向坂くじらのレビュー一覧
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ネタバレ何か一つの言葉を定義する、という設定で書かれたエッセイ集。「友だち」「遊び」「やさしさ」「恋」など、いろいろな言葉の定義を試みている。
どの回も一つの言葉に真摯に向き合い、過去の経験に照らして熟考し、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませている様子が面白い。それも辞書的な通り一遍の定義ではなく、著者の人生、生き方から導き出された生きた定義だからこそ面白いのだ。
「言葉がわたしの中である意味をむすぶとき、そこにはわたしの記憶や、経験や、痛みや喜びの手ざわりが、どうしょうもなくまとわりつく」
その「言葉にまとわりつく形のないもの」をこそわたしたちは交換したいのではないか、という著者の言葉がすご -
Posted by ブクログ
「アンノがはじめて割れたのも、アケミバレエスクールでのことだった。」p4
芥川賞候補作。
「割れる」という感覚を共有できるかどうかどうかがキモなのかもしれない。
傍目には、キレる、とか、怒る、とかになるんだろう。
自分が理解されなかった、相手が理解できなかった、怒りや悲しみ、衝撃が、ないまぜになって、言語化の難しい感情があふれでてくることなのだろうか。
子供の頃の、まだ感情も、言語もコントロールができなかったころのなまなましさを思い出す。(今でもできてないけれど。)
愛(のようなもの)というのは、絶望的にすれ違うし、取り違うし、勘違いするしで、やっかいだな。
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Posted by ブクログ
群れから逸れて生きるための自習とあって、著者がくじらさんで、装丁にカモメ?。先ず、内容を良く解さぬまま、いわゆるジャケ買いで、勘違いして読み始めた所から書き出してみたい。これが、複数人で本の中身をワイワイガヤガヤ〝当てっこ“していたなら、少なくとも「群れとクジラ」は関係ないさそうだという事で、生物学の本ではないと気付く(私は生物学の本かと思っていた)。そもそも、帯に「学校が苦手で・・」と書いてあるので、学校の勉強の話だと分かっただろう。複数の〝気づきの目”とそれによる修正機能こそ、群れて学習することの利点と言えそうだ。
他方、ソロモンアッシュの同調試験という有名な実験がある。これは、明らかに -
Posted by ブクログ
愛も家族も信じられないために、自分のせいで愛を与えられずに生まれてこなかった妹の生まれてこなかったそれをアンノは生きている中でなぞっているように思えて読んでいてとても苦しかった。彼女にとっては庭に広げたテントもあーちゃんの家も眠るのに大切な子宮だったのではないだろうか。ならば唯一おなじ存在だと思っていたあーちゃんのちょっとずつの本当を内包した裏切り(というにはあまりにも無責任な期待や決め付けではあるのだけれど)の後に見ることになる解体された家の瓦礫の山に搔爬された命の影を見たんじゃないだろうか。眠る場所は奪われ、しかし体は各部位末端まではっきりと感覚を伴い生きている。この先、どうやって彼女は生
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Posted by ブクログ
“勉強の方法がわかっていること、それによって得られた知識があることは、自分の属している集団を冷静に見つめ、また知らない世界に対してひらかれていられる力を、あなたにくれるはずだ。あなたに勉強をしてほしいのは、あなたが近くて小さな関係性に依存させられたり、自分の異質さを怖がったりしなくてすむためでもある。”(p.135)
“自分のやるべきことを持っていて、かつあなたのやるべきことを尊重してくれ、話したあとにも必ずひとりに戻らせてくれるような相手がいるのなら、それは本当に貴重なことだ。”(p.137)
“学ぼうとするときには、「わたしはAだと思う」という重たい装飾を外して、「Aである」と言い切