向坂くじらのレビュー一覧
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ネタバレアンノと葉山の掛け合いは特に印象的だった。アンノの好奇心は世界を広く知りたいだけではなく、「自分が生きていける場所」や「生きていてもいいと思える世界」を探る動きに見えた。その時期、葉山の隣にいることがそれを保証していたのかもしれない。だから二人の会話は軽口でも戯れでもなく、生き延びるための確かめ合いのように響いた。
向坂くじらさんの文体は、物語全体に重さと陰影を与えている。その重さは不幸を演出するためではなく、痛みや執着の描写に倫理と敬意を保つためのものだと思う。どの登場人物にも血の巡りを感じたのは、向坂さんが彼らの歪みに最後まで寄り添っていたからだと思う。
アンノは踊りから離れていたので -
Posted by ブクログ
Twitterで誰かがおすすめして読んだ気がする
他の人のレビューを見ていると、米津玄師がお勧めしていたということで…なんかそれはめっちゃ納得 米津玄師ならこの本をまた見事楽曲化してくれたりするんだろうか笑
事情があり1時間で読み切らないと行けなくてウオオオっと読んだけど結果としてこの読み方が正解だった気がしている
詩的で抽象的な表現をいちいち振り返っていたら、進めなくなりそうだ
自分も高校の一番の親友だと思っていた友達と30歳目前にして、ケンカからの何やってもお互い傷つけあうことしかできない、みたいな状態になっちゃってるので なんか色々と刺さった
私もlineの履歴をずーっと残してるので -
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とても、よかった。
こんな風に世界を見たり、咀嚼したり、受け止めたりする人がいるのかと。
きっと感受性という言葉ではなまぬるい。
くじらさんは自身のすべてを以て、実体のないもの、ミクロなもの、この世のありとあらゆるものと向き合っているんだろう。
それは凡人の私からしたら感嘆すべきことなんだけど、それゆえにひりひりする思いもたくさん抱えてきたんだろうと思う。
ちなみに、私が読みながら思ったこと。
授業でも使えるし、中~大学入試にも出題されそうだな。
なんと、つまらない人間か…
いずれにせよ、向坂くじら、初読だったけど、俄にファンになりました!
もっと他の作品も読んでみたい。 -
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ネタバレ愛情がおぞましい、鬱陶しいと感じつつも、無意識にそれに縋ってしまっているように思えた。
抵抗していても、望んでいなくても、その愛情のもとに帰ってきてしまう。
抜け出すことができない。
アンノがテントで暮らしていることも、私にはそう見えた。
家を出ることにしたアンノは、両親に「わたしはもう、旅に出たんだと思ってください」と伝え、実家の庭にテントを設置して生活していた。
アンノ自身は親に頼らない生活をしているつもりかもしれない。
しかし実家の敷地内で暮らしていることは、アンノ自身が親から逃れられていない、自立できていないことを表しているようだった。
あーちゃん(元彼の祖母)とアンノの関係はとても -
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芥川賞候補作品
息を呑むような疾走感と
愛へのアンチテーゼ。
誰かを愛すこと、好きになることはすなわち、
その人以外の誰かを愛せないこと。
一見痛切な展開であり、期待を予見させたかと思えば、それは幻影でしかなく、本質は偏愛と過剰なまでの平等。
主人公目線で描かれるこの作品は、
その目まぐるしく変わる状況や内面をあまりにも繊細で高潔な文章、語彙で表現しており筆舌に尽くし難い。
にも関わらず、私はどこが生きづらい我々を客観的に見ているような気持ちに陥る。
終始偏屈とは一切感じないが、
その僅かな表現から滲み出る悲観は、近年極端に楽観を求められる世界にある種光を与えているのではないか。
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上質な「ホラー映画」を見終わったかのような読後感のある小説だった。
さまざまなレビューを見てみてもそんな感想はまったく見当たらず、自分自身に残された感覚を問い返してみたけれど、やっぱりそれは「ホラー」作品を観たあとの何かなのであり、「恐怖」という感情であることは間違いがない。
もっともホラー的だとかんじたのは、「死んだ」と思われていた友人・朝日が、後半に行くに連れ不気味さを増していくところだ。
「死んだ」と思われた友人が現れたばかりで、彼女の正体が幽霊かもしれないと思われる頃の不安定なかんじは、「幽霊でない」という確信が生まれてきたあとに、ハッキリとした不気味さに変化する。
自分自身の記 -
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17歳の時に自殺をしたという親友。社会人になった時子に再び電話がかかってくる所から始まる。かつて、助けられなかったという自負から朝日を壊れ物のように扱う時子。大好きな親友で、死んだと思っていたから尚更大切にしたい。試供品のチョコレートを多めに持って帰ったり、洋服や、タブレットを貸してあげたり、まさに友達以上恋人未満のような関係。ある時までは。朝日が時子の実家に住み始め、自分より両親とサークルの仲間と上手く行ってる様子を見る度にモヤモヤが溜まり、憎らしく思ってくる。バイトもすぐに辞め、家でダラダラと過ごす朝日を、毎日仕事で疲れて帰ってきた時子が見たら、イライラするのも当たり前だと思う。住まわせて
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たしかSNSで見かけて、タイトルが気になって借りた本。タイトルからどの層に向けたものか分かりやすく、自分はその層ど真ん中だったのでとても好みの内容だった。
学校というシステムがいかに多くのものを排除して扱いやすい人間を生産するものになっているかという批判がとてもいい。
勉強することが、服従させようとするあらゆるものに抵抗する力になる。反抗して勉強しないことが、かえってもっと悪い服従につながる。
実践編として、英語・数学・国語・社会・理科の勉強の進め方が書いてあり、自分のやり方と概ね同じだった。
学生向けに書かれたものらしいが、言い回しが若干わかりづらいのが難点か。