川上佐都のレビュー一覧
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ネタバレ世間の定める普通から外れてしまった人は勝手にかわいそうと憐れまれたり見下されたりする。変わった生き物を見るような、団結した集団の冷笑が文章越しに伝わってきて苦しくなった。小学生女子の大人ぶった意地悪さもすごいリアル。
そして何より主人公の晶が可愛い。思春期に差し掛かりつつもまだまだ幼さが勝つ、純粋な可愛らしさと場の空気を読む高い力や気遣いを持ち合わせている。だからより一層中盤が辛かった。
とにかく本当にシンジュが居てくれてよかった。あの時シンジュが背中を叩いてくれなかったら晶はますます細って消えてしまっていたと思う。そして、他人の目を気にして本来の自分が消えてしまうことって本当にあるよなとも思った。シンジュありがとう。 -
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友達について考える短編集。ちょっと重い。
第1話 ニッタとシバサキは異性だが親友だ。月一くらいで会う。音風景というのを今は回っている。だがシバサキは丸さんと結婚するという。男女の友情とは。
第2話 りさは中学時代の同級生の結婚式に出る。帰り際に毛利とたまたま会う。
第3話 柊は珈琲店で花見祭りの話を聞く。店員さんのいとこの子供みつほがいてお話して、カルガモを見に行く。
第4話 家に帰ると、弟のシンが友達たちと麻雀をやっていた。あと1人で4人でバーベキューに行く予定だという。のに、残りの1人がグループラインを唐突に抜けた。
第5話 町田は同窓会に出る。 -
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ネタバレ共感しすぎて笑えてくるくらい、それに最後にはじわっとくる読後感だった。短編集ならではの、登場人物がつながってるのも良かった。(シバサキは結婚式をした沙希、毛利=アオイ?、麻雀と同窓会に杜本が両方いるとか)同じ登場人物でも、呼び方が違ったり考えていることを話したり、色んな見方ができたのが面白かった。
結婚式とかで自分が何かに選ばれない、でも期待してしまう。写真を義務のようにとって残すことでみんな楽しんだことを確信しようとする。
大人になったら大人の付き合い方も生まれる。ちゃんとした友達を線引する必要はない。自分から誘っていると虚しくなるのまじで分かる。でも誘いたいと思った人が連絡しないといけないんだよね、連絡できる人がいなくなったことにショックをうけるの痛いほど分かって苦しい!でもそれこそ、友達という枠で考えすぎているからかもしれない....
いつ壊れるか分からない偶然の中だから楽しい、たまの同級生には見栄を張ってしまうけど、だから見える世界もある
寂しさや切なさも認めながら人間関係は築かれるのだなあと思った。そこら辺の機微がうますぎ。 -
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読み始めはJKの考え全部文章にしたみたいな感じで、
自意識過剰だなー、この頃ってこんな感じで人目を気にしてばかりだったっけ、と引き気味でした。
それが読み進めていくとどんどん共感しまくって、
片想いの相手を無意識に目で追ってしまうとか、
街で会えないかとうろついたりだとか。
そこからは気付けば少女の頃の自分に戻ったみたいに切なさにキュンキュンしながら一気読みでした。
切ない所のある物語だけれども、主人公が過去の自分にも真摯に向き合って真剣に対峙する少女で、成長を感じるし、好感がもててました。
精神的に未熟で自立できていないからこそ、境界線が引けないというか、
親友同士でもフラストレーションをぶつけられたり、
パワーバランスや独占欲とか緊迫感があったことをすごく思い出しました。
良好な人間関係や依存し合わずに自立して生きる事って植物を育てるのと同じで、適切・適量が大事なんでしょうね。 -
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小学生の晶の目線で兄の達を中心に、マムカ、お父さんや回りのひとたちを描きながら、確かにそうだよね、と思わせる考えがいくつも綴られていた。
自分が当たり前にできることは、皆ができると思い込んでいること、
人の凄さを伝えるのに数字や賞に頼っていること、
やたらとコミュニケーション能力を求められること、
他にも沢山のことを晶の目線で気付かされた。
晶は達を通してその事に気付き成長している。
達は確かに世間のいう「普通」ではない、
でもしっかり晶の兄として目の前に立っている。晶に色んなことを教えて大事にしていた。
私たちが求める「普通」はこんなにもハードルが高いのか?それともしらないうちにどんどん高くされていったのか?
