向坂くじらのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルに"?"となって読み始めた本。
17歳の時に、突然親友が姿を消してしまったら、自分だったらどう思うのだろうと考えた。
時子にとって唯一無二の存在だった朝日。
時子は、初めは朝日が再びいなくならないように懸命に自分のもとに繋ごうとしていたけれど、就職を機に実家で朝日も暮らすようになってから、少しずつ二人の間に亀裂が走ったように思えた。
だんだん朝日を鬱陶しく思うようになり、かと思えば朝日が自分を慕う様子にたまらない嬉しさを感じたり。時子が朝日に振り回される様子が伝わった。
時子が、"私が会いたいのは17歳の朝日なのか、今の朝日なのか"と考え -
Posted by ブクログ
居場所を求める朝日と、
失うことに臆病者な時子。
ただずっと若いと思った。
今の変わってしまった朝日より、
17歳の頃の朝日と会いたいだとか
身勝手なことを言っている主人公に
心底共感してしまう。
死にたい死にたい言いながら
君が居なくなったら死ぬとかを言いながら
いざ居なくなっても死ねない絶望にも。
自分から遠く離れているものに
人間は望み抱きすぎる。
自分との距離に希望を見出して
その遠さに安心している。
実体より幻想の方が遥かに愛しやすい。
それが叶ったら全てがうまくいくと
錯覚してしまう。
違うとわかった時には遅くて
更に失うことを恐れてしまう。
他人との関係は思ったよりは脆いし、
人 -
Posted by ブクログ
『ことぱの観察』で向坂くじらさんのファンになったので読んでみました
芥川賞らしい作品だなあというのが第一印象(実際は候補作品でとまり受賞には至らずですが…)
苦しい
作中も苦しく、終わり方もはっきりしない今後もこの状態が続いていくのかな…といった救われない終わり方
実際時子と朝日みたいに、ずっと仲良かったのに距離が近くなりすぎた結果、相手の嫌なところが見えてきたり羨ましく思うところを無視できなくなって、結果的に関係が悪化することってあると思うんだよね
でも、ああ〜…苦しいなあ…
せっかく再会できた2人なのになあ
向坂さんの今年芥川賞候補になってる作品も気になるな〜 -
Posted by ブクログ
実家の庭に張ったテントでたてこもり生活をしている二十歳のアンノ。
母親に対してわりと一方的な確執を抱きつつも実家を離れることはしないあたりが、彼女の未熟さを粒立てていて面白い設定だなと思った。
アンノは、付き合っている明宏の祖母である"あーちゃん"の家に明宏と別れてからも出入りしていて、自分の本の置き場所としても利用させてもらっているが、やがてあーちゃんの半ば強制的な引っ越しや、自宅の庭を駐車場にするためのテント立ち退き問題などが起きて、不満と安寧の生活はやがて終わりを迎える。
俗に言う「キレる」に似た感情を「割れる」というオリジナルの表現にしたり、アンノという主人公の個性 -
Posted by ブクログ
タイトルの意味がわからないなと思いながら読んでいたけれど、中盤差し掛かって主人公時子の朝日に対する複雑な思いが描写されるようになってから、凄くスッと入ってきて納得がいった。
自分でも相手に何を求めていて、何を求められているのか、本当に相手が大切なのかすら、もはやお互いによくわからない2人。再会しない方が幸せだったかもしれない。でも再会してしまったからには、替えの効かない存在なんだろうな。
ちょっと共感した部分として、会わなくなった昔の友達と再会したとき、あくまで自分は「あの頃の」相手に会いたかったんだなぁと、別れた後に実感してしまうことがある。凄く申し訳なくて、勝手に相手に負い目を感じてしまう