向坂くじらのレビュー一覧

  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    主人公が幼い頃はまだ大丈夫でも、成長するにつれてはみ出し、いられる場所が少なくなり、行き場を失う様子は悲しい。
    気持ちがたかぶり、自分が割れてしまう感覚。おさえようにも、どんどんと中身があふれ出す感じが伝わって苦しくなった。
    詩的で繊細な文章が良い。

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    2025年10月18日
  • ことぱの観察

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    ネタバレ

    何か一つの言葉を定義する、という設定で書かれたエッセイ集。「友だち」「遊び」「やさしさ」「恋」など、いろいろな言葉の定義を試みている。
    どの回も一つの言葉に真摯に向き合い、過去の経験に照らして熟考し、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませている様子が面白い。それも辞書的な通り一遍の定義ではなく、著者の人生、生き方から導き出された生きた定義だからこそ面白いのだ。

    「言葉がわたしの中である意味をむすぶとき、そこにはわたしの記憶や、経験や、痛みや喜びの手ざわりが、どうしょうもなくまとわりつく」

    その「言葉にまとわりつく形のないもの」をこそわたしたちは交換したいのではないか、という著者の言葉がすご

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    2025年10月04日
  • いなくなくならなくならないで

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    ネタバレ

    大好きな人との再会は、時を経て思いに馳せた期間が長いほど、なんか違うなと思ってしまうのかと思います。
    美化した過去と現在での食い違いが、まるで他人のように感じられて、でも大切で大好きな人なのにと、と揺れ動く心に矛盾を感じて。
    今も過去も無いはずなのに、朝日を比べてしまう。
    みんな朝日を何かに当てはめて、今の朝日には向き合えてなかった、だから最後はとても良かった。

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    2025年09月30日
  • いなくなくならなくならないで

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    4.0/5.0

    タイトル通り、主人公時子の、朝日に対する一口には表現出来ない微妙で細かく揺れ動く心情の変化が繊細に描かれている。

    中盤の若干レズっぽいシーンは必要だったのかな?と思った。

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    2025年09月24日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    矛盾の上に成り立つ営みに私は折り合いが付けられず頭が割れそうになる。瞬間の中に特有なモノが見えるからと言って先回り出来るような便利なモノじゃない。
    ここではないどこかへ行きたい。往きたい。愛より痛いほうへ。

    主演は當真あみさんがお似合いだと思う。

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    2025年09月10日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    「アンノがはじめて割れたのも、アケミバレエスクールでのことだった。」p4

    芥川賞候補作。

    「割れる」という感覚を共有できるかどうかどうかがキモなのかもしれない。
    傍目には、キレる、とか、怒る、とかになるんだろう。
    自分が理解されなかった、相手が理解できなかった、怒りや悲しみ、衝撃が、ないまぜになって、言語化の難しい感情があふれでてくることなのだろうか。
    子供の頃の、まだ感情も、言語もコントロールができなかったころのなまなましさを思い出す。(今でもできてないけれど。)

    愛(のようなもの)というのは、絶望的にすれ違うし、取り違うし、勘違いするしで、やっかいだな。











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    2025年09月10日
  • 群れから逸れて生きるための自学自習法

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    群れから逸れて生きるための自習とあって、著者がくじらさんで、装丁にカモメ?。先ず、内容を良く解さぬまま、いわゆるジャケ買いで、勘違いして読み始めた所から書き出してみたい。これが、複数人で本の中身をワイワイガヤガヤ〝当てっこ“していたなら、少なくとも「群れとクジラ」は関係ないさそうだという事で、生物学の本ではないと気付く(私は生物学の本かと思っていた)。そもそも、帯に「学校が苦手で・・」と書いてあるので、学校の勉強の話だと分かっただろう。複数の〝気づきの目”とそれによる修正機能こそ、群れて学習することの利点と言えそうだ。

    他方、ソロモンアッシュの同調試験という有名な実験がある。これは、明らかに

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    2025年09月06日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    怒りとも悲しみともまた違う感覚を「割れる」と呼んだ幼い頃の主人公アンノ。愛と暴力が結びついてしまった結果、痛みを求めることで結局は愛や命に向き合おうとしているように見え、その葛藤する彼女の姿には真っ直ぐで力漲るものがありました。

    独特な表現センス漂う文章は難解だけど感覚的に訴えかけてくるものがあり、読み終わった時にはそれが言葉で表せず、またすぐに読み返しやっと書いた感想です笑。

    〈心に残った言葉〉
    "自分はひとりで生きていかれると思ってるんでしょ。傲慢といいますそういうことを"

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    2025年08月25日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    芥川賞候補であったので興味が湧き読んだ
    『割れる』という表現が怒り・悲しみ・泣くではない微妙な感情
    家族愛や恋愛などが苦手なのだろう
    バレエのように、しなやかにバランスが取れていたら
    どんなに楽しい青春を過ごせた事だろう

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    2025年08月24日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    読み終わってから改めてタイトルを眺めると
    主人公へのメッセージでもあり、
    読者や著者自身への応援なんだなと思いました。

    気になったエピソードは
    元彼の祖母との友情と、その後のいざこざ。
    まだ若い主人公が、老女との交流を通して
    癒されたり、傷ついたりする様子は
    感情の動きが丁寧に、
    ある意味でまる裸にされていて
    これは小説の醍醐味だなぁ!という感じです。

    映画にはしにくいし、
    友達にも勧めにくい本かもなぁ。
    読めて良かったなぁ。

    ★4つ
    ほぼ初めましての作家さんだった、
    その上でなんか良かったので★ひとつ足しました!

