わず惹き込まれるし、皇太子を取り巻く人々との関係性にも熱さがある。誰が正義で誰が悪なのか単純に割り切れない重厚さが、物語に深みを与えていた。
歴史小説としての重みと、冒険活劇としてのエンタメ性が見事に両立していて、中国歴史エンタメの面白さを存分に味わえる作品だった。続きを読まずにはいられない。 -
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念願のマイホームを長安に得た主人公が嵌められたのは実現不可能な案件。長年可もなく不可もなく、ただこのまま出る杭ともならずにローンを返すためだけの人生を思い描いていたところに舞い込んだ任務。当初楽な仕事と思っていたのに嵌められた事に気づいた時には時遅し。なんと数ヶ月後には首と胴が離れる予定が立ってしまう。
中国の唐を舞台にした新鮮なライチを長安まで運ぶプロジェクト。唐でライチならいわずとも舞台に上がるべき役者は決まっている。しかし、そんな大物の影を感じつつも話はヒラ官吏の目線から下っ端の苦悩や切なさと共に語られて行く。実現不可能なプロジェクトを前にして家のローンと残されることになる家族を背水として最終カンギマリせざるをえなくなる主人公。その実現不可能さに対して不可能さを構成している要因を紐解き始めさせたのは、命と引き換えに守りたいものと長年ヒラで積み上げていた彼自身の経験値から来るところがプロジェクトXめいて先を読み進めてしまう。
試行錯誤と諦めと、そんな折に出会う人との縁と情の温かさ。官吏の職務遂行の前に捨てざるを得ない友との繋がりや権力による悪政と義憤からのカタルシスと中国官吏お仕事小説の山場が詰め込まれている。
余りにもライチにまつわるあれやこれやに主人公と一緒にのめり込み過ぎてしまうのは三国志を舞台にしたあの小説と同じで、近視眼的になったところを歴史的事象で不意打ちしてくれるのがたまらなく好きだった。
歴史に名を馳せる人物が作品に滑り込まされてくる分量が諄すぎず、しかしながら効果抜群で、このバランス感を読みたくて手に取ってしまう。
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ネタバレ著者初読。自分にとっては珍しい翻訳小説でもある。もともと翻訳物にはどこか苦手意識があり、購入をしばらく躊躇していたのだが、物は試しと手に取ってみた一冊である。
物語の舞台は15世紀前半。日本でいえば室町時代、いまだ戦国の世が到来する以前の頃であり、中国では明が繁栄を極めていた時代だ。当時の皇帝洪熙帝は、皇太子である朱瞻基を留都南京へと派遣する。朱瞻基は実在した歴史上の人物であり、のちに皇帝として即位する存在であるが、恥ずかしながらその背景知識をほとんど持たないまま読み始めたため、序盤は状況を掴むのにやや手間取った。
さらに、物語の随所に登場する官職名や職業名、あるいは地名などがすべて漢字表記で現れるため、読み方すら分からず戸惑う場面も多い。翻訳作品に対して抱いていた不安が、やはり的中した部分もあったと言えるだろう。
それでも、物語が動き出すと、その勢いは凄まじい。皇太子一行に降りかかる陰謀と危機は、次から次へと連鎖していく。息つく暇もない展開の連続に、気づけばページをめくる手が止まらなくなっていた。歴史小説でありながら、徹底してエンターテインメントとしての疾走感を失わない点は見事というほかない。
読み進めるうちに、当初感じていた知識不足や言葉の壁は徐々に薄れ、むしろ未知の時代と文化の中を旅しているかのような感覚が生まれてくる。翻訳小説への苦手意識を少しだけ和らげてくれた一冊とも言えるだろう。
もっとも、本作はまだ物語の序章に過ぎない。続きが気になるのは間違いないが、果たしてこのままシリーズを追うべきかどうか。興味と逡巡のあいだで、しばし思案しているところである。 -
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西遊記の裏側では何が起こっていたのか? 道教と仏教の神様たちが様々な計略をめぐらせ… #西遊記事変
■あらすじ
道教の仙人の李長庚は、天庭でのんびりと生活を送っていた。ある日仏教の観音菩薩から、天竺に経典を求めるために向かった三蔵法師に対して、八十一の劫難をたてることを押し付けられる。
李長庚は宗教間のいざこざや仲間内での争いなど、様々な調整事が後を絶たず仙界、地上界を右往左往。さらに孫悟空の身分を奪われたと主張する猿も現れてしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
中国の古典文学『西遊記』、日本だとテレビドラマが有名ですよね。子どもの頃に再放送でよく見てたなぁ。アクションばりばりの孫悟空(堺正章)や、やたらと女性に弱い猪八戒(西田敏行)が面白くて、テレビに噛り付いていたものです。
本作はそんな『西遊記』の裏側を描いた作品で、実は神様たちがこんな脚本をつくっていたんですよお話。
まず発想力が突飛ですんげぇ面白い。神様って、こんなにも大変なのかよって爆笑です。道教と仏教が協力しながら劫難なる修行イベントを81個も作っていかなきゃいけないんだけど、これがなかなかうまく行かない。
まるで現代のドラマ作りのように、予算不足、管轄争い、下からの突き上げ、上からの圧力など、関係者からの横やりがはいって、やたらと煩雑で大変なんすよね。
しかし本作の主人公である道教の仙人、李長庚がやたらと気を回すところが抜かりなくて妙に現実的。仏教の観音大士との会話が興味深くって、お互い上手くやりましょうねって感じなんですが、通さなければいけないところはあったりもするんです。これ現代人の企業でやる根回しと一緒ですよね。
