田中ロミオのレビュー一覧
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終わる物語と終わらない世界と
人類は衰退しましたシリーズ短編集②ということで、刊行されているシリーズとしては最新かつ最後の作品。いつも通りの妖精さんのドタバタ劇が心地よい。
小説としては全9巻+短編集2巻といったことで一度幕を閉じているが、終わりという雰囲気ではなくあくまでもこの衰退した世界の中での日常の切り抜きを覗かせてもらい、この世界にまだまだ続きがある余白を感じられるのが良い。
シリーズものの宿命としていつかは終わりを迎えなければいけない。その際には伏線はなるべく回収して欲しいし、その先も登場人物には生きていく道があると感じさせてもらえる作品が読後の満足度と余白への浸りを生み出してくれると思う。
結構綺麗に全9巻で完結したからこそ、あとは読み手の余白に少し彩りを添えていただくだけでよい、それを強く感じさせてくれた。
メルヘンな世界観の作品は読み手の現実世界と本の中の世界に明確な「扉」があり、その「扉」を叩くと素晴らしい世界に出会えて、「扉」を閉じるとまた現実世界を頑張ろうと思わせてくれる。またいつかこの「扉」を叩きたいと思った。 -
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ファンの描いた自己内世界に寄り添う日常
人類は衰退しましたシリーズの短編集①はこれまでに特典などで書かれた短編などに書き下ろし作品を加えて短編集となっている。こういった短編集で大事なことは「読み手一人一人に存在する作品の世界観にどのように寄り添うか?」というものだと思う。
シリーズ後に出される短編には大きく分けると作品世界を「補完」するファンディスク要素と作品世界を「拡張」する完全版要素がある。わたしはどちらかというとシリーズが完結する際には大きな伏線などは回収され、その後は読み手へのサービスとしての「補完」要素が強い作品の方が好み。
そう考えるとこの短編集は今までの「衰退した世界」、そこに存在する「わたし」や「妖精さん」といった者たちの描ききれなかった日常を描いてくれ、ファンとしては見たかった掛け合い、完結しても続く作品内の日常を覗き見ることができとても満足した。
特に「助手さん」との掛け合いとか、いつもお騒がせの「妖精さん」とのやりとりはこのメルヘンかつちょっとダークなドタバタコメディーを彩っていてわたしの中の自己内世界で登場人物たちが彼ら彼女らの意思を持って動いてくれた気がした。
綿密に世界観を創り上げると、人物像を描くと、あとは勝手にキャラクターが動き始めるといった作品はわたしにとってとても好みなので、あと1巻ある短編集も楽しみたい。 -
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人類は衰退しましたシリーズ4巻目。前回は長編かつSF要素が強すぎたこともあり、少し描写に難しさや退屈さを感じていた反面今回はまたメルヘンな世界観にスパイスとしてダーク感を付け加えている田中ロミオ氏の生み出した世界設定や登場人物の軽快な掛け合いを見ることができた。
一つ目のお話のチキンのお話は顛末に寓話のような一種の恐ろしさ、ハッとする感じを加えながらそれを軽快に描写していることからもこの凹凸さを持って発展しているこの世界が我々の住んでいる今の世界との価値観の違いなどがより味わえた。
二つ目のお話は妖精さんたちの人口爆発に伴う島暮らし。凹凸ながらも先史時代の人類たちよりもはるかに発達した力を己のスイーツ欲に使うとこうなるんだといった面白さ、そんなコミカルな妖精さんたちが我慢をしたり周りに妖精さんが増えすぎてしまうとストレスを感じ、「自分がいる意味って」と考えちゃう。なんだか旧人類から毒素をとってるはずなのに残った毒素が煮詰められているかのような新人類妖精さんたちのこれからの生き方が気になりました。
こういう全面にはあまり出さないけど煮詰められたダークさが読み手の解釈により広がるのがとても作者の田中ロミオ氏の素晴らしさを感じるため次の話も楽しみにしている。 -
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『人類は衰退しました』第7巻。
『妖精さんたちの、ちいさながっこう』
里の寄り合いでのどこの誰かの発言を発端に、学校再生の要望(要求?)が調停官事務所に届けられる。所長である"祖父"に教師役を押し付けられた"わたし"が預かるは、3人の問題児。やりたい放題の彼らにモンペの親も加わって、"わたし"は我慢の限界に達し―――「おはようございます……とあなたがたが言え」。
『人類流の、さえたやりかた』
気が付くと、わたしは人里離れた土地で手首と両脚に枷を嵌められた状態で佇んでいた。自分の名前や家族のことなどは思い出せるが、直前の記憶が蘇らない。なんとかクスノキの里に帰還するも、なぜか里は壊滅状態に。一体何が起こったのか―――。
これまで二編収録の場合は、どちらか一方は気軽な内容となっていたが、今回はどちらも内容が濃い(個人的印象)。『ちいさながっこう』で「問題教師」に変貌する"わたし"ちゃんは最高に面白かったが、作品としては『さえたやりかた』の方が良かったかな。やはり「あっ」と言わせられる快感は堪らんね! -
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『人類は衰退しました』第2巻。
『人間さんの、じゃくにくきょうしょく』
里に出回っている妖精さんの遺留物(不思議アイテム)を回収・調査することとなった調停官である"わたし"。妖精さんの遺留物は、何を目的に作られたのか分からない不思議なアイテムばかり。その中の一つ、謎の数字が書かれた「計量スプーン」のようなアイテムを調べていると、なぜか頭に刺さり、なぜか薄力粉が産生され、なぜか身体が縮み―――。
『妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ』
現場復帰する、調停官である祖父の助手を迎えにいくため、待ち合わせ場所に向かう"わたし"。早く迎えに行けと叱る祖父、待ち合わせ場所からいなくなった"助手さん"、"助手さん"を探しに林に入ると出会う不思議な女性、妖精さんから差し出される"バナナ"、滑って転倒する"わたし"、早く迎えに行けと叱る祖父・・・同じことを繰り返しているような―――。
ほんわかしているが、なかなかにハードな2編。『じゃくにくきょうしょく』は、"自分が消える恐怖"というハードなシチュエーション。『じかんかつようじゅつ』は、意味が分からないと「?」で終わってしまうなかなかにハードなSF。2冊目にして、"ロミオ節"炸裂という印象。特に『じかんかつようじゅつ』、氏が手掛けたADVゲームが思い出された。「"ほんわか"の皮を被った"ハード"な作品」、次巻以降も期待したい。