鈴木俊貴のレビュー一覧
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シジュウカラの言葉にも文法がある。「ピーツピ・ヂヂヂヂ」は「警戒して・集まれ」だから周りの小鳥たちが集まるが「ヂヂヂヂ・ピーツピ」と語順を逆にしたら集まらない。
そこで、ルー大柴語「藪からスティック」「寝耳にウォーター」実験。互いが言葉の意味を理解しているシジュウカラ語とコガラ語をまぜた文を作ってみる。集まれ「ヂヂヂヂ」をコガラ語の「ディーディー」にかえて自然界にはありえない「ピーツピ・ディーディー」という新しい言葉を聞かせてもちゃんと「警戒して・集まれ」と理解して集まった。「警戒して・トゥギャザー」になっても意味を理解できるのだ。
小鳥が言葉を使っていることを証明する実験が大変なんだけど面白 -
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◇書店員が選ぶノンフィクション大賞2025
◇第24回新潮ドキュメント賞
◇第13回河合隼雄学芸賞
大学の卒論のため、秋から冬の軽井沢で、一泊500円の大学の山荘(風呂なし、シャワーなし、インターネットなし、野ネズミが自由に出入りする築五十余年の木造家屋)に、3か月間ひとりで泊まり込み、シジュウカラの生態を記録し始めた筆者。
最後の一か月は、白米しか食べるものが残っておらず、ご飯に水やお湯をかけてしのぐ。
食糧を買いに行くにも、往復二時間のタイムロスがもったいない。「それだけあれば、2、3回実験ができる。」なんて、オタクにもほどがある。
この実験で、シジュウカラに言葉が存在することを、確信 -
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鳥とゴリラの研究者の対談。
どういった言語を扱う動物なのかの話から発展し徐々に『コミュニケーション』の枠組の話にうつり変わる。
その種類とは音声であったり視線であったりジェスチャーであったり、はたまた同時に2つ以上を合わせて行ったり。五感も重要で聴覚や嗅覚などが優れている生き物はそれも併せて複雑なコミュニケーションをとるらしい。
ただただ言語にとどまることなく話が進む対談は興味深い生物の進化の話にも及び、進むにつれ文字や文を主体にしたネット社会が人間の陥る死角にも言及していたように思う。
普段の言動、また今ここに書いているような視覚での情報やスマホで読むニュースなど切り取りされたモノを -
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ゆる言語の水野さんが編集したということで手に取ってみた。
ゴリラと鳥の研究者視点で語られるヒトの言語の起源の考え方が興味深かった。
人間の母親が赤ん坊にかける歌のような言葉(インファント・ダイレクテッド・スピーチ)がヒトの言葉の起源の一つかもしれないというのは実体験として分かる気がする。子供が赤ちゃんの時には何かしら歌うように話しかけていたような覚えがある。言葉にならない音声とか鼻歌とか赤ちゃんと目を合わせながら視覚的なコミュニケーションを取っていたような気がする。
現代人が言葉に依存する社会になりすぎて忘れかけている文脈を理解する力、身体性を持って共感する力を取り戻すためには「音楽と踊り」= -
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ネタバレ鳥の研究者、類人猿の研究者の対談。
鳥には文法を使いこなせるというのが、鳥大好きな私にはなんだか嬉しく思った…まるでファンタジーだけど、現実に鳥たちは会話をしている!!
人間が言葉を使いこなす前はどんなことで情報を伝えていたのか?というところから、現代は文脈を読む、想像するという能力が衰えている、とのこと。
映像作品でも主人公のナレーションなどで
全てを分かりやすく解説している、映像で見せてこちらに想像させることがなくなったと言う話から、
最近の小説の装丁で、人物の割と写実的なイラストものが多いのは、その方が登場人物を想像できるというのを
YouTubeで見たのを思い出した。
なるほど、、 -
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ネタバレ・鳥やゴリラも鳴き声という形で言語を使う。
→危険が近づいた時(敵によっても違う!)、餌を見つけた時、どこにいるか知らせる時
ex)手話を覚えたチンパンジーの実験も。追加で連れてこられたゴリラも手話を覚えて、捕まった時の様子を話した。ただしゴリラ同士はゴリラの言語で話してしまうけど……
・今までヨーロッパ的な価値観で人間を基準にして動物の差分を見ていたが、動物にできて人間にできないこともたくさんある。
→人間と動物という二項対立から離れて、言葉や人間の能力を考える
・言葉はなぜできたのか
→環境への適応。言語を使えた方が生き残り、子孫を残しやすい、
ex)頭の良いとされるカラスでも、鳴き -
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ゴリラは20種類の鳴き方をもっている。
シジュウカラもたくさん。
だが鳥籠や動物園ではあまり鳴かない。
危険もないし、ご飯もあるから。
言葉を使える個体の方が使えない個体より上手く生存したからその遺伝子が集団内で広がり環境に適応した。
人間にとっての単語はシンボル。単語の音と指し示すものの関係は完全に恣意的。例えばりんごと聞いて、赤くて甘酸っぱい果物と思い浮かべること。
シジュウカラにとって意味を持つ鳴き声、つまり言語の起源は生存に直結する重大な情報のカテゴリー化。敵が来た。食べ物を見つけたなど。複数の5組み合わせる文法があることもわかっている。
言葉を持たない音楽的なコミュニケーションや認 -
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ルー大柴の「ルー語」で鳥の文法を解き明かす話から、「テキスト文化」の恐ろしい強大さまで
ゴリラの研究の第一人者である山極寿一さんと、シジュウカラの言語研究で注目されている鈴木俊貴さんの対談形式の共著です。山極さんの著作『ゴリラに学ぶ男らしさ』は私の人生の中でもトップレベルに面白い本で、類人猿と人間のあいだの垣根がぼやける感覚を味わえる名著でした。この本では動物たちの生態やコミニュケーションから、人間の言語の根本をつかもうとする試みが行われています。この本の中で触れられている『アレックスと私』という本を以前読んだ時、鳥の言語感覚が想像以上に豊かなものだと知り、「動物の言語というものはけしてファ -
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シジュウカラの研究で有名な鈴木博士の名前が気になって手に取った本
鳥の専門家と霊長類の専門家が「言葉」を軸に対談したものをまとめてあります。
なにか一つのことに熱中した人どうしの会話はどうしてこんなに興味深いのか!
特に興味深いと思った点を以下に箇条書き
・鳥や犬が知覚している世界は人間とは全く異なるものになるだろうということ
(紫外線が見えたり、嗅覚がすごくするどかったり)
・利他的な行為が残ってきた理由とそれが原因で暴力や戦争が生まれているかもしれないということ
・人間の言葉はとても便利だけど、便利すぎて言語化した際に非言語情報が捨てられてしまっている。そのことで起きている問題について -
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ネタバレゆる言語学ラジオで紹介されていて、ようやく予約が回ってきた。読みやすく、これをきっかけに深く言語などを考えたり読んだりしたいなと思わせる…
Part1 おしゃべりな動物たち
Part2 動物たちの心
動物の意識:
山極「意識については哲学的な議論がたくさんありますが、私はシンプルに「自分が何をしているかわかっていること」と定義していいと思います。」
鈴木「つまり、自意識ですね。…心の理論を保つためには、自意識に加えて共感能力が必要じゃないかって思っています。共感する相手がいなくても、自意識だけを保つことは可能だけれど、そこに共感する相手が現れて心の理論が進化したのではないかと」
まとめ