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    2025年08月18日
  • いなくなくならなくならないで

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    ぬるりと日常が他人に侵食され、居場所を奪われていくような気持ち悪さ、こういうテーマの作品だーいすき!

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    2025年08月13日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    思春期の女の子を持つ母親にすごく刺さる著者。愛されているからこそ、愛されたくない、と願う子ども心を上手く小説として表現しています。

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    2025年08月04日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    結構面白かっただけに評価が低いことに驚き。
    主人公のアンノが精神的に立ち行きがいかなくなった時の「頭が割れる」という表現がとても好きです。

    家族や恋人が自分に向ける愛ってなんだろう?ということに向き合った話だと思う。

    どうしても納得がいかない出来事や許せないことがあった時、大人になっていつのまにか精神的に対処できるようになったつもりでいたけど、いつから対処できるようになったのかと考えてしまった。
    本谷有希子の小説を思い出した。

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    2025年07月25日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    いわゆる『育てにくい子』を愛情という名で思い通りにしようと母親がいろんなことを押し付けて、お互いに辛い方向に向かっていくことになる怖さというか、生きづらさ、やるせなさが満ちている本だと感じた。
    『あなたのため』という愛はほんと怖い

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    2025年07月20日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    愛も家族も信じられないために、自分のせいで愛を与えられずに生まれてこなかった妹の生まれてこなかったそれをアンノは生きている中でなぞっているように思えて読んでいてとても苦しかった。彼女にとっては庭に広げたテントもあーちゃんの家も眠るのに大切な子宮だったのではないだろうか。ならば唯一おなじ存在だと思っていたあーちゃんのちょっとずつの本当を内包した裏切り(というにはあまりにも無責任な期待や決め付けではあるのだけれど)の後に見ることになる解体された家の瓦礫の山に搔爬された命の影を見たんじゃないだろうか。眠る場所は奪われ、しかし体は各部位末端まではっきりと感覚を伴い生きている。この先、どうやって彼女は生

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    2025年07月14日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    ネタバレ

    芥川賞ノミネート作ということで、興味を持ち、読んでみた1冊。

    納得できないことがあると「割れる」という表現が「どういう意味なんだろう?」と、気になって読み始めた。

    母親、葉山くん、明宏、あーちゃん。
    それぞれからアンノは愛されていたように思える。
    しかし、主人公のアンノは生きづらさを感じていたように思える。

    家族、恋愛、自分の生き方について考えさせられる作品です。
    これは、結末が分かったあとに、もう1度読み直したいと思うお話しでした。
    是非、オススメです!

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    2025年07月06日
  • 踊れ、愛より痛いほうへ

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    ネタバレ

    愛すということは、それ以外を愛さないということ この考え方に対して、ある種誠実で純粋な主人公だった。アンノと居るときのあーちゃんと、家族と居るときのあーちゃんが違うのは、それはそうなんだけど、切なかった。
    コンビニ人間の主人公と近いのかなと思ったが、アンノの考え方はそれとは別だった。一見人間らしさがないような、異常者のような印象を受けるが、それさえ俯瞰している。共感もありつつ新鮮な主人公だった。

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    2025年07月01日
  • ことぱの観察

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    著者は「さきさかくじら」さん。
    自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察する。言葉についてこんなに深く考えたことはないなぁ。「Pの魔力」はすごい。Pはかわいい。Pipiもかわいい!言葉を学ぶことと遊ぶことの双方が必要だ。

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    2025年06月22日
  • 群れから逸れて生きるための自学自習法

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    “勉強の方法がわかっていること、それによって得られた知識があることは、自分の属している集団を冷静に見つめ、また知らない世界に対してひらかれていられる力を、あなたにくれるはずだ。あなたに勉強をしてほしいのは、あなたが近くて小さな関係性に依存させられたり、自分の異質さを怖がったりしなくてすむためでもある。”(p.135)

    “自分のやるべきことを持っていて、かつあなたのやるべきことを尊重してくれ、話したあとにも必ずひとりに戻らせてくれるような相手がいるのなら、それは本当に貴重なことだ。”(p.137)


    “学ぼうとするときには、「わたしはAだと思う」という重たい装飾を外して、「Aである」と言い切

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    2025年05月28日
  • いなくなくならなくならないで

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    答えのでない問題をずっと考え続けているような物語だった。
    人間は不完全だから、感情があっちこっち行ったり来たりして好きだから嫌いのように相反する気持ちが両立するのを再認識した。

    あの時のあの人に会いたい、自分が作り出した過去や傷は深くうつくしいものであってほしいという時子の気持ちはよく分かった。

    朝日はそんな崇高なものではなく、もちろんどこまでもただの人間で、そして自分の軸がないから他人の思い描く役を投影されてしまいがちなんだろうなと思った。

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    2025年04月27日