考えさせられ気づかされる話だった。
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表紙絵を描いているみなはむさんの画集を持っていて、表紙絵で衝動買いした一冊。中身も何も知らず積読されていたのを読んだら、とても刺さる物語だった。
その人の良さは、本当に出会った人にしか分からない。そういう人と出会ったことがある人、そういう大好きな、尊敬する人がいたら、共感できると思う。
小学5年生の晶(あき)は、絵がうまくて、頭がよくて、いろんなことを教えてくれる兄ちゃん、達(とおる)のことが、とにかく大好きだった。兄ちゃんが「せけん」に認めてもらえない出来事に出会うたびに傷ついて、兄ちゃんを認めてくれる人と出会うたびに嬉しくなる。とにかく、兄ちゃんが好きなのだ。
「ぼくはぼうっと絵を見る。内容は難しかったけど、ぼくは「せけん」にならないようにしようと思った。もう一度湖のカギをなぞる。なんだか絵が少し変に見える。でも何が変なのかはわからない。考えるのをあきらめて部屋を出ると、兄ちゃんはべちゃべちゃの洗濯物をベランダに干していた。」(p58)
晶は、大好きな兄ちゃんのいいところを知ってもらい、みんなに認めてもらいたいと思う。しかし、みんなに認めてもらおうと思えば思うほどに、自分が兄ちゃんに対して求めているものが、「せけん」と同じになっていってしまう。
「兄ちゃんの絵を見てない人たちに、いろいろ言われるの、悔しいじゃん。ぼくは、もっと兄ちゃんはすごいこと、みんな知れば何も言わないと思う、兄ちゃんもそれをもっと、みんなに言えばいいと思う」(p126)
「そうだよ。あとはさ、加賀美さんとはたくさんしゃべれるんだから、一緒に特訓すればいいじゃん。そうだよ、じゃあさ、追い出されないために直そうよ。まずぼくの目を見る練習からしてさ、ぼく、手伝うよ。それでそれができたらさ、もう一回あのCDショップのバイト、受けようよ。」(p127)
晶の兄ちゃんは、おそらくADHD(注意欠陥多動性障害)なのだろう。無意識のうちに手や指を動かしてしまい、狭い家の中を走りまわってしまい、限られた相手としかコミュニケーションが取れない。
そんな兄ちゃんに、晶は「直そうよ」と言ってしまい、後悔する。兄ちゃんに普通のコミュニケーションをとれるようになってもらいたい。普通のバイトをしてもらいたい。そういう風に「普通」になってほしいという気持ちは、まさに晶がなりたくなかった「せけん」そのものだった。
「ぼくは今もカギの絵だけは押し入れから出せずにいた。その絵を見ると、なんだか苦しくなるからだ。なんだか、といってもほんとうの理由はわかっている。ぼくが兄ちゃんに向かって「目をみる練習をしよう」と言ったことを思い出すからだ。」(p154)
しかし、兄ちゃんの方は、きっとそんなことを気にしてなかったのではないかと思う。兄ちゃんは兄ちゃんで、晶のことが大好きだったからである。
物語の最後、晶と兄ちゃんが交わす会話を何度も読んでしまった。兄ちゃんの話は、言葉足らずで、大事なところで、言いたいことを言えない。それでも、十分に晶には伝わるのである。
兄弟でなくとも、こういう関係が、自分にもあるだろうかと考える。あったらいいなと思う物語だった。