そして本作一番の謎は、孫悟空とニセモノの関係性です。なぜこんなことになっているのか、そもそも西遊記の旅になぜ孫悟空を入っているのか、さまざまな謎の背後は見えてきた悟りとはなんだったか… これが想像以上に深く、すぐには解釈できませんでしたね。何度も味わいながら読ませていただきました。
ただ一応注意点として言っておきます。本作をちゃんと楽しむには、それなりに読む力や知識が必要です。私はまるで知識不足だったので、言葉の意味や背景情報を調べながらコツコツと読ませていただきました。また三国志の理解もあるとさらに考察が深ままるとおもいますよ。
■ぜっさん推しポイント
『両京十五日』でもそうだったのですが、馬伯庸の描く登場人物はみんな生き生きとしてるんです。漫画のキャラクターみたいに無邪気で元気だし、特に女性を可愛く描くのが上手いです。冒頭いきなり織女との会話ですっかり惹きつけられましたね~、その後の観音大士とのやり取りも面白いですよ。
中国の歴史&お仕事ミステリー、面白かった! -
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「両京十五日」や「風起隴西」「長安のライチ」馬先生の著書です。日本で出版されたのが最近ですが書かれたのは一番古いみたいですね。主人公が子供なので真っ直ぐでひたむきな感じの話です。
舞台は唐代の中国。でも飛行機(動力は電気ではなく独自のもの)は飛んでいて、かと思ったら龍も飛んでる…みたいな独特の世界観です。なので最初は何ともな違和感を感じてましたが、慣れてきてからは一気読みでした。
今まで読んでいた馬先生の著書は割とダークな感じのものが多かったのですが、こういう真っ直ぐなものもあるんですね。子供が読んでもよさそうです。
最後がなんとも切ない感じですが、きっとまた会える予感がします。独特な世界観のお話読みたい方にオススメです。 -
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「両京十五日」の馬先生の本ということで手に取りました。楊貴妃に生のライチをお届けするプロジェクトX小説とのこと。
読み終わった感想は、そうきたかー。って感じでした。もっと爽快痛快な時代劇を想像していたので、唐の官僚たちのドロドロとした足の引っ張り合いに嫌悪感すら感じました。でも、中国の作家さんが描かれたくらいだから、実際もこんな感じだったのでしょう。勧善懲悪の世界線ではないんですね。
あと、他の著作を読んだ時にも感じましたが、中国の地理や歴史に関する知識がもっとあれば、より楽しめたかなーと思いました。日本人としては平均以上の理解があると思うんですが、中国を母国としている方たちのレベルには遠く及ばないようです。 -
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唐の時代、生のライチを遠方から都まで届けなくてはならなくなった役人の話。
数学が得意な役人である主人公が、プロジェクトXばりに試行錯誤を繰り返し、遥か長安までライチを届けようとする過程が面白かった。無理なプロジェクトを任されたときの感覚がフラッシュバックする人は多いかも。。
また、一見頼りなさそうな主人公が義を重んじるところも良かったし、彼が自分ではどうしようもない力によって不義理を欠かされる描写は、その分つらいものがあった。大円団とまではいかずとも、最後は救いのある終わり方で良かった。
基本的にコミカルな筆致で書かれているが、それでも中国文化の奥深さを感じられた。史記からの引用も分からなかったし、楊国忠が実在の人物であることも後で調べて知った。。十分面白かったが、この辺りの教養がもっとあればより楽しめたのかもしれない。 -
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池澤春菜さんが出版区でおすすめされていた本。
中国の翻訳本を読むことがあまりないけれど、文字が大きくて安心。
人物や地名、名称が中国なので、翻訳文学としてのとっつきにくさはやはりあるものの、かなりリーダビリティがあり読みやすい。
中国の社畜の話、という前評判の通り。
社畜ではないけど、会社員というか組織で働いたことのある人には刺さりそう。
あらすじとしては、唐の時代の話。楊貴妃がライチを好きだったという逸話があるが、作中でも生のライチを食べたいという。しかも産地指定。
ライチは取ってから3日しか持たない。でも長安までは2500km、どう頑張っても間に合わない。
試行錯誤しながら、どうにか生のライチを届けることはできるのか!?
すごい分かる〜!の箇所が多かった。
・どこもやりたくない仕事の押し付けあいでどんどん下に降りてくる
・大事な決め事が自分不在の会議で決まっていた
・結局、上の人が言ったことが全て。規則は弱者しか守る必要がない……。
・バッファを持たせるあまりに情報が下におりて来るときには数が膨大になっている
最後、どうなるのか。ライチを届けることができるのか。
私は、主人公が最後に楊国忠に訴えた内容で辛くなってしまった……。そういうことの積み重なりでエピローグに繋がるのかもしれない。
主人公自体もずっと辛そうだった。最初はどうにもならないことへの辛さだったけど、後半から上司を優先するあまり仲間や友達と思っていた人を蔑ろにせざるを得なくなっていくところが……。
西遊記事変なども読んでみる